第19話 ニュー世界樹

 アイシャさんに世界樹の説明をして、朝ごはんを早々に済ませた僕は早速新しくできた世界樹のもとに向かった。


「なんだありゃ……」

「広場に大きい木があるよママ!」

「いったいなにが起きたんだ!?」

「どうせテオドルフ様関連だろ。とっとと仕事するぞ」

「はは、いちいちこの程度で驚いてたらこの村ではやっていけないぞ」


 村の人たちの反応は驚いたり呆れたり様々だ。

 なんであんまり驚いてない人もいるんだろう。感覚が麻痺しちゃってるのかな?


「早く大きくなってほしいとは願ったけど、さすがに大きくなりすぎだよ……」


 元の世界樹にはさすがに及ばないけど、ニュー世界樹は既に一軒家よりは大きくなっている。放つ威厳も他の木より凄いし……さすが世界樹だ。


「ありがたやありがたや……」

「世界樹様……っ!!」


 世界樹に近づくと、なにやら世界樹の前でひざまずき祈りを捧げている集団が目に入る。顔が整っていて耳が尖っている彼らは、みんなエルフの人たちだった。

 どうやら世界樹が復活したことを聞いてみんなで祈りを捧げにきたみたいだ。


 彼らの喜んでいる顔を見ると、頑張って土を耕した甲斐があるね。


「……ん?」


 よく見るとなにやら世界樹の近くに石の像のような物が見える。あれはなんだろうと近づこうとすると、


「おはようございます旦那様。今日もいい天気ですね♪」

「わっ!?」


 突然話しかけられ僕は驚く。

 振り返るとそこにはニコニコした顔で佇んでいるアンナさんがいた。その後ろにはエレナさんもいる。


「おはようございますアンナさんにエレナさん」

「はい♪ ほら、エレナもしっかりと挨拶しなさい」


 アンナさんに促され、目を逸らしていたエレナさんが僕の方を見る。うーん、やっぱりまだ慣れてないみたいだ。前みたいに嫌味は言われなくなったけど。


「く……っ! 姉様、やっぱり私は……」

「恥ずかしがってはいけないとあれほど言ったでしょう? あなたって子はなんでそう奥手なんですか」


 エレナさんは僕と目を少しだけ合わせてくれたけど、すぐに逸らしてどこかに行ってしまう。やっぱりまだ嫌われているのかな……。


「すみませんね旦那様。しっかりと言い聞かせときますので」

「あの、あんまり無理やりやらなくても大丈夫ですよ」

「いえ駄目です。あの子にはしっかりと妻としての自覚を持っていただきます。多少強引な手を使ったとしても……」


 アンナさんはそう言って不敵な笑みを浮かべる。

 こ、怖い。どうか僕もエレナさんも無事で済みますようにと心の中で祈っておく。


「それより旦那様、もう『像』は見られましたか?」

「像? ああ、あそこにあるやつですか。まだちゃんとは見てないです」

「そうでしたか。では一緒に参りましょうか」


 アンナさんに手を引かれ、僕たちは世界樹のもとに近づく。

 世界樹からは独特の魔力のようなものが放たれているのか、近づくだけで癒される感じがする。そういえば世界樹の葉っぱには強い癒しの効果があると聞いたことがある。イルミアさんとまた話せるようになったら分けてもらえないか聞いてみようかな。


「テオドルフ様だ!」

「世界樹をありがとうございます!」

おさバンザイ!」

「アンナローザ様もありがとうございます!」

「よっ! お似合い夫婦!」


 祈っていたエルフたちは僕たちをみるや口々に褒め称えてくる。

 うう、慕ってくれるのは嬉しいけど恥ずかしいからやめてほしい。


おさっ! 見てくださいこの像を! 会心の出来ですよ!」


 テンション高めにエルフの職人さんらしき人が言ってくる。

 いったいなんの像なんだろうとそっちに目を移すと、なんとそこには斧を手に持つ凛々しいの像が鎮座していた。


「……なにこれ」


 心の声が漏れる。

 なんと像の顔は完全に僕だった。背格好も僕と同じ。

 つまり一分の一スケールのテオドルフ石像だ。なんでこんなものが世界樹の前に? 作ったエルフの職人さんはなぜかドヤ顔だし、意味がわからない。


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