第25話 アダマンタートル戦 3
シルクの背に乗り、僕は猛スピードでアダマンタートルに接近する。
危険は百も承知、もしあの巨体にかすりでもしたら僕なんて簡単にバラバラになってしまうだろう。
でもこのまま村が壊滅するのを黙って見ているわけにはいかない。
ここはみんな作った居場所だ。絶対に守り抜いてみせる。
『アアアアアッ!!』
咆哮を上げながら突っ込んでくるアダマンタートル。
完全に怒り狂っている、これじゃ多少の攻撃では気を引くこともできない。物理的に動きを止めないと効果はないだろう。
「シルク、危ないかもしれなけどぎりぎりまで接近して」
「わんっ!」
シルクは僕の無茶な要望を迷わず飲んでくれる。
そしてアダマンタートルの巨大な前足に接近した僕は、その足元めがけて
「
アダマンタートルの足の真下に、巨大な落とし穴を作り出す。
穴ができた瞬間、アダマンタートルの前足はズボッ!! とその穴の中に落ちる。
『ゴアッ!?』
驚いたように声を出すアダマンタートル。
落とし穴はかなり深く作った。前足は完全に土の中に埋まり、走っていたアダマンタートルは体勢を崩して盛大に転ぶ。
「よし……っ! うまくいった!」
城壁の上でアダマンタートルが侵攻しているところを見ながら、僕は無意識の内にどうやったらあれを倒せるかを頭の中で考えていた。
今使えるアイテム、能力でどうすれば最大限の力を発揮できるか、どうすれば相手の弱点をつけるのか。これは前世でゲームをやって培った能力だ。
まさかゲーム脳が役に立つ日が来るなんて思わなかった。
『グウウ……オアアアッ!!』
地面から足を引き抜いたアダマンタートルは、僕を見ながら怒りの咆哮を上げる。
どうやら僕が落とし穴を作ったと理解しているみたいだ。怒りの矛先を僕に向け、その長い首を動かして噛みついてくる。
「
石造りの塔を地面から生やして、塔の先端部でアダマンタートルの顎を下からガツン!! と殴りつける。
『アガッ!?』
意識外から超重量級のアッパーを食らったアダマンタートルはその場にふらつく。どうやら脳が揺れて脳震盪を起こしたみたいだ。
いくら頭が硬いといってもその中身はやわらかい。こういう攻撃も有効みたいだね。
「テオ様!? なんでこちらに!?」
「あんた危ないわよ!」
アダマンタートルが立ちくらみを起こしている間に、レイラとアリスが近づいてくる。
二人とも少し疲れてるように見える。遅れてやって来たゴームとガルムも結構いっぱいいっぱいそうだ。
「僕も戦うよ。『
最初は渋っていたレイラとアリスだけど、真剣に頼むとそれを了承してくれる。
よし、みんなで絶対に勝つぞ。
「でもどうやってアレを倒すっていうの? 頼みの大砲でも倒しきれなかったし」
「もう一度あれをできれば倒せそうだけど、警戒して口を開かなくなっちゃったよね……」
アダマンタートルは頭が働くみたいで、大砲を警戒して魔力の塊を吐かなくなってしまった。僕に噛みつこうとした時も大砲を警戒して下を向きながら、少しだけ口を開けるにとどめていた。もう一度魔導砲を打ち込むのは不可能だろう。
どうしようと僕とアリスが悩んでいると、レイラがぽつりと口を開く。
「ひとつだけ、方法があるかもしれません」
「へ? なに?」
「先程アダマンタートルの近くを通った時、甲羅の裏側に
甲羅の裏側は盲点だった。
確かにそこは甲羅の上側より柔らかそうだ。重い一撃を叩き込めば、割ることも不可能じゃないかもしれない。
僕は頭の中で
「……僕に考えがある。だけどそれにはみんなの力が必要だ。お願いできる?」
おそるおそるそう尋ねると、レイラとアリス、そして二人のゴーレムは迷いなく頷いてくれる。
そして足の下にいるシルクも「わふっ!」と同意してくれる。
こんなに信頼してくれる仲間がいるなんて僕は幸せものだね。
「それじゃあ作戦を話すね……」
考えた作戦をみんなに伝える。
そうしている間にふらついていたアダマンタートルが元気を取り戻す。どうやら休憩時間は終わりみたいだ。
「それじゃあみんな……勝ってまた会おうね!」
「はい、必ずや役目を遂行してみせます」
「こっちは任せなさい!」
「ゴーッ!!」
「ガウッ!!」
頼もしく返事をしたみんなは、作戦通りに散らばっていく。
よし、僕も自分の役目を果たすぞ!
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