第七章 鉱石を探そう!

第1話 新しい目標を立てよう!

自動製作オートクラフト、石壁!」


 僕が壊れた壁に手をかざしスキルを発動すると、次元収納インベントリの中から石材が消費されて壊れた壁が修復されていく。

 最初は壊れた物を直すのは苦手だったけど、最近は修復するのも上手くなってきた。僕の自動製作オートクラフトスキルを使う技術力も上がってきてるのかな?


「ふう、これで全部かな?」

「はい! ありがとうございますテオドルフ様!」


 僕の言葉に村の兵士が反応する。

 僕が治める死の大地唯一の人間の村、ルカ村。

 ここは死の大地の中にありながら、神のくわの力によって瘴気が浄化された唯一の土地だ。当然瘴気に侵された土地はまだ近くにあるので、瘴気によっておかしくなったモンスターが時折攻め込んでくる。


 瘴気に侵されたモンスターは普通のモンスターより強い。

 しかしこの村の防衛設備は王都のものと比べても見劣りしない。

 立派な城壁に強力な魔導砲。多数の戦闘ゴーレムに訓練された兵士のみんな。

 最近はエルフの魔法使いにガーラン率いる騎士団も結成された。竜の群れがやってきても追い返すことができると思う。


 だけどそれでも問題はあって、


「資源が……足りない」


 次元収納インベントリの中の資源を取り出し、確認しながら呟く。

 木材は十分にあるけど、石や鉄が圧倒的に不足している。

 ここルカ村の周辺は鉱石資源が豊富なわけじゃない。大地は神のくわのおかげで豊かだけど、畑で石や鉄を増やすことはできない。

 今までは地下の物を掘って使ってたけど、それにも限界はある。あんまりやりすぎると地盤沈下のおそれもあるし、地下を穴だらけにするのは怖い。


「ならば掘りに行くしかありませんな」

「わっ! ガーラン!?」


 突然ガーランに話しかけられ僕は驚く。

 どうやらガーランは鍛錬の途中で通りがかったみたいで、肌には汗が浮かんでいる。


「私は学はありませんが、資源が重要であることくらい知っております。鉱石が切れれば武器や防具が作れなくなります。そうすればモンスターに対策することも困難になるでしょう。王国に頼れぬ今、資源は自分たちで確保しなければいけません」

「そうだね。完全に切れる前になんとかしないと」


 ガーランや兵士たちは、自分の身を危険にさらして戦ってくれている。

 そんな彼らにろくな装備を与えることができないんじゃ領主失格だ。まだ余裕がある今のうちに僕がなんとかしないと。


「なら南東の山脈が最適ね。あそこなら鉱石も取れるはずよ」

「え?」


 またしても突然話しかけられて振り返ると、そこにはアリスがいた。

 勇者の仕事でまた村を離れていたはずだけど、どうやら終わらせて帰ってきたみたいだ。


「アリス、帰ってきてたんだ。おかえり」

「ええ、ただいま」


 アリスはツインテールの片方を指先でいじりながら、少し恥ずかしそうに言う。

 今まで特定の帰る家を持っていなかったから、おかえりと言われるのが恥ずかしいのかもしれないね。


「聞いたわよ。私が留守の間にロックドラゴンの変異種を倒したそうじゃない」

「うん。パトリック兄さんの手伝いでね」


 悪政を敷く父上から王座を奪うため、兄さんは行動している。

 その助けをするためにロックドラゴンの変異種、黄金竜を僕たちは討伐したんだ。

 でもなんで今その話をしたんだろう?


「そのロックドラゴンは岩や鉱石を主食としている。そしてその中でも純度の高い鉱石を好んで食べる……つまり」

「ロックドラゴンがいた場所にはいい鉱石があるってこと?」

「その通り」


 アリスはウィンクして肯定する。

 なるほど、確かに筋が通っている話だ。モンスターの特性からそれを導き出すなんて、さすがアリスだ。


「善は急げ。さっそく行くとしましょう。ちょうど体を動かしたいと思っていたところです」

「今度は私も行くからね! エルフの里には行けなかったけど、今回は絶対ついていくから!」


 ガーランとアリスはそう同行を申し出てくれる。

 あの山脈はそれほど調査できてないので、不明なことも多い。二人が来てくれるなら凄い心強いね。


「ありがとう。頼りにしてるね二人とも」


 こうして僕たちの新しい目標は立てられた。

 トラブルとかなにも起きないといいけど……。

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