第21話 聖巫女の加護×2
石像が建てられてしまった日の夜。
僕はアンナさんの住む家に向かった。
新しく作られた村の区画に、エルフの人たちの家を作り住んでもらっている。
といってもそこにエルフの人たちを押し込めるつもりはない。ひとまずそこで村に慣れてもらって、そこからゆっくり村に住んでいる人たちと仲良くなってもらえればいい。
アンナさんの家もその区画にあって、そこでエレナさんと二人で暮らしている。
それにしても用っていったいなんだろう? こんな時間に女性の家を訪ねるなんてドキドキしてしまう。
一回深呼吸して、扉をノックすると中から「どうぞお入りください」と返事がする。アンナさんの声だ。
「おじゃまします」
扉を開き中に入ると、寝巻き姿のアンナさんとエレナさんが出迎えてくれる。
アンナさんは普段よりも露出が高い服で、エレナさんは普段よりも可愛らしい服を着ている上に髪も束ねている。
「いらっしゃいませ旦那様♪ さ、こちらへ」
「よ、よく来たな。こっちに来い」
二人に連れられ、僕は家に置かれているソファに案内される。
そこの中央に座ると、二人は僕を挟むように両脇に座ってくる。女性のいい匂いがして緊張する。
「まずは改めてお礼を言わせてください。我々エルフを助けてくださいましてありがとうございます。あのトレントを我々だけで倒すのは不可能だったでしょう」
アンナさんは誠意を込めてお礼を言ってくる。
確かにあの瘴気に侵されたトレントはとても強力なモンスターだった。神の斧の力がなかったら僕もなんとかできたか分からない。
「でもあれはお二人の助けがあったからですよ。僕はたいしたことは……」
「謙遜することはない。貴様の活躍ぶりは私も認める。胸を張れ」
なんとエレナさんが僕のことを褒めてくれた。
まだ口の悪さは残ってるけど、実は嫌われてないのかもしれない。
「……我々の里には古い言い伝えがあります。我々エルフの民に危機が訪れた時、それを救ってくださる『救世主様』が現れると。そして『聖樹の巫女』はそのお方を助け、そばで支える役目があるのだと。正直私はこの伝承に懐疑的でありましたが、今は旦那様こそこの救世主であったのだと、胸を張って言えます」
「アンナさん……」
僕が本当にその救世主なのかは分からない。
だけどそれを信じるおかげで彼女が少しでも救われるなら、それでもいいと思った。
「今こそ伝承に従い、聖樹の巫女としての役目を果たす時。やりますよエレナ」
「く……っ! し、仕方ない」
顔を真っ赤にするエレナさん。
役目って一体なんのことだろうと思っていると、二人はゆっくり僕に近づいてきて、そして二人同時に僕の頬にちゅっとキスをしてきた。
「……っ!?」
驚き硬直する僕。
二人は僕の手を握ったまましばらくそうした後、ゆっくりと唇を離す。
「『聖巫女の加護』、確かにお渡しいたしました。私たちの力が貴方を守ってくださることを祈っております」
頬をほんのり赤くしながらアンナさんは言う。
なるほど、その為に今日は呼ばれたんだ。一気に二人から加護を貰うことになるとは思わなかった。確かになんだか少し力が湧いてくる感じがする。後でどんな加護か確認しておかないと。
「うう、恥ずかしい。なんで私がこんなことを……」
エレナさんは余程恥ずかしかったのか、まだ顔が真っ赤だ。
こういうところを見ているととても可愛らしく感じてくる。あんなにツンツンした態度で接してくるのも、もしかしたら照れ隠しなのかもしれない。
「駄目ですよエレナ、そんなに照れていては。ほら、しっかり旦那様にご奉仕しなさい」
「あ、姉上!? なにを、やめ……!」
アンナさんはエレナさんの後ろに回り込むと、彼女の手首を掴み押さえつける。エレナさんはじたばたと抵抗しているけど、アンナさんはそれを完全に押さえつけている。強い。
「さ、旦那様。妹を襲っちゃってください!」
「くっ、殺せ……!」
「その台詞って本当に言うんですね……」
まさか生で聞けるとは思わず、感心してしまった。
しかし本当に襲うわけにもいかない、どうしようかと悩んでいると、
「安心してください旦那様。妹は本当に嫌がっているわけではありません。本心では旦那様ともっと親密になりたがっているのです。ねえエレナ?」
「そうなんですか?」
エレナさんに近づき、尋ねる。
すると彼女は耳を澄ませないと聞こえない、か細い声で返事をする。
「や、優しくしろよ……?」
いつもの強気でかっこいい態度とはまるで違う、しおらしくて可愛らしい仕草に僕はドキッとしてしまう。そして気がつけばアンナさんに言われた通り、彼女に襲い掛かり唇を奪ってしまっていた。
「ちょ、いきなり……ん……♡」
エレナさんは最初こそ少し抵抗したけど、すぐにそれを緩め身を委ねてくる。なんだかその仕草が愛おしくて僕は激しく彼女を求めてしまう。
しばらくそうした後、唇を離すと彼女はうるんだ瞳で僕を睨みつけてくる。
「うう、優しくしろって言ったのに……」
「あらあら、羨ましいですね。そんなに愛していただけるなんて。それでは私も……♡」
今度はアンナさんが僕に抱きついてきて、激しく唇を重ねてくる。
続け様にキスをしたことで、脳が痺れてふわふわした気持ちになってくる。
「ふふ、まだまだ夜は長いです。たっぷりと可愛がって差し上げますね♡」
「さっきはいいようにやられたが、次はそうはいかないからな……♡」
競い合うようににじり寄ってくる
結局この日は朝までたくさん加護を貰ってしまうのだった。
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