第59話 追憶〜決着と再会と再開
「来よったか。この、恥晒し共が。処刑してやるからさっさと死ねや。」
これが帰郷したウチらが里で最初に
周囲の雪女達は私達親子を囲みながらクスクスと嗤っている。
・・・ブルブルと震えて遠巻きにしている、私達を連れてきたリーダー格の雪女を除いて。
そして、
「・・・姉さん。どうしてもその言葉を撤回するつもりはないん?」
母様は最後通牒を突きつける。
しかし、
「はぁ?ええからとっとと死ね!!」
「そう・・・」
そう言って母様に氷柱の弾丸を放った。
しかし母様はそれを簡単に受け止めて握りつぶした。
「・・・は?」
ぽかんと口を開いている
遠巻きにガタガタと震えるウチ等を連れて来たリーダー格の震える音だけが聞こえるようやった。
「残念や・・・」
そう言って母様は力を開放した。
零士から貰った力、鍛えあげられた力のすべてを。
「・・・はぁ!?な、なんやその力!?そんな・・・そんな馬鹿な!?お前は落ちこぼれやろ!?落ちこぼれや無いとあかんのや!!」
ウチらは、社会に溶け込む為に、零士から力の隠し方を一番最初に教わり、そして一番修練していたのもあって、この里のもんはウチらの力には誰も気が付かなかんかったらしい。
冷や汗を流しながら焦る
「さようなら姉さん。本当はこんな事したくなかったんやけど・・・雪女の恨みが深いのは誰よりも知っとるから・・・」
そう告げた。
「ひ、ひぃぃ!?う、嘘や!み、みなのもの!!ガキを狙え!さっさと殺すか人質に・・・」
「誰が誰を殺すやってクソババァ?」
ウチも力を開放した。
まだまだ母様には届かんけれど、それでもウチの力もこの
零士に鍛えられたウチらは【大妖】とまではいかんものの、上位の妖怪の中ではトップクラス位にはなっとったから。
当然、周囲の雪女は一歩も動けず、すぐに目を反らしていた。
それを見て、母様は一歩前に出る。
後ずさり逃げようとする
「こ、殺すんか!?姉を・・・お前みたいな落ちこぼれが、長であるウチを!?」
「不出来な妹でごめんなさい。だけど安心して?ウチがこの里を守るから。」
「う、うるさいわ!この里はウチのもんや!お前みたいな落ちこぼ」
「さよなら。」
「あ”」
腕の一振りで
てんてんと転がる驚愕した表情のクソババァの首。
そして、周囲を見回した。
「
『・・・』
誰一人声をあげない。
「なるほど。認めたない、と、そう言う事やな?なら、」
母様は大きな氷の山を上空に作った。
「この里を新しくやり直すだけや。」
「み、認める!」
「う、ウチは最初から認めてた!」
「やめぇや!ウチ等が悪かったから!!堪忍してぇ!!!」
力の差を嫌というほど思い知らされた里の雪女達は次々とそう叫んだ。
「・・・なら良ろし。では、方針を告げる。よう聞きや?まず、人間を無闇に傷つけず・・・」
母様は里の方針を告げたんや。
これまでのように、面白半分に人間を殺したりせず、命を分けて貰う事に感謝し、命を吸う相手を殺す事のないように、という方針を。
その後はまぁ、色々反対意見も無いことは無かったんやけど、そもそもウチら親子に勝てるはずも無く、また、だからと言って外に出るんは怖いためできず、里の雪女達は自然とその方針を受け入れていった。
そしてウチは・・・
「今日も頑張ってるんやね雪羅。」
母様の言葉に顔を上げるまだこまいウチ。
「零士が来る前に零士んとこ押しかけたるんや。」
「そう。ええけど、使用人として、やよ?」
「わかっとる。」
母様は微笑んでそう言った。
母様はずっと零士に感謝している。
せやから、
・・・いや、一つだけ例外を認めてくれたっけ。
何年かして、ウチが母様よりも強ぅなった時やった。
里も落ち着き、人間社会を学んで、常識も知ったウチは、零士の元へ行く決意をした。
そして、千年妖樹を倒す依頼をして来たおっさんから、零士の入院中に聞き出した連絡先に電話し、今の零士の居場所を聞き出し、雪女の里を出発する時のことや。
「いってらっしゃい雪羅。主様を支えるんやよ?あ、でも、主様から結婚したいって言われたら、そん時は使用人は辞めてええからね?」
そう、あくまでも零士から言われた時やけど、そん時は使用人以外として零士の傍にいる事を認めて貰えたんや。
せやから、
「・・・きっと言わせたるわ。でも、母様、母様はそれでええんか?」
そう言ってやったわ。
やって、きっと母様も零士の事を・・・
「・・・ええんよ。でも、いつか主様・・・零士くんをこの里に連れて来てね?ウチも会いたいから。」
母様はウチの言葉の裏を理解し、苦笑しとったな。
里を出たウチは、零士が今住んどる街に行った。
人間社会で生きるために、ウチの戸籍なんかは、あのおっさんが手に入れてくれとった。
母様の分もな。
なんなら、その後に来た夜夢の分もあのおっさんの力や。
零士のおかげで出来た権力者への貸しをつこうたらしいわ。
「ええの?」
「はっはっは!まだまだいっぱいあるから問題無いよ。それよりも、彼を頼むよ?」
「まかせとき。尻に敷いたるわ。」
「はっはっは!それは良いね。」
あのおっさんは人間にしてはええ人やからな。
実はこっそりと受けとった、零士が入学予定の高校への編入試験も、あのおっさん経由で受けさせてもろたし。
ただ、ちょっと予想外の事もあったけどな。
なにせ、教えてもろうた住所と零士の霊力の残滓を色濃く感じる位置がちごたから。
そして、中から感じる懐かしい・・・心底心待ちにしていた気配。
ウチは、パンッと両頬を叩いた後、若干震える指でチャイムを鳴らす。
ピンポーンと鳴るチャイム。
玄関近くに居ったのか、すぐにガチャっと開くドア。
「・・・へ〜いどなたっすか・・・ふぇ?女!?・・・あ、あんたまさか・・・雪羅・・・か?」
懐かしい顔やった。
少し精悍になった愛おしい顔やった。
・・・今でも鮮明に思い出せる・・・
「は~嘘だろ。すっげー美人になってるじゃねーか!?前も整った顔してたが…は~、すげぇなオイ。」
っ!!
この阿呆、相変わらずストレートに言うて…はよ管理しに来て正解やったわ。
「・・・お久しぶりです主様。住み込みで仕事をしに来ました。」
「はぁ!?どうやってここが!?つ〜か住み込み!?」
唖然とした、少し幼さが残る零士と、恥ずかしさと嬉しさを隠すため、ツンとしたままのウチ。
こっから、今が始まったんやな・・・
『雪羅っち!大丈夫~!?』
夜夢の声?・・・ああ、段々と景色が薄うなってく。
多分、意識が戻るんやな。
零士、はよ会いたい。
頼むから、はよ、目ぇ覚ましてや?
ウチは、あんたがおらんなったら、生きていけへんから。
せやから、なんぞあるなら、命をかけて救ったる!!絶対や!!!
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