第10話 高校一年生 冬 それって体の良い追放なのでは?

 あ〜、確かありゃ12月・・・冬休みの前だったか。


 高校生活や雪羅との暮らしにもそれなりに慣れて来た頃だったと思う。

 

 もうすぐ冬休みって事で、俺は雪羅のおふくろさんのところに行こうと、雪羅と話して計画をしていたんだ。

 理由は、雪羅を仕えさせなくても居候でいいんじゃねぇかって言いに行こうと思ったからだ。

 

 いや、そりゃありがたいぞ?

 

 飯も、風呂も、掃除もやってくれるんだからさ?

 でも、なんだかそれも悪い気がしてなぁ。

 俺もやろうとするんだが、雪羅が怒るんだよ、手伝うと。

 

 で、二言目にはおふくろさんに仕えろと言われたからって言うから、撤回してもらおうと思ってな?


 まぁ、雪羅は絶対おふくろさんは撤回しないって言うけど、普通に考えて娘を仕えさせるなんて抵抗があるだろ?

 だから、なんとかなるって考えたんだ。


 で、冬休みに入ったらどの日程で行くかって話し合ってた時だった。


「なんだ!?」

「これは・・・?」


 いきなり俺と雪羅がいる空間が歪み始めた。

 いや、それだけじゃない。


 嗅ぎ覚えのある空気と、術式に感じる魔力でも霊力でもない強大な力。

 すぐにピンと来た。


 召喚だってな。


「まさか、また喚ぶ気か!?」

「喚ぶ!?零士、これがなにか知っているの!?」

「ああ、知っている。よく、知っている・・・だが、おかしい。あの時感じた引っ張られるようなのがねぇ?いったいなんだ・・・?」


 そんな風に雪羅と警戒していたんだが、次の瞬間、


「やっと出れた〜!!あ!レージ!レージだぁ!!」

「夜夢!?なんでこっちに!?」

「レージ!!会いたかった!!」

「うおっ!?むぐっ!?」


 いきなり空間を突き破って飛び出てきた夜夢に、半泣きで抱きしめられたはいいが、とある事情で息は吸えねぇは喋れねぇは・・・ん?暁月、なんで俺を睨む?霊剣に手を伸ばすな。・・・雪羅?背中がめっちゃ冷たいんだけど?俺、風邪引いちゃうよ?良いの?


「・・・零士?」


 まぁ、そんな俺だったんだが、抱きしめられながら藻掻いていたら、後ろから雪羅がすげぇ低い声で名前を呼んで来てな?

 雪羅が名前で俺を呼ぶ時って焦ってる時か怒ってる時なんだよ。

 それも、すっげぇ怒ってる時。


 だから慌てて夜夢を引き剥がしたんだ。

 

 んで、聞いたわけ。

 なんでこっちに・・・いや、どうやってこっちに来たのかって。

 そしたらさぁ?


「なんか、レージを喚んだ女神がね?レージのいるところに行きたくないかって言うから、行きたいって言ったら連れてきてくれたんだよね〜。あ、はい、これ、女神からの手紙。」


 そう言って夜夢が俺に手紙を差し出すから、受け取って目を通してみたら、


『もう、この子の面倒は見られません。悪戯が洒落になってないのよ!あなたが魔王より強くしたんだから、責任を取って引き取って下さい。返品不可。』

「あ・ん・の・ク・ソ・女・神・が〜〜〜〜〜!!!」


 とか書いていやがる!!

 俺は手紙を破り捨ててやったね!!

 ほんと、次会ったらマジ、グーパンだわ!!


で、息を荒らげてたら、


「零士・・・紹介しなはれ・・・早ぅ。」


 雪羅がすげぇ殺気立ってやがってさ?

 キレると方言出るんだわ。

 なんでキレたんかね?


 ん?

 なんでお前ら頷いてんの?

 俺、マジでわかんなかったんだけど。


 あ、はい、続き話します。


「レージの使い魔の夜夢ちゃんで〜す!」

「・・・は?使い魔?使い魔やって・・・?使い魔・・・確か西洋の・・・零士、説明しなはれ。はようしなんし!!」

「い、いや、だから・・・使い魔は使い魔だろ?パスが通った使い魔だ。」


 こう説明したんだが、雪羅は納得しなくてなぁ。

 ひと悶着あったんだよ。


「・・・主様、たしかにその通りですが、かなり端折はしょられましたね?」

「あ、こ、こら雪羅!!」

「そうだよねぇ〜。あの時のご主人様、夜夢ちゃんとのエッチな繋がりを雪羅っちに見破られて・・・ぷくく。」

「おい夜夢やめろ!!」


 ば、馬鹿やろう!!

 何を暴露してやがんだ二人共!!

 そんな事を言ったら・・・


「零士」「零士さん」「零ちゃん」

「「「隠さず言え」」」


 ほら〜!!

 なんか怒ってるし!!

 くそ〜〜〜!!!


「話にくいの〜?なら、夜夢ちゃんが話してあげる〜。」

「あ、こら夜夢・・・むぐっ!?」

「零士は少し黙ってなさい。」


 ぐっ!?暁月離せ!

 猿ぐつわなんかどこから取り出しやがった!!口を塞ぐな!!


 くそ!!夜夢が話しはじめやがった!!

 あの時の雪羅のセリフを覚えていやがるのかよ!


 〜以後、夜夢の物真似〜



「・・・百歩譲ってそれはええ。せやけど、一つだけ承服できん事がある。なぁ零士?なんでこの女の下腹部に、あんさんの強い霊力パスがあるん・・・?あのいやらしい模様からより強ぅあんさんの精気を感じるんやけど・・・?」

「う”っ・・・」


 夜夢のヤツ、一言一句覚えてやがんのかよっ!!

 ジロリ、と暁月達の視線がこちらをむく。


 ・・・まぁ、ほら、俺、夜夢に食われてただろ?

 だから、サキュバス特有のパスの繋がり方になっちまってて、それで・・・あの、なんでみなさん、俺をそんな殺したいって目で見てるんですかね?


 その後の事を思い出す。


「そりゃあるよ?だって夜夢ちゃんサキュバスクイーンだし?レージの初めて、美味しく頂きました♡あなたもニンゲンじゃないね?夜夢ちゃんと同じように精気を貰ってるタイプかな?あれ?でもまだしてないみたいだね。夜夢ちゃんの方が魅力があったってことかな〜?」

「・・・殺すぞ、おどれ?」


 その後はそりゃもう、部屋がめちゃくちゃになるまでバトルですよ。


 慌てて結界張らなきゃ、この近辺消し飛んでたか氷の世界になってたか・・・


 ま、結局、勝者は・・・


「ゥ、ウチが負けた・・・?こんなド阿呆に・・・?」

「えっへっへ〜♡愛の勝利だね!」

「・・・っ!!」


 夜夢だったんだがな。

 サキュバスクイーンにまで進化してたからな。

 流石の雪羅も敵わなかったんだ。


 で、雪羅は泣きながら家を飛び出していったんだ。

 ぶっ!?いってぇな!本当の事だろうが雪羅!

 あだっ!あ、ちょ!?やめ、やめて!?


「でもねぇ、ご主人様は雪羅っちを追っかけてっちゃったんだよねぇ。夜夢ちゃんに、『お前なぁ!やりすぎだし、煽りすぎだ!』って怒鳴ってさぁ?酷いよねぇ?」


 ・・・そりゃそうだろ。

 雪羅は、家事やってくれてたんだぞ?

 それに・・・いや、なんでもねぇ。


「素直に言えば良いのに。心配したって。」


 うっせぇ!ニヤニヤすんな夜夢!!


 ・・・まぁ、夜夢にはそこで待機するように言って俺は雪羅を追いかけたんだ。

 

 んで、探し出して家に帰るように言って、帰ったんだ。

 終わりっと!


「あ〜、隠した〜!!本当は、その後泣かれた雪羅っちを慰めるために雪羅っちを抱いた癖に〜!!」


 て、てめぇ!どこまでぶっちゃけやがるんだ!

 

 あ、ち、ちが・・・わないが、その・・・


「ウチはいらんの?あいつの方が好きなん?だからウチは抱かんの?」


 なんて言われたらだな?

 ぎゃ!?せ、雪羅何する・・・お、お前、恥ずかしいからってそれはやり過ぎ・・・ぐぇ!?ぎゃ!?げふっ!?

 え、な、なんで暁月達まで!?


 ぎゃああああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・

 











 あ、あたた・・・ひでぇ・・・俺、ボロボロじゃん・・・


 あ、続き話せって?

 と言っても、もうそんなに無いぞ?


 結局、雪女らしく俺から上質の霊力を得た雪羅も、大妖と言われるに足る妖怪に進化してな?

 で、家に帰った後、雪羅と夜夢はきちんとお互いの身の上を話し、それを聞いた夜夢が、


「あ、じゃあ夜夢ちゃんも仕えるね!ご主人様♡」


 って、メイドになる事になったんだ。


 で、その後はこっちの世界の常識を得るために費やし、春を待ってうちの高校に入学したってわけだ。

 ん?戸籍は、サキュバスの魅了を応用した精神操作で得たぞ?


 とまぁ、これがこれまでの経緯だな。


 ・・・ん?

 一緒に住んでるのかって?


 ・・・


 あの、なんで暁月も、四之宮も、結城先輩も、舞さんも涙ぐみながら近寄って来るんですか?

 なんで拳を握りしめているんですかね?

 

 ちょ、ちょっと・・・なんでそんな怖い顔してるのかな〜?

 スマイル!スマイル大事!


 俺、みんなの可愛い笑顔が見たい・・・うぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ・・・ぁ・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る