閑話 乙女心 暁月 真奈の場合
なんなのよアイツ!!
歩く足音が荒くなるのが自分でも分かる。
あたしの心は現在ぐちゃぐちゃだ。
今日は本当に色々あった。
アイツとの久しぶりの再会から、怒涛の展開!
向こうにいる時から、まさか彼女ができてたらどうしようとか考えてたけど、予想外の事になってるし!!
何、他の女としちゃってるのよ!!
それもあんな美人と美少女とだなんて!!
人間じゃないとか関係ないわよもうっ!!
あんな巨乳に・・・巨乳に・・・くすん。
今はアイツの家からの帰宅途中。
隣には血を分けた妹である美奈がいるけど、お互い無言だ。
まさか、美奈までアイツと知り合いだったなんて・・・いえ、それどころか、アイツの家での事を考えると、どう考えても・・・も〜っっ!!!!
・・・アイツ、忘れてるんじゃないの?
昔した約束を。
アイツとは幼馴染。
物心ついたころには一緒に居た。
アイツはこの国でも有数の祓魔師の跡取りで、あたしは父様の仕事の関係で一時期その里に身を寄せていたエクソシストの子供。
あたしは家は片親だった。
まだ美奈が生まれる前は別のところで家族で住んでいたけれど、美奈が生まれた時、美奈が霊力を持っていない事が分かった。
で、お母さんは父様と話し合い、離婚する事になった。
霊能力者の家は危険だ。
結界なんかは当然張ってあるけれど、それでも、妖魔や危険な思考をした同業者なんかに命を常に狙われている。
そんな時、能力が無いのは致命的だ。
お母さんは自分の事であれば耐えられるけど、身を守る術を持たない美奈を危険に晒すのは、どうしても承服できなかったらしいの。
で、話し合いの上で離婚したそうよ。
悲しくなかったわけじゃない。
当然あたしも泣いたから。
でもそれでも、子供心に父様一人で危険な仕事をするというのは嫌だった。
だから父様の跡を継ぐのは望むところだった。
寂しくなかったわけじゃないけど・・・それでも耐えられたのは零士がいたからだった。
零士と出会ったのは、父様が離婚して、まだ戦えない子供のあたしの事も考えて、祓魔師が住む里に移住する事を考えて引っ越した時だった。
零士はお隣さんだったの。
もっとも、田舎だったから、家自体は隣り合わせでは無かったけれどね。
零士は上手く術が使えないというハンデを抱えていたので、あの里にいた他の祓魔師からよく馬鹿にされていた。
それでもめげずに一生懸命頑張っていたわ。
あたしはそんな零士が凄いと思った。
霊力を扱う修行は、大人でもきついもの。
それを子供のうちから口では嫌だ嫌だとは言いつつも、手を抜くこと無く頑張ってた。
だからあたしは心に決めた。
あたしが強くなって零士と一緒に戦うんだって。
幸い、あたしには才能があった。
みるみる内に強くなるあたしを、父様はエクソシストの本場で鍛えることに決めた為、あたしは零士と離れる事になった。
あたしは泣いた。
だって、零士といられなくなるのは本当に嫌だったから。
でも、父様から最強のエクソシストになるには、向こうに行ったほうが良いと言われ、あたしは目標のために決意したの。
それも全ては零士のため、そう思ってた。
もし万が一零士の努力が実を結ばなくても、あたしがそれを補う為に。
だからあたしは父様に一つ条件をつけたの。
父様より強くなったら、あたしは日本に帰って来るって。
あたしは向こうでも努力を続け、やっと去年の冬に父様を凌駕したわ。
正直、あれは父様が少し手を抜いたのだと思っているけれど、それでも同世代のエクソシストの中ではダントツの実力を得た私は、父様の納得が行くものだったらしい。
日本への単身での移住許可が出たの。
父様は向こうでの仕事があるからね。
そうと決まれば早かった。
まず最初に連絡したのは零士の家だった。
でも、何故か誰も出ない。
当時の知り合いに頼んで調べて貰ったら、零士の家はほとんど無人で、零士はどこかへ引っ越したとの事だった。
多分、祓魔師として大成できなかったのだろう、あたしはそう思って悲しくなった。
零士の父親は厳しい人だった。
おそらく追い出されたのだろうと。
途方に暮れていたあたしは、お母さんに連絡をした。
そしたら、喜んで同居してくれるって話だったので、すぐに海をわたり、挨拶に行ったわ。
これまでにも、何度か会いに来ていた事もあり、同居の話はすんなりと進んだ。
お母さんとも、妹の美奈とも良好な関係を築いていたからね。
学校は近場の私立高校に編入して、暇を見つけては零士の情報を探していたの。
そしたら・・・まさか同じ学校!?
ていうか、アイツ絶対に早々に気がついて逃げ回ってたわよね!?
最初は目の錯覚だと思ったけれど・・・いえ、昔と比べてかなりふてぶてしくなっていたけれど、それでもあたしがアイツを見間違える訳がない!!
顔立ちもそうだけど、何より霊力がアイツのものだったから。
霊力は指紋と同じく、人によって千差万別なの。
アイツの霊力の質をあたしが間違えるわけがない!
あたしはアイツが逃げ回っている事に哀しくなったけれど、それは多分祓魔師になるのを諦めたから合わす顔がなくて逃げているのだと思っていた。
だから言ってあげようと思った。
祓魔師になれなくてもまた一緒に居ましょうって。
陰からサポートしてあたしを助けてって。
お願いだから一緒に居てって。
そしたら!
そしたらよ!?
アイツまさか美人と美少女の二人を侍らせるどころか同居までして、更にアイツに気がありそうなのが何人もいるだけじゃなく、もうあんな美人と美少女と・・・あ〜〜〜〜っ!!もうっ!!!!
すっと一緒って言ってたのに!
嘘つき!!!
絶対許さない!
いや、責任は取ってもらうわ!!
あいつはあたしのものよ。
ライバルにはあの美人、美少女、中には妹もいるみたいだけど、それでもこれは別!
アイツを一番好きなのはこのあたし。
絶対負けない!!!
それにちょっと気になる事があった。
アイツもしかして・・・
だったら、あたしがなんとかしてあげたい。
他の誰でもなく、あたしが!!
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