第37話 その時は・・・
先輩が学校を無断欠席し、連絡もつかなくなった。
俺たちは先輩を除き、部室に集まっている。
みんな心配そうな顔をしている。
まぁ、俺もそうなっているだろうけどな。
「結城先輩どうしたんでしょう?」
「学校も無断で休んでいるみたいよね?あの結城先輩がそんな事するとは思えないわ。」
「連絡もつかないし、もしかしてなにかに巻き込まれたのかも・・・」
「事件って事!?大変じゃない!!」
現在、部室で先輩の無断欠席の事をみんなで話しているところだ。
昨日の侵入者の事もあり、正直少し焦る。
もっとも、先輩はひとり暮らしだと以前聞いていた。
もしかしたら、体調が悪くて連絡すらできていない可能性だってあるにはある。
かなり薄い可能性だが。
ただの杞憂だと良いのだが・・・
しかし、そんな俺の憂慮はどうやら当たりらしい。
全然嬉しくねぇ。
「結城の家を確認して来た。やはり、不在のようだ。」
かすみさんが、学校で先輩の自宅を調べてくれて、帰宅途中に確認して来てくれたようだが、どうにも人の気配は無かったらしい。
どころか、
「室内は整然としていた。争った跡も無い。しかし、残されていたスクールバッグには、昨日の授業のものや、弁当箱も残っていた。となると考えられる事は3つ。帰宅後、何者かに指示されて自ら同行したか、それとも脅されて同行したか。もしくは、危険を感じてどこかへ雲隠れしたか。」
どうやってか室内に侵入し、確認してくれたようだ。
『やっぱり結城ちゃんが狙いだったかぁ〜。でも、そうなると超能力が狙いって事だよね〜。ん〜・・・今すぐ命の危険がどうこうでは無いとは思うけど・・・あんまり悠長にはしていられないね〜。』
オープン通話状態でスマホ越しに聞いていた舞さんが難しい声でそう言った。
くそっ!
やっぱり、昨日の内になんとかして先輩の家に行くべきだったか!!
ギリッと歯を食いしばる。
歯茎から出血したようで、血が流れた。
「・・・主、落ち着く。私がちょっと調べて見る。結城は一人暮らしだ。あの年頃でひとり暮らしは無いとは言わないが、妙な気がする。なにか、家族の事でトラブルがあったか、過去に何かあった可能性が高い。」
『そうね〜。私も、ちょっと伝手を当たって見るよ。正直、結城ちゃんが普通の一般人に負けるとは思えないし。超能力が目的だった場合、それを目当てにした誘拐、もしくは連れ去りの可能性が高いもん。となると、それを利用するつもりがあるって事。連れ去りなんて大掛かりな事だから、リターンも大きな筈だし。不自然に大きな成長をした組織や会社なんて怪しいかもね。』
かすみさんと舞さんに肩に手を置かれてそう諭される。
・・・ふ〜、落ち着け。
焦っても仕方がねぇ。
俺ができるのは戦う事だけだ。
かすみさんと舞さんが調べてくれるなら、俺はその時の為に精神を統一していた方が良い。
「零士、安心せぇ。あの女はそう簡単にくたばらん。曲がりなりにも、ウチや夜夢と張り合おうとした女や。」
「そうそう!あの
そう言って雪羅と夜夢にも窘められた。
そうだな。
先輩はすげー人だ。
あの人は、どんな理由かは知らねぇが、親元離れてたった一人で住んでて、みんなに憧れられ、教師からの信頼も厚い漫画やラノベみたいな生徒会長をやってる人だぜ?
俺みたいなろくでもない人間とは違う。
あの人がそう簡単にどうこうなるわけねぇか!
よし、決めた!
俺は俺にできる事をする!!
だから、もし、先輩が苦境にあるのだとしたらその時は・・・
side雪羅
零士が座禅をして精神を統一している。
ピンと張り詰めた空気。
凄まじい集中力や。
それにしても、どこの誰だかかしらんが馬鹿な事をしたもんや。
この零士を相手にするなんて死にに行くようなもんやしな。
正直嫉妬するわ。
あの女の事をここまで考えてるなんてな。
「ねぇ、雪羅っち。もし、あの人が死んでたり酷い目に遭ってたら、レージどうすると思う?」
同じように零士を見ている夜夢がそんな事を聞いてきた。
そんなん、
「聞くまでもないやろ。」
「だよねぇ。馬鹿だなぁ。」
そんなん夜夢も充分承知の事やろ。
その時はどれだけの命が消えるんやろうなぁ。
ウチにとっては、人間がどれだけ死のうが構わん。
正直な事を言えば、あの女が死のうがどうでもええ。
せやけど、その結果、零士が傷つくんならウチかて許さん。
死ぬよりも辛い目に遭わせたらな気がすまん。
それは夜夢も同じやろな。
まぁ、どうなるかはわからへん。
ただ、もし、その結果零士が人の世に生きられんようになったら、ウチはついて行くだけや。
絶対にウチは零士を一人にはせん!
もっとも、そん時はそばに夜夢と舞、それにかすみもおるやろうけどな。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
どちらにせよ、実行したバカ共の行く末は真っ暗やろうな。
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