第36話 なにかあったのか!?
「ふ〜ん。なるほどねぇ?」
帰宅してから舞さんにも一応、今日あった事を話している。
俺としては、かすみさんが言ってた事が一番可能性が高いと思っているけど、舞さんからも意見が聞きたかったからだ。
もぐもぐと口を動かしながら考えているような舞さん。
そして、ぺろりと唇を舐める。
それにしても・・・なんで食事してるだけなのに、この人こんなにエロく見えるんだろ?
教えて!エロい人!!
「ちょっとまだ情報が足りないから、正直なところわかんないけど、かすみちゃん、一つ教えて?高い塀に足跡がついていたって事なんだけど、一人分だったって事なんよね?」
「そう。一人分の靴跡だった。」
「で、痕跡を残すって事は忍びじゃないんだよね?」
「おそらく。忍びであれば極力そういった痕跡はつけないように行動するし、私の忍具にかかった事に気がついたら、痕跡を消して立ち去る。百歩譲って気が付かなかったとしたら、立ち去った意味がわからない。何も無いのに情報ゼロで立ち去るなど、忍びの矜持が許さない筈。」
「目撃されたとか?」
「そんな間抜けな忍びはいない。」
かすみさんと舞さんの会話が続く。
「じゃ、次は雪羅ちゃんと夜夢ちゃんね?二人は妖気なんかは感じてないんだよね?」
「ええ、何も。」
「夜夢ちゃんも、魔力感じてないよ?」
「ふむふむ。」
そして最後に俺を見た。
「零ちゃんは、霊力や魔力の感知はできる?」
「そりゃな。おそらく、暁月や四之宮だってできる筈だ。」
「めちゃくちゃ上手く隠蔽してたら?」
「う〜ん、そりゃどうだろうなぁ?それでも違和感くらいは感じる気もするが・・・」
そこで舞さんは目を閉じた。
そして2分くらいして目を開ける。
「多分、狙いは結城ちゃんだね。相手は超能力者だよ。」
「「「「!?」」」」
舞さんの言葉に驚いた。
「まず、かすみちゃんは正しい。優秀な忍びであるかすみちゃんが仕掛けた忍具、相手が気が付かない可能性もあるけれど、なら、尚更その後の行動がおかしいもん。それに、
「先輩の場合?」
「っ!!そうか!読心術!!」
あ!?そうか!!
「そう。テレパシーを警戒した。だから、侵入経路の確認だけに努めたんだと思う。そして、そこから考えられる事としては、結城ちゃんの能力をそれなりに知っているって事にもなるね。」
なるほどなぁ。
ん?
て〜と、今先輩は危険だって事か!?
「くっ!先輩の家ってどこだ!?」
「主様、結城に連絡取れました。まだ無事のようです。」
俺が焦って立ち上がると、雪羅がLINKで既に連絡を取ってくれていたようだ。
「すぐに迎えに行くって言ってくれ!!」
俺がそう言うと、雪羅はスマホで書き込みをし・・・ため息をついた。
「・・・主様、断られました。」
「何!?」
そう言ってスマホの画面を俺に見せる。
するとそこには先輩からのLINKで、
『大丈夫よ。あなたが心配する必要はないわ。』
それだけがあった。
「・・・まぁ、いっか。先輩がそう言うなら・・・」
先輩の意思が硬いなら仕方がない。
そう思って席に座る。
「・・・妙だね。」
しかし、ポツリとつぶやく舞さんの言葉にぎしりと身体が止まった。
「舞さん?」
「ん〜・・・これ、本当に大丈夫かな?」
「どういう事、舞?」
「雪羅ちゃんは気が付かない?あの子の気持ちは知っているんでしょ?」
「「「!!」」」
ん?どういう事だ?
しかし、訝しげにしている俺を尻目に雪羅、夜夢、かすみさんは驚きに目を見開いている。
「せっかく、大手を振って泊まりに来れる状況なのに、拒否する?ちょっと不自然に感じるよね〜。」
そうなのか!?
よくわかんねーけど、先輩が今危ないってなら!!
「雪羅!」
「・・・あかん。既読つかん。」
「くっ!!」
なにかあったのか!?
「あ!?既読つい・・・『大丈夫』・・・かぁ。」
夜夢がそう言って首を傾げる。
・・・先輩、本当に大丈夫なのか?
「とりあえず、明日詳しく話をしたほうが良いね。学校終わったら連れて来なよ。ちょっと対策した方がいいと思うよ〜。」
「ああ、そうする。」
舞さんに同意する。
とりあえず、明日だな。
しかし、翌日、先輩は学校に来なかった。
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