第35話 絶対わざとだろう!!

「はぁ!?隠岐先生と一緒に住むことになったぁ!?」

「なんでそうなってるんですか!?意味がわかりません!!」

「本当ね。どうしてそうなったのかしら?」

「いや、そ、その、だな?」


 いま、俺は暁月、四之宮、結城先輩に詰め寄られ、冷や汗を流しているところだ。


 今日は学校に登校し、いつも通り同好会の時間まで過ごし、全員部室に集まってだべっていたのだが・・・


「そういえば、かすみん?学校では先生呼びした方が良いよね?」

「そうして欲しい。」

「夜夢、それはそうでしょう?いくら主様とを結んで同棲しているとはいえ、公私は別にしないと。」

「いっけな〜い、てへ☆」

「「「はぁ!?」」」


 という流れのもと、こうして詰め寄られているのだ。


 夜夢と雪羅め!!

 絶対わざとだろう!!


「さっさとと言いなさいよ!!」

「そうです!説明して下さい零士さん!!」

「詳細をきりきりと吐きなさいな。」

「ひぃっ!?」


 この後、怒髪天の暁月、四之宮、結城先輩に詰め寄られて洗いざらい吐かされた。

 それはもう、拷問もかくやというほどだった。


 どんな手口だったかって?

 聞かないでくれ。


 俺を見たらわかるだろう?

 見ろこの傷!

 この腫れ!

 

 思い出したくねぇんだっつの!!


「・・・ぬぅ。まさかの伏兵だわ!!」

「本当だよ・・・どうしよ・・・このままじゃ・・・」

「・・・同棲、ね・・・」


 三人は一頻ひとしきり俺を嬲った為か、何故かまだ怒っているものの、それでも直接的なものを向けるのは止めてくれた。

 にしても、なんで怒ってるのか・・・あれか?

 俺が何人かの女性ひととそういう関係になったのが気に入らない、とかか?


 そういえば、女ってのは合コンとか行ってるってだけでも男を攻める生き物だってクラスの男どもが前に言ってたな。

 

 それか!!

 だからか!!

 

 にしても、軽蔑するならまだしも、こんなにボコスカにするほど怒らなくても良いのに・・・


「・・・どうせまた的はずれで阿呆な事考えとるんやろな。」

「それがレージだからねぇ。」

 

 なにか雪羅と夜夢が呆れたような表情で小声で話をしている。

 こっち見んな!!


 お前らのせいなんだからな!!

 ぜんぜん助けてくんね〜し。


 覚えてろよ!!


「・・・ん?」


 そんな時だった。

 

 かすみさんが、突然外を見て、なにかを気にしているそぶりを見せた。

  

 少し表情が剣呑に見える。

 

「どうしたんだ隠岐せんせ?」

「あ!?ちょっと零士!まだ終わってな」

「暁月、ちょっと静かにしろ。」

「・・・何よ・・・」


 暁月を黙らせ、かすみさんに近づく。


 俺とかすみさんの様子にようやく暁月達も何かが起きていると気がついたようで表情を変えた。


「・・・いま、忍具に反応があった。誰かが学校に入ろうとしたようだ。」

「え!?」「不審者ってことですか!?」


 暁月と四之宮が驚く。


「大変!すぐに教師に知らせないと」

「結城、少し待て。」

「でも」


 先輩は、すぐに学校に知らせようとした。

 だが、


「私が忍具を仕掛けたのは、この学校内の死角に位置する所だ。いくつかあるが、今回は敷地内に入ったところで立ち去っている。」

「・・・なんで分かるんですか?」

「二段構えとなっているから。もう少し侵入するともう一つ反応する。それが無いって事は立ち去ったと見て良い・・・筈。だが、確実とは言えない。少し見てくる。」


 かすみさんはそう言って部室を出ていった。


 その間、俺たちは念の為、すぐに動ける状態では居たのだが、特に騒ぎは起きない。

 

 15分位でかすみさんは戻って来た。


「どうでした?」

「誰かが侵入しようとしたのは間違いが無い。痕跡があった。それも、おそらくなんらかの力を持った存在だ。それがどんな力かわからないが。」

「え!?」


 力を持ったヤツ、だと?


「その通路の直近には高い塀があり、その塀の上には足跡が残っていた。相手はおそらく一人。今日は様子見だった可能性が高い。」

「何が狙いなんでしょう?」

「わからない。だが、気をつけるべきだ。普通じゃない人間が普通の人間を狙う可能性は低い。」


 なるほど。

 となると、狙いは俺たちの内の誰か、か?


「忍びの可能性は低い。私達なら、足跡など残さない。だから、主かセツラ、ヤム、暁月や四之宮、それに結城のいずれかが狙いだと思う。」

「・・・そう、ですか・・・」


 先輩が深刻な顔で考え込む。


「とりあえず、今日から少しの間、特に注意しよう。雪羅と夜夢、暁月と四之宮は二人で行動するとして、先生は・・・」

「私は大丈夫。隠形を使って帰宅する。」


 ふむ。

 となると・・・


「先輩は、」

「私も大丈夫よ。いざとなれば能力を使うから。」

「だけど、」

「大丈夫。なんとかなるから。それに、私を狙っているとも限らないでしょう?私は、暁月さんやあなた、それに妖魔である九重さんや八田さんほど狙われる理由も無いし。」

「・・・」


 そこまで拒否をされるとどうしようもないな。

 一応、気にしておくか。


「念のため、LINKで連絡を取り合えるようにしておこうぜ。」


 LINKとはSNSの一種だ。

 俺たちは同好会で一つトークルームを作り、情報を交換できるようにしておくことにする。


 こうして、俺たち【オカルト研究会】は緊急体制を取る事にした。


 まぁ、俺たちが狙いとも限らないが・・・なんとなく感じる。

 狙いは俺たちだ。


 これまで何度も危険な目に遭ってきたからか、そういう予感はあたる。


 だとしたら答えは簡単だな。


 もし俺たちに手を出して来たら・・・

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