閑話 とある場所で
都内某所。
とあるビルの地下にそれはあった。
近代的で明るくモダンなビルの底。
コンクリートの打ちっぱなしの地下室。
何部屋かに分けられた広い部屋があり、50人ほどがいる。
「ようやく見つけたのか?」
その地下室の一番奥の部屋。
豪奢な椅子にふんぞり帰って座る男。
年齢は20代半ば。
そして、その椅子がある机の前には一人の男。
「はい・・・気が付かれてしまうので近づいてはいませんが。」
男はそう言って一枚の紙を差し出す。
そこには写真もついており、その写真を撮影した場所、日時、そして、その時写真の被写体が着ていた着衣が示す学校が記載されていた。
「どれどれ・・・お?マジじゃん!成長してるが、こりゃあの子に間違いねぇな!こ〜んなところに隠れてたのか!澄ました顔しちちゃってまるで普通の人間みて〜じゃね〜か。」
「あれから10年・・・こんな場所でどうやってそれまで隠れていたのか分かりませんが、名字を変え、戸籍を改ざんし、上手く紛れていたようです。」
「へぇ・・・となると報告にあった以上の能力があったって事かねぇ?」
「そこまでは不明です。」
「ふ〜ん・・・」
その場で一番偉そうな男はそう言って言葉を戸切らせた。
考え込んでいるようだ。
「お前はどう思う?」
「連れてくるべきでしょ。本来の予定であれば、私と共にここにいる筈だったし。」
「だよなぁ?」
その言葉は男の脇にいた女性にかけられた。
その女性は派手派手しくは無いものの、派手な印象がある女性。
ソファにもたれかかり、けだるげにそう答える。
長い髪をかきあげながら。
「しっかし、美人になったじゃね〜か。当時の資料を見た時にも片鱗はあったが、これほどとはなぁ?」
「・・・ちょっと?」
「いいじゃね〜かつまみ食いぐれ〜さ?一番はお前だっての。」
「・・・ムカつく。」
「ま〜ま〜!そう怒んなって!!」
男が女を
それを立ったまま何も言わずに眺める報告した男。
いつものことなのだ。
「ま、どっちにせよ、だ。」
男は報告した男を見る。
その瞳は冷たい。
「うちの社員に損害を出した女の娘であるソイツには、嫌でも仲間になって貰わないとな。お前みたいな普通じゃない女は普通には生きられねぇってのを教えてやんね〜と。」
「どうすんの?」
「な〜に、簡単さ。まずは普通の勧誘、で、拒否したらじわじわと脅迫。いつもの事だろ?」
「ふ〜ん。」
「おい。」
「はっ!」
女性との会話を切り上げ、男は立っている者に顔を向ける。
「まずは詳細を調べ上げろ。そいつの偽名、住んでいるところ、立場、周辺者、金銭状況なんかを念入りにな。俺たちなら簡単だろ?」
「勿論です。」
「こいつは一芸だけのヤツじゃねぇ。複合した能力を使えるって話だ。何を犠牲にしてでもぜって〜連れてこい。良いな?」
「分かりました。」
「行け。」
「はい。」
報告していた男がその部屋を出る。
「・・・そんなに使えるの?もう充分じゃない。」
「ああ、俺たちの表向きの会社もかなり大きくなった。ま、そりゃ当然だけどな。俺たちにできねぇ事はね〜んだから。」
女の言葉にヘラヘラとそう答える男。
しかし、すぐに表情を変える。
「だが、そりゃ俺たちの努力の
男は表情を歪める。
「俺たちを利用していた馬鹿な奴らは軒並み始末し、俺たちが会社を乗っ取った。」
女も嗤う。
見に覚えは充分にあったからだ。
「それまでは本当にきつかったし、辛かった。仲間も何人も死んだ。」
そこで顔を悔しげに歪める男と女。
しかし、次の瞬間、男は嗤う。
「だが、この女と母親だけは逃げ延びている。まぁ、母親は自爆したし、遺体も上がっているから死んでるのは間違いねぇが、娘は別だ。のうのうと暮らしやがって・・・せいぜい使い潰してやる。俺たちの苦しみを味わ合わせやるのさ。心も身体もな!」
「うふふ・・・そう、そういう事。なら、良いわ。・・・何も知らずにこんな表情を浮かべちゃって・・・自分一人だけ、幸せになろうなんて甘いわね。せいぜい絶望すると良いわ。」
二人は写真を見る。
そこに写っているのは、結城琥珀だった。
****************
これで三章も終わりです。
きな臭い閑話でしたが・・・そこまでシリアスにするつもりもありません。
ちょっと次章の閑話が血なまぐさい事になるかもですが・・・
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