目指せありふれた穏やかで幸せな日常！〜非日常系の女子達を添えて〜ねぇ、なんでスペシャルしか来てくれないの？俺はノーマルで良いんです！！

第71話 私の･･･私達の想いを乗せて、ただぶつけるだけ！！！

「まずは真奈ちゃんに力を流し込むんだ！それぞれ発揮する力は違えど、ここは精神世界の筈。力を譲渡しようと思えばそれは可能だ！」

　ふんわりした表情からキリッとした表情に戻した舞さんがそう叫ぶ。

「真奈。頼むで！」

「真奈っち！行くよ〜！」

「力の譲渡･･･テレパスを使って与えようと思えば良いのかしら？」

「真奈、しっかりと気を強く持て。おそらく想像を絶する負担が掛かるはずだ。」

「真奈ちゃん。どうか道を切り開いて欲しい。君にしかできない！」

「はいっ！！･･･くっ！？」

　私が愛剣ブリュンヒルドに力を注ぎ込みながら精神統一していると、みんなの声と共に一斉に力を注がれるのがわかった。

　凄い力！

　これ、コントロールできるかしら！？

　ただでさえ、舞さんの作った零具のコントロールに意識を持っていかれそうなのに！！

　額から汗が流れるのが分かる。

　ブリュンヒルドを持つ手が震えてくる。

　重い。

　ただただ重い。

　これが、みんなの零士への気持ち。

　その重み！

　ただ、力そのものに悪いものは感じない。

　それどころか、零士への狂おしい程の愛情が流れ込んでくる。

　零士を想って力を振り絞っているんでしょうね。

　だからそれが良く分かる。

　でも、

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ！くぅぅぅぅっ！！」

　耐える。

　耐える。

　ただ、耐える！

　私がこれを投げ出してはいけない！！

　苦しいからって、これを放りだしてはいけない！！

　だって、これは罰だから！

　さっき舞さんから聞いた。

　零士のこの【呪い】の引き金は強いショックを受け、精神の防壁が緩んだから起きたって。

　そしてさっき舞さんが教えてくれた零士の思考。

　私の『だいっきらい』って言葉でショックを受けたんだって！！

　例え本心からの言葉じゃないからって関係ない！！

　そもそも、嘘を伝えた私がいけないんだ！！

　美奈の事を考えたら、黙って離れる事だってできた筈なんだ！！

　未練がましく声をかけたから！！

　零士に拒絶されれば、未練も消し飛ぶと思ったから！！

　そんな風にズルい事をしたから！！

　今、零士は苦しんでいるんだ！！

　だったら！

「私が助けなきゃ駄目でしょう！！零士を愛しているのは私だっておんなじなんだから！！」

　力を無理やり抑えるんじゃない！

　みんなのチカラを･･･想いを押さえつけてはダメ！！

　私が零士を愛しているように、みんなだって零士を愛している！

　だったら押さえつけるんじゃなくて！

「同じ方向を向ければ良いってだけでしょうがっ！！」

　攻撃を受け流すのと同じ！

　そしてそこに自分の力を･･･乗せればいいだけ！！

「･･･凄い。」

「なんて女や･･･」

「お姉ちゃん･･･」

「見事。」

「凄まじい精神力だ。流石は天才と評されるだけの事はある。」

　呟きが聞こえるが、無視！

　意識を少しでも他に向けたら持ってかれる！！！

　今は！　

　今はこの力を！！

「全部ぶつけるだけ！！行くわよ零士！！！せやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」

　余計な小細工はできない！

　そんな余裕は無い！！

　ただ振り下ろすだけ！！

　私の･･･私達の想いを乗せて、ただぶつけるだけ！！！

　ギィィィィィィィィィィィッッッ！！！！！！！！！！！！！！

　凄まじい轟音と明滅する光！！！

「ァァァァァァァァァァァッァァァッ！！！！」

　ガガガガガガガガガガガッ！！！

　壁との衝突で剣がぶれそうになるのを無理やり押さえつける。

　気を抜けばこちらが弾け飛びそうになる。

　衝撃で手が震え、剣を取り落としそうになる。

「アアアアアアアアアアアアアッ！！！！」

　だけど落とさない！

　落とすもんか！！

　みんなから感じる力に、不安な心が入る。

　だから！

「負けるかぁぁぁぁぁぁぁ！！！！零士を失ってたまるもんですかっ！！！」

　その叫びと共に、両腕から血しぶきが舞う！！

　痛い！

　腕の中の神経が、霊力を流す回路が損傷しているのが分かる！！

　だから何！？

　こんな事くらいでアイツを諦められるか！！

「こんな！壁！くらい！！あたしがあいつと離れていた間の時間に比べれば！！！」

　あの寂しさを！

　あの悲しさを！！

　大好きなアイツに会えなくて泣いて過ごしていた頃に比べれば！！

「どうって事ないのよっっっっっっっ！！！」

　すぐそこにいるのよ！？

　手を伸ばせばすぐそこに！！

　こんな壁くらい！！！

　ふと、みんなから感じる力から不安が無くなっているのが分かった。

　そうよ。

　みんなだってそう！

　零士を好きなんだ！！！

　愛しているんだ！！！！

　乙女を舐めるな！！

　私たちはそんなに弱くない！！！

　いや、恋する、愛する男を守るためなら！！！！

「女は最強なのよっっっっっっっっっ！！！！」

　ピシッ･･･

　ピシピシピシッ･･･

　ビキィッ！！！！！！！！！！！！！！！！！！！

「い・い・か・げ・ん！！消えなさい！！私達の間に入ってくんなっ！！！！！！」

　ズバァァァァァァァァァッッッッ！！！！！！！！！

　斬れた！！！！

「むぉ！？なんじゃと！？馬鹿な！？」

　切り開いた壁の向こう。

　奥に居る禍々しい気配から叫び声が聞こえ、一斉に妖魔達がこっちを見るのが分かる。

　その中には、視線が合わない零士の姿も。

　だけど、

「はぁ･･･はぁ･･･零士！しっかりとしなさいよ！！さっさと帰るわよ！！！トチ狂ってるってんなら目を覚ましてやるから歯をしばりなさい！！」

　私の言葉に、無表情の零士が動きを止めている。

「良くわからんが隙だらけだ！！」

　そこに魔王とか言われていたのが零士に迫り･･･

　血しぶきが舞った。