第44話 私にはよくわかんない side美奈
「ごめんなさい。何度伝えて頂いても、私の答えは変わりません。」
私は、今目の前で私に頭を下げている先輩にそう伝える。
私には、それしかできない。
「・・・俺は諦めないよ。だって一目惚れだったんだ。君は俺の理想なんだ。だからまた告白させて貰うよ。」
「・・・」
真剣な表情でそう言って去っていく先輩を無言で見つめる。
この先輩から告白されるのはこれで3度目だ。
この先輩はサッカー部のキャプテンをしているそうで、クラスの子から聞く所によると、本当に見た目も性格も良くモテる人らしい。
私は、自分がそんな先輩に告白されているなんて事を他の人に話すつもりは無かったのだけれど、この人は二回目の時に私のクラスにまで来て大勢の前で告白したので、今こういう状態にある事は学校中に知れ渡っている。
『なんで付き合わないの!?だってあんなに格好いいしすっごく優しいらしいよ!?もったいないよ!!』
クラスの子たちはみんなそう言う。
同じように、男の子達だって、
『・・・あの先輩じゃ勝ち目がねぇじゃんか・・・諦めるか・・・』
『だよなぁ・・・しっかし、それでも四之宮を落とせないなんて・・・』
そんな風に言っているのが聞こえてくる。
私にはよくわかんない。
みんなはもったいないとかそういう事で付き合ったりしてるの?
恋愛って勝ち目が無かったら気持ちを持っていてはいけないの?
なんでそんな風に思えるの?
だって、私はそうじゃない。
私の気持ちはそんな風にあきらめられない。
私の脳裏に笑顔が浮かぶ。
『なぁ、大丈夫か?怖いかもしれないし、おそらくきつい事になりそうだけど、このままじゃ事態は好転しない。一緒に頑張らないか?なぁに、大丈夫だ!見た所、年下っぽいし、何かあったら俺が身体を張って守るから!な?』
そう言って、安心させるような笑顔で私に手を差し出してくれた零士さん。
トラップから私を守るために身体をかばってくれた零士さん。
お礼を言った私に、私が頑張ったんだと言ってくれた零士さん。
うん、やっぱり私は零士さんが好きなんだ。
だから、余計にわからない。
もちろん、私は零士さんの顔も好きなんだけど、なんで格好いいってだけで付き合ったりするんだろう?
恋愛ってそういうものなの?
好きな人と好きな人が付き合うのが恋愛なんじゃないの?
ここ最近、そんな事ばかり考える。
原因は分かっている。
結城先輩が零士さんのところで同棲し始めたからだ。
あれ以来結城先輩は変わった。
今までのようにどこか一線引いている感じでは無く、本当に零士さんに寄り添っているように感じるんだ。
何かあったんだろう。
多分、先輩が無断で欠席した時の事だと思う。
あの時、結城先輩は悪い人達から隙を見て逃げ出したって言ってたけど、おそらく零士さんがなんとかしたんだ。
あの人はそういう事をしれっとする人なのだ。
それがどういう事を生み出すのかわからずに、ただそうするのだ。
本当に
だっていっっっつもそうだったんだもん!
零士さんは口ではなんだかんだ面倒だとかどうしようも無いとか言いながら、どれだけ自分が傷つこうが苦労しようがなんでも無いような顔をしてこっそりと助けるのだ。
私達に黙って。
それで好きにならない訳がない!
すぐそばに、とても綺麗な顔立ちをした見た目も実力も性格も良しな完璧勇者のヴェルゼさんがいるのに、助けられた女性はみんなみ〜んな零士さんに好意を持つんだもん!!
まぁ、零士さんは、
『良いか四之宮?あれは俺をダシにそこにいる超絶イケメンクソ野郎をゲットしようという高度な技術だ。だから騙されちゃいけねぇ。あれに喜んだって何も俺にメリットはねぇんだ!!だからあんな風になっちゃだめだぞ?悪女になっちまうからな?お兄ちゃんとの約束だぞ?』
『誰がクソ野郎だクソレイジ!!』
『あ〜ん!?やんのかクソイケメン!!その顔ボコってゲラゲラ笑ってやんぞゴラァ!!!』
『やってみろ!!』
『やってやんよ!!』
そんな風に言ってまともに取り合わなかったけど。
というか、私は妹じゃないんですけど?
一人の女の子なんですけど?
だからいつも私は呆れた顔でそんな風に掴み合いをしている零士さん達を見ていた。
聖女であるミルさんと一緒に。
『まったく・・・レイジも罪作りな男ね・・・ホント悪い男だわ。・・・はぁ、止めなきゃね・・・こらっ!!ヴェル!レイジ!!いい加減にしなさい!!』
『『だってコイツが!!』』
『だってじゃない!!子供かっ!!!』
『『ひぇっ!?』』
これもよくある光景。
ミルさんは厳しいところは厳しかったなぁ。
そういえば、ミルさんは元気にしているかな?
ヴェルゼさんとは上手く行ったのかな?
帰ったら結婚するって言ってたけど・・・
まあ、あの二人なら大丈夫かな。
ミルさんは厳しいところもあったけれど、普段は聖女らしくいつもニコニコした美人なお姉さんだったけど、ヴェルゼさんにだけはいつもきつく接していた・・・ように見せかけて、本当はいつも心配していたし、ヴェルゼさんもミルさんをいつも【なんでもできる可愛げ無い女】なんて言ってるクセに、ミルさんが傷を負うと誰よりも怒ったり心配したりしていたんだもん。
お似合いの二人だったから。
ミルさん。
今、私は色々考える事が多くて頭がパンクしそうです。
また、あなたに相談したいなぁ・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます