閑話 深奥
俺はXXXX商事の社員だ。
もっともそれは表の顔。
裏の顔はXXXX商事を隠れ蓑にした能力者部隊の一員だ。
この組織に名前は無い。
目的は単純だ。
『XXXX商事の為に尽くす』
というものがこの組織が出来た当初の目的、ではあったが、現在は違う。
「さて、そろそろ会議が始まるな。あの女を捕らえた事を伝え、ヤツの能力を使って大手を潰す意向を伝える。いや、脅迫し、この会社をこの国の裏と表のトップとする。」
「そしてアタシ達はも〜っと甘い汁を吸う☆」
「そ〜いうこった!!」
この眼の前にいる俺たちのボスが組織を手中に収めてから変わったんだ。
この男は元々この組織の鉄砲玉だった。
ガキのころからこの組織に飼われ、その能力を使った戦闘技術を叩き込まれた者、それがこの男だ。
敵対する会社の重要なポストにいる者を暗殺、脅迫するのが役割だった。
No.2である女も、この男と同様で、その能力で対象を籠絡し、操り人形にする仕事だった。
こいつらは俺よりも若い。
確か、今の年齢は25歳前後だった筈だ。
こいつらが組織の全権を握ったのは10年位前。
あの頃、現在捕らえている女とその母親が能力者だという情報を得て、組織に引き入れる作戦行動中だった。
その時、この男が、
『この女は絶対に引き入れるべきだ。何があっても良いように、能力者を何人か配置したほうが良い。なんなら自分が行く。』
と強く押したにも関わらず、当時の組織のトップは、ガキにも関わらず手柄を上げ続けるこの男を疎んでおり、聞く耳を持たず、それどころか、別のところに出張任務を言い渡した。
この母子の重要性は、当時の幹部も良く理解してはいたからだ。
マルチの能力者。
それも、テレパスや念動力なども使いこなす。
使い道は山程ある。
しかし当時のトップの嫉妬の結果、作戦に従事していた手駒をすべて失い、それどころか母親は死に、娘は行方しれずとなった。
当時のトップは当時の会社の会長から叱責され、降格を申し渡されそうになった。
これに焦った当時のトップは保身の為、あらぬ事かその責任をこの男にすべて押し付けようとした。
その為、胸糞が悪くなるような方法をとったのだ。
そして、それが致命傷となった。
任務から帰ったこの男に、
『貴様のせいで損失が出た。どこへなりとも失せろ。ああ、貴様の同期の女は、その責任を取って会長と社長の相手をさせた。まだガキだが満足して貰えたようだ。貴様を殺さないのもそのおかげだと思い慈悲に感謝するのだな。まぁ、すべて貴様の責任だが。』
そう言い渡した。
俺は知らなかったが、No.2の女は、この男をかばう為にその指示に従い、まだガキにも関わらず会長と社長に抱かれていたらしかった。
それにこの男は激怒し、当時のトップをなぶり殺した。
その激情と強力な能力を目の当たりにし、俺を含め皆恐怖に震え、誰一人トップを助けなかった。
更には、そのままその首を持って会長宅に押し入り、引退を勧告。
そして、抵抗した会長を惨殺し、社長はそれを見て勧告を受け入れ、社長職を退き、こちらのコントロール下にある人選で幹部を占めさせた。
その一年後、社長を含め、前会長体制の幹部は人知れず全員消された。
勿論、この男の指示でだ。
その最後は知らないが、かなり悲惨な最後ではあったらしい。
この男は変わってしまった。
それまでは、会社の為にと教育されていた事もあり少なくとも忠誠心と仲間を思う気持ちに溢れていたが、それ以降は気に入らない者、敵対する者は全て殺すようになってしまった。
同じく、No.2も変わってしまった。
信用するのはこの男だけ。
それまでは仲間を思いやる性格だったにも関わらず、今では冷酷な女王となってしまったのだ。
今捕らえられている女もその被害者だ。
この二人は、文字通り使い潰すつもりなのだろう。
自分たちの為に。
本当はこんな組織はもう捨てたい。
だが、足抜けは死を意味するだけだ。
もう俺たちは逃げられない。
「よっしゃ!んじゃ、会議の様子をモニターで見るか。おっと、向こうの見張りに連絡して、あの女にもその様子を見せてやらねぇーとな。今からお前が抱かれる相手達だぞってよぉ?」
「あははは!それ最高!!」
「おい!連絡し・・・いや、俺が電話して変わらせるか。その方がいい声聞けそうだしなぁ?」
そう言ってスマホ取り出し、電話をかける・・・が、30秒ほどしてもう誰も出なかったようで、スマホを机に叩きつけた。
「・・・ッチ!何やってやがる?おい!てめぇも電話し」
その瞬間だった。
ドゴンッ!!!!!!!!!!!!!!!
凄まじい轟音とともに、部屋が揺れる。
「・・・んだぁ?」
「ちょっとなんなのよっ!!!!」
二人が扉を見る。
ドガァッ!!!!
グシャァッ!!!!!
バリンッ!!!!
ぎゃあああああああ!?
ぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!?
た、助けて、ぐぇ!?
怒号と悲鳴が聞こえる。
何かが起こってる!?
「おい!てめぇちょっと見てこい!!」
「はいっ!!」
すぐさま扉に近づき、
バガンッ!!!
凄まじい勢いで扉が吹っ飛んできて直撃した。
俺は朦朧とする意識の中、入ってきた男を見る。
まだガキだ。
「ここか?クソ野郎どもの親玉の
それが、意識を失う最後に聞こえた言葉だった。
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