第21話 デカい文鎮です

「で、誰なのあの先生は!!というかあれ、本当に先生なの!?」

「そうです!零士さんの事殺すって・・・どういう方なんですか!?」

「ちょ、落ち着けお前ら!」

「落ち着けるわけないでしょ!!!」

「落ち着けません!!!」


 ずるずる引きずられてやって来ました校舎裏。

 二人に詰め寄られて俺、涙目。


 いくらもうすぐ昼放課終わるし人居ないって言っても、もうちょっと声絞ろうよ二人共。


「あの人は、隠岐かすみ。一応、この学校の教師で、物理を担当している。」

「へぇ〜ってそうじゃない!そういう事が聞きたいんじゃないのよ!」

「そうです!あの言い方だと、あの先生は前に零士さんを、ん!?」


 俺は人差し指を四之宮の口に押し付け、言葉を止める。

 ”殺す”ってのは物騒な言葉だからな。


「もうちょっと声量を絞れ。誰が聞いてるかわかんねぇだろ?」

「・・・(こくん)」

「「「・・・」」」


 大人しくなった四之宮に顔を近づけてそう言うと、四之宮は大人しくなり・・・代わりに暁月と雪羅、夜夢から殺気が放たれ始める。

 なんで!?


「ん”ん”!と、とにかく、顧問の教師は決まった。多分、放課後にでも連絡があるだろうから場所もわかるだろ。後はどうすれば良いんだ?」

「・・・はぁ、ま、良いわ。その時にでもあの先生がどういう先生かは聞くわよ。後は生徒会に届け出をすればいいだけよ。今日しちゃいましょ。(にやっ)」


 ため息をついた後、今後の流れを説明する暁月。

 ん?なんで最後笑った・・・というか、わっるい笑顔だなこれ。

 なんかあんのか?


「じゃ、放課後に零士の教室でいいかしら?」

「いや、駄目だ。」

「なんでよ!?」


 だって、教室に暁月と四之宮、雪羅と夜夢が来るって事だろ?

 そんなの目立っちゃうでしょ?

 馬鹿なの?

 

 ぐぇっ!?


「・・・なんで殴った?」

「なんかイラッとしたから。」

「・・・」


 ・・・なんでわかったの?














 昼放課を終え、授業を過ごす。


 そして、今日の最後の授業も終わりかけの時だった。



 ビュッ!!


 

 一瞬の風切り音。


 パシッ


 頭に飛んできたそれを掴みすぐに懐に入れる。


 甘い甘い。

 それじゃ俺は殺れませんよ隠岐先生?


 俺はそんなにぬるくないからな。











 さて、最後の授業を終え、担任からの連絡事項を受ける。

 そして、


「起立、礼!」

「斬・・・くそ!」

「あいつマジはええな!?」


 くっくっく!

 甘いよ諸君!

 

 俺はすでに教室を出ている。

 俺を捕まえようったってそうはいかねぇぜとっつぁん!!

 あばよ〜〜〜〜!!


 ぐぇ!?


 いきなりのラリアット。

 

「廊下走ってるんじゃないわよ。危ないわね。」


 危ないのはいきなり走っている人にラリアットをかますあなたなのでは暁月さん?


「ほら、行くわよ?」

「らじゃ。」


 連行される俺氏。


 流石のクラスメイトも、暁月と一緒にいるところに押しかけるほどの度胸は無いようだ。

 けけけ。


 






 待ち合わせ場所はテニスコート裏だ。


 むさ苦しい野郎どもを見るより、テニスギャルたちを見る方が目に優しいからな。

 だが、残念な事にテニスコートは男子テニス部ばかりで目に優しくなかった。

 どうやら、本日は女テニは別の場所で筋トレのようだ。

 残念。


「で?場所は決まったの?先生から連絡あった?」

「ん?あったぞ?え〜っと・・・どれどれ?」

「ちょ、あんたちょっと待ちなさいよ!?なにそれ!?」

「そ、そうです!何を平然としているんですか!?」


 え?何が?

 あ、しまった。

 手紙に一緒にくくりつけてあったものまで一緒に出しちゃった。


「それって刃物?いや・・・なんか見たことあるような・・・」

「漫画とかで見たことある気がする・・・たしか・・・苦無、でしたっけ?」


 あっちゃ〜!

 やべぇな。

 何か言い訳考えないと・・・


「デカい文鎮です。」

「「んなわけあるかそんなわけないでしょ!!」」


 無理ですよね〜・・・


 っと!


 ゴンッ!!


「「!?」」


 いきなりの飛来物を察知して身構えようとした二人だが、それに先んじて指弾で衝撃波を飛ばして撃ち落とす。


「・・・隠岐先生?生徒を狙うのはルール違反ですよ?」

「・・・暁月は祓魔師。ルールには抵触しない。四之宮も今の反応で一般人では無いと判断した。知られたからには・・・処分する。」


 物陰から隠岐先生が現れる。


 白衣と長い髪をたなびかせ、目には殺気がある。


 だが、それは頂けない。


「隠岐先生・・・俺がそれを許すと思ってるんですか?」

「「!?」」

「ぐっ・・・」


 殺気で威圧する。

 そして、動けなくなった隠岐の傍らには、隠岐先生の首に手を添える雪羅と夜夢。

 突然の事に驚く暁月と四之宮。


「・・・殺せ。」

「くっ殺展開は好きですが、実際にやる趣味はね〜んですよ。まぁ、一度しっかりと話しましょ?せんせ〜にも悪いことはマジでね〜んすから。とにかく、まずは隠岐先生が許可を貰った空き部屋に行きましょうよ。それに、」


 隠岐先生は勘違いしてる。


「隠岐先生。あんたがその道で才能があるように、暁月も四之宮もそれぞれその分野で才能に溢れているんすよ。まともに戦えばおそらく相打ちっすよ?」

「・・・」


 真剣に隠岐先生を見る。

 先生は表情を変えなかったが、


「・・・はぁ、分かった。ここまで来たら逃げも隠れもしない。ただし、詳細は教えて貰う。暁月は知っているから良いとして、四之宮は教えて。私も詳しい事情を話す。」

「・・・分かりました。」

「はい。」


 うんうん。

 善き哉善き哉!

 みんな仲良く、だね!


「だが、斬来、お前は絶対私が殺す。」

「なんで俺だけ!?」

「当たり前でしょう主様。」

「そりゃそうだよねぇご主人様?」


 なんでぇ!?

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