第22話 あ、やってるわ

「まず、私の事から話す。私は隠岐かすみ。端的に言えば私は忍び、つまり忍者と呼ばれる者。」

「ニ、ニンジャ!?」

「忍者・・・え?忍者!?」


 隠岐先生のカミングアウトに暁月と四之宮は驚く。

 ま、そうだわな。

 

 漫画やアニメで散々見てるだろうけど、実際には某県のテーマパーク位でしか知らないだろうし。

 別にそこのスタッフが偽物だとは言わないが、実際には力を持った忍はそのほとんどが潜伏しているらしい。

 ま、中にはそれすら隠れ蓑にしている力を持ったのもいるかもしれないが。


「そう。忍びは、大昔に廃れた、と言われている、が、実際にはそうではない。一部の権力者のため、今でもその力を隠し、存在する。私もその一人。」

「で、でもその忍者がなんでこの学校に先生として・・・?」


 暁月の疑問ももっともだ。

 俺もそれは疑問に思っていたからな。

 俺の存在を認知した段階で、姿を消してもおかしくなかったってのに。


「・・・私は、忍びの生き方に疑問があった。何故命を賭してまで金や権力のために生きねばならないのか。これでも、私は里では一番の力を持った忍び・・・くノ一だった。だが、一度疑問に思ったら止まらず、私は里を抜けた。」


 へぇ〜。

 

「勿論、追っ手はかかった。だが、先に言った通り、私は誰よりも強かった。だから追っ手を全て始末し、各地を転々とし、名を変え戸籍を偽造し、10年ほど前にこの街まで来た。そして、高校、大学と過ごし、この学校に赴任した。そして、3年ほど過ごし・・・そこの化け物に出逢った。」


 おい、人を化け物呼ばわりするんじゃねっての。

 指ささないでくれます?


「一目見て分かった。あまりにも異質だ。だから私は陰ながら観察した。隠遁には自信があったから。だが・・・私の予測を越え、斬来は私を誘い出した。私は始末しようとした、が・・・一蹴された。これまで無敗だった私が足元にも届かなかった。」


 あ〜、まぁ、俺も驚いたぜ?

 忍法ってのかね?

 あんなの初めて見たからな。


 だが、その有りようは霊力によって生み出されるものによく似ていたからな。

 対応は難しくなかったんだ。 


「我々忍びは時に人外も相手にすることがある。だから祓魔師という存在は知っていた。だが、斬来は・・・そこの二人もだがレベルが違う。私は敗北した際、死を覚悟した。だが・・・」


 そこで隠岐先生は言葉に詰まる。


 あん時かぁ。

 ま、何度も言うけど、俺、くっ殺はフィクションだけで十分だからなぁ。


「・・・とにかく、私は、斬来の提案で不干渉の取り決めに乗った。まさか・・・その本人から破られるとは思いもしなかったが。私の調査では、斬来は約束を破る事を嫌う性格をしていると思っていたのに。」


 そりゃすまんこって。

 

「零士、あんた・・・」

「零士さん・・・」


 暁月と四之宮が何やら俺を見ている。

 

 良いんだよ別に!

 俺の自己満足でそうしただけなんだっての!!


 まぁ、隠岐先生には悪いと思っているが。


「まぁ、斬来の調査だけは継続していたから、九重と八田が妖魔と呼ばれる存在である事は知っているし、暁月がエクソシストである事も知っている。あと、生徒会長の結城が異能者である事も。忍術の中には、異能を元にしたものもある。特に不思議には思わない。もっとも、結城は私の事を知らないだろうけど。心を殺して読み取らせない事など簡単。だが、斬来は違う。そいつがやった事は圧倒的。ほぼ単独であの【大妖】すら屠ったそいつだけは。」


 おお、いつもぽつぽつとしか喋らない隠岐先生が長文を喋っている!!


「四之宮の事はわからない。身体に何か妙な流れを感じるが、私には判然としない。それはなに?」


 ああ、魔力か。

 ふむ。


「なぁ、四之宮。良いか?」


 ここまで来て仲間はずれもないだろう。

 一応、顧問になってくれる予定だしな。

 約束破ったのも悪いと思うし。


「はい。じゃあ、お話しますね?私は、いえ、私と零士さんは以前、異世界に召喚されて・・・」


 四之宮が異世界召喚の事を話す。

 流れで夜夢の事も。


 そこで初めて隠岐先生の目が驚きに見開かれた。

 まぁ、長い髪が邪魔して表情がよく見えないんだが。


「・・・なるほど。『神隠し』か。だから・・・いや、待て。だが、それは中学生の時のはず。斬来が【千年妖樹】を祓ったのはたしか小学生のとき・・・やはり化け物か・・・」


 おいおい!

 失礼にもほどがあんだろ!!


 俺がぷんすこしていると、隠岐先生は俺に視線を合わせた。


「・・・斬来。お前は桐谷とも縁があるな?」

「え?舞さん?うん、あるぞ。」

「・・・ふむ。」


 そう言って何かを考え込む。

 あ、そうか。

 三年前にこの学校に赴任したのなら、少しだけ被っているのか。


「分かった。自らの意思で顧問になる事を了承する。ただし、条件がある。」


 ほう?

 条件とな?


「斬来。私は唯一私に土をつけたお前を殺す。だから、お前への襲撃は了承しろ。」

「え?な、何言ってるのよ!?」

「だ、駄目ですそんなの。」

「うん、良いっすよ。」

「「はぁ!?」」


 隠岐先生の言葉に暁月と四之宮は反対したが、即答で了承した俺を頭のおかしいヤツを見るような目で見てきた。


「こ、九重さんや八田さんは良いんですか!?」

「そうよ!止めないと!!」


 慌てて雪羅と夜夢に話をふる二人。

 だが、二人は澄まし顔のままだ。


「別に良いのでは?主様が殺されるわけが無いし。」

「そうだよ〜?状態異常耐性MAXのスキルで毒は効かないし、単独でドラゴンすら肉弾戦で倒せる御主人様に勝てるわけないじゃん。」


 こいつら、ちっとも心配してねぇな?

 まぁ、事実そうなんだが。


「で、でも寝込みを襲うとか・・・」

「主様はそんな軟じゃない。今でもまったく平和ボケしてないんだから・・・ボソッ(ちょっとは気を抜けば良いのに・・・)」


 ん?

 今、何か雪羅がぼそっと・・・


「そうそう!それに、自宅なら夜夢ちゃんか雪羅っちがいつも一緒に寝てるからね〜?」


 あ!?こ、こら夜夢!!

 め!でしょ!?


「「「・・・(ピキッ#)」」」


 あ、あれ?

 なんで暁月も四之宮も・・・隠岐先生までなんかプレッシャーを放ってるんだけど!? 

 ていうか、夜夢はまた暴露しやがって!!


 いや、それどころじゃねぇ!

 空気を変えねぇと!!


「そ、それよりもさっさと届け出を出しに行こうぜ!?あんまり遅いと受理して貰えねぇだろうし!!」

「「「・・・」」」


 ・・・あ、あの〜?

 こっち睨むのやめて貰えません?


「はぁ、仕方がないわね・・・」

「書類はここにある。後は署名するだけ。」

「あ、ありがとうございます隠岐先生。」

「おいおい、なんだかんだでノリノリじゃねぇか隠岐せんせ?」

「うるさい。死ね。女の敵。」

「ひでぇ!?」


 うわ〜ん!

 なんで隠岐先生にまでそんな風に言われなくちゃいけねぇんだ!?

 俺、何かやったか!?


 そんな俺をじっと見ていた雪羅の言葉。


「以前、完封してますね。」


 あ、やってるわ。


「さて、行きましょうか・・・ふっふっふ。今から楽しみだわ。」

「そうだね。今度はこちらの番だよ!」


 暁月と四之宮が姉妹で悪い顔してる。


 一体、何をそんなに楽しみにしてるんだろうな?

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