第23話 おっそろしい人だぜまったく

「・・・も、もう一度言って貰えるかしら・・・?(ひくひく)」

「ですから〜?ここにいる面々で同好会を作るんで届け出をしたいんですけど〜?」


 目の前で、生徒会長席に座った結城先輩が頬をひくひくとさせながら説明している暁月を見ている。


 ここは、生徒会室。


 先輩、珍しい表情をしてんなぁ〜。

 そして、暁月?

 その勝ち誇った表情はなんなの?

 

 まぁ、こいつに勝ち気な表情は良く似合ってはいるんだが。


 ちなみに、他の生徒会のメンバーはそんな先輩の様子を不思議そうに見ている。

 いや、それだけじゃねぇか。


 ここにいるのは、各学年でも名のしれた美少女で通っている奴らばかりだ。

 俺たちを見て目を丸くしてもいるな。


 なにせ、これまで誰ともつるまなかった【氷姫】に、二年の【美少女転校生】、それに一年の【小悪魔】と【癒しの妹】だ。

 俺?俺に異名はありません。


 the普通、それが俺だぁ!!


 あ、ちなみに最近知ったんだが、【癒しの妹】ってのは四之宮の事らしいぞ?

 なんか、そんな事をクラスの男共が言ってた。


「そ、そうは言っても、顧問の先生は人数的にもういないのでは?」

「あ、それはここにいらっしゃいますよ?」

「え・・・?」


 先輩の言葉ににっこりと何故か凄みを感じる笑顔の四之宮が手を差し向けると、先輩はそこに視線を送り、


「えっと・・・たしか、物理の・・・」

「隠岐かすみ。この同好会の顧問をする事になった。」

「そ、そう、です、か・・・あ!?ば、場所は!?場所が無いんじゃ」

「ここ。」

「うっ!?」


 隠岐先生が届け出用紙を先輩に渡すと、先輩はそれに目を通し・・・


「・・・物置代わりの教室・・・こ、こんな場所が・・・」


 更に愕然としている。


 生徒会長である先輩すら把握していなかった教室。

 これには訳があった。


 どうも、この学校に隠岐先生が赴任した際に、自らの隠れ場所を作るため、意図的に忍術的な結界を作り出し、そこへ人払いやら隠形やらを使い、その場所を目につかないようにしていたらしい。


 これを聞いた時、驚いた。


 だって、隠岐先生だぜ?

 すぐに俺を殺す殺す言うんだぜ?


 なんだって、そんなとっておきの場所を譲ってくれるのかわからん。


 まあ、ここを同好会の場所として使わせて貰う代わりに、隠岐先生も避難場所として使わせて欲しいって事だったから、勿論了承したがな。


 しっかし、殺したいほど憎い俺がいるってのに、そんな大盤振る舞いするってのもおかしな話ではあるんだがな〜。


「で?良いかしら?結城会長?」

「くっ・・・」


 ふふん!笑顔で先輩に告げる暁月に、歯ぎしりしている先輩。


 いったい、俺たちは何を見せられているのか・・・

 というか、この喧嘩腰は何?

 なんなの?


 こいつらは争わないと生きていけない、戦闘種族か何かなの?

 

「あ、あの、会長?特に問題は無いと思いますが?」

「そうですよね・・・なんでそんなに気にされているのでしょうか?」

「・・・べ、別に気にしていないです。していませんともええ!」

「「は、はい・・・」」


 おいおい、先輩の視線の険しさに生徒会のメンバーまで顔がひくついてるじゃねぇか。

 いったい、何がそんなに気に入らねぇのかねぇ? 


「・・・やってくれたわね。」

「なんのことです〜?まぁ?ちょっと抜け駆けしようとした人がいたみたいだから?頑張って対抗しようとした、なんて事があるかもですけど〜?」

「(ぎりぎりぎりっ)」


 うわーお!

 先輩が初めて見る表情してる!?

 いったいどうなってんだ!?


「・・・ふぅ、分かったわ。認めましょう。」


 先輩は、そう言って表情を緩ませた。

 やれやれ、なんとかなりそうだな。


「・・・ところで、同好会のメンバーはここにある名前の通りで良いのね?」

「ええ、そうですよ!」

「それに、同好会の会長は斬来くん、で良いのね?」

「はい。」


 ・・・それなぁ。

 本当はそんな面倒な事やりたくなかったんだが、隠岐先生が譲らなかったんだよなぁ。


 おそらく、面倒事を俺にする事でささやかな復讐をするつもりなんだ!

 そうに違いねぇ!!


「これで決定、でいいのかしら?変更はきかないわよ?考え直した方がいいんじゃないかしら?」

「いーえ結構です。それでお願いします。」

「それ、最終回答で良い?」

「勿論。」

 

 勝ち誇った暁月の顔。

 何をそんなにマウントとってるんだがねぇ?


「そう、ではオカルト同好会として受理します。顧問が隠岐先生、同好会長が斬来くん、あと、他メンバーが5人ですね。」

「ええ、そう・・・え?」


 ん?

 5人?

 一人多くね?


「ど、どういう事ですか!?」


 暁月もそれに気が付き、先輩に詰め寄る。

 しかし、先輩は澄まし顔だ。


「どうもこうも・・・ここにある名前がメンバーなのでしょう?」


 そして、そう言って紙を見せる。

 するとそこには・・・


 ”同好会結成届け”


 同好会名『オカルト同好会』


 活動目的『各地の伝承などを元に、オカルトと呼ばれる物・現象・生き物の精査をし、歴史的背景、また、伝承の調査をする事』


 同好会長 二年 斬来零士

 同好会員 三年 九重雪羅

      二年 暁月真奈

      一年 四之宮美奈

      一年 八田夜夢

      

      三年 結城琥珀


「はぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!?」

「え!?」

「・・・っち。」

「ありゃりゃ〜。」

「むぅ・・・やるな結城。」


 あれま。

 先輩の名前がいつの間にか書いてあるし。

 

 これ、多分俺たちとやりとりしている間に、念動力かなんかでこっそり書き足したな?


 生徒会のメンバーもあまりの展開に唖然としていやがる。

      

「そ、それはおかしいわ!ズルよ!!」

「変な事言うわね?ここに書いてあるじゃないの。」

「〜〜〜〜っ!だ、だったら出しなおすわ!」

「いえ、もう受理してるから、重複は駄目よ?それに最終回答かどうか確認したし。」

「くぅ〜〜っ!!」


 歯噛みする暁月。

 してやられた顔をしている四之宮。

 イラッと来ているらしい雪羅。

 関心している夜夢と隠岐先生。


 そして、しれっとしている先輩。


「か、会長!?か、かけもちされるのですか!?何も聞いていませんけど!?」

「ええ、正当な権利だもの。それに私自身の事を相談する必要ある?」

「ですが_____」


 生徒会のメンバーが慌てて考え直させようとしているが無理だな。

 これは先輩の作戦勝ちだ。


 多分、歯噛みしていたのとかも演技だな。

 

 おっそろしい人だぜまったく。


 こうして、無事・・・かどうかわからんが、俺たちの同好会は認められる事になったのだった。



*******************

これで二章も閑話を挟んで終わりです。

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