第46話 目立つものね・・・そのとっても大きな特徴が! side美奈

「良かった!無事に来られたわ!!」

「うぷっ!?ミ、ミルさん!?ど、どうやって此方こちらに!?」


 ミルさんに駆け寄った私をミルさんはぎゅっ〜〜っと抱きしめた。

 あったかい・・


「実は・・・」

「あ、あちらにベンチがあるので座って話しましょう。それと・・・」


 私は、認識阻害の魔法を使用する。

 

 なにせ、ミルさんはエルフだ。

 その特徴的な長い耳は目立つ。

 

 ただでさえミルさんはとっても美人さんなのに・・・


「あら?認識阻害?・・・ああ、そうね。目立つものね・・・そのとっても大きな特徴が!」

「あうっ!?ちょ、ミルさん!?どこをつかんでいるんですかっ!?」

「む〜っ!相も変わらずの大きさだこと・・・これ、前よりも大きくなってるわね?おのれ・・・」

「や、やめてくださいっ!!もうっ!!」


 ミルさんはその・・・ちょっと私の特徴的な場所が控えめなところもあってか、私のここをいつも恨めしそうに触るんだ。

 できれば止めて欲しいんだけどなぁ・・・


「よいしょっと!ってそっか!もしかしてレイジ見つけて大きくして貰ったのね!?そうでしょっ!?」

「う・・・」


 ベンチに座りながらそう言うミルさん・・・それは、今の私に辛い言葉。

 

「・・・何かあったのね?」

「・・・はい・・・」


 ミルさんはすぐに私の様子に気が付き、優しく頭を撫でてくれた。

 ・・・懐かしい、そう感じる。


「なら、先に私の事を話すわ。ミナのお話はそのあとにじっくりと聞きましょうか。」

「・・・お願いします。」


 何が遭ったか知らないけど、こうしてミルさんに相談できる機会は貴重だね。

 でも、まずはミルさんの事を聞こう。

 気になっている事でもあるし。


「あのね?実は・・・家出して来ちゃったのよ。」

「はぇ?」


 今、何か聞き間違えたかな?


「だから、家出!だってあの馬鹿ったら・・・!!」


 予想外の理由に唖然とする私に、怒涛のように話続けるミルさん。

 なんというか、相当鬱憤が溜まってたみたい。


 簡単に説明すると、どうもヴェルゼさんが浮気・・・とはちょっと違うけれど、ヴェルゼさんにお妾さんを作ろうという話があるらしい。

 ヴェルゼさんはなんでも、元の世界ではそれなりに地位のある貴族の子息らしい。

 で、ミルさんも貴族で、ヴェルゼさんの幼なじみで婚約者だったそうなの。


 ところが、異世界に召喚され、帰って来たら私達と同じようにヴェルゼさんは大きく力を伸ばしていた。

 それで、向こうで魔獣討伐や盗賊退治なんかで大きな戦果を得て、名前が知れ渡り、褒美に向こうの王様から、降嫁したお姫様を与えようとしたんだって。


 ミルさんは向こうに帰ってからすぐにヴェルゼさんと結婚したから第一夫人になるのだけど、お姫様が奥さんになる事もあり、自分が第二夫人になろうとしたそうなの。

 でも、そこでヴェルゼさんが猛反対した。


 最初はそこまで激しくなかったらしいんだけど、


『君以外の者を第一夫人にできるか!家なんか関係ない!!』


 というヴェルゼさんの言葉にカッとなって口論になったらしい。


 私にしたら、ヴェルゼさん凄いと思うんだけど、ミルさんにしたら貴族としての責務を果たしなさいという事らしい。

 もちろん、気持ちは嬉しいけれど、古くから連綿と続く家を、貴族としてどうなのか、と。


 ミルさんの話では、お姫様は本当に良い人で、同じように夫を支える間柄になる分には何も問題は無いらしいけど、やはり貴族としての最上位である王族の血を引くそのお姫様をないがしろにはできないみたい。


「別に愛が覚めるわけでは無いのに。どれだけの人に迷惑をかけると思っているのよ・・・」


 そう呟くミルさん。

 そこには複雑な感情が見える。


 口論は平行線。


 そこでミルさんは思ったらしい。


『そうだ!家出しよう!!』と。


 いえ、あなたは人妻ですよね?

 何をやってるの?


 で、


「着の身着のまま飛び出し、追手を巻いてあても無く彷徨っていたら、どこからともなく声が聞こえ来てね?」


 そこだ。

 それが聞きたかったんだ。


『聖女ミル久しぶりだね。』

「え・・・神様?」


 なんと、そこで私達を召喚した神様から声がかかったらしい。

 しかも、


『家出してるんでしょ?だったら家出先に良いところがあるよ?』

 

 面食らっているミルさんにそう告げる神様。

 その行き先は、


『大魔法使いミナと霊拳士レイジがいる世界。どう?』

「行きます!!」

『オッケ〜!じゃ、送りま〜す!!』


 まさかの私達の世界。

 で、2つ返事で飛びついて、すぐに周囲が光って、気がついたらこの公園で私が居た、って事らしい。


 いやいや、どっちも軽すぎじゃない?

 家出で世界越えるって・・・相変わらず神様は軽いし、ミルさんも大胆な聖女だよね。

 今頃、ヴェルゼさん焦ってるだろうなぁ・・・


「というわけで、少しだけだけど、一緒にいていいかしら?」

「あ・・・でも・・・」


 私の家では少し厳しい。

 お母さんは何も知らないのに、いきなり大人の・・・しかもエルフの女性を連れ帰るのは・・・

 唯一良さそうな零士さんの家は・・・零士さんとは今・・・


「・・・ふむ。その前にまずはミナのお話を聞きましょうか。」


 私が何かを抱えているのに気がついているミナさんがそう言った。


「はい、実は・・・」


 そこで私は、それから戻って来てからの事、今の零士さんを取り巻く状況、そして、今日あった事を話た。

 

 最後まで話し切ると、ミルさんは私を見た。

 そして、


「それはミナ。あなたが悪いわ。」


 と告げた。

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