第8話 中学三年生 二度目の異世界召喚

 ん?

 そう。

 一回目の時は。


 なんともムカつく事に二回目があったんだよ。

 あ?四之宮なんだよ?


 私喚ばれて無いって?

 ああ、俺だけだった。

 ムカつくだろ?


 二回目の時は、召喚じゃなかったんだ。

 あの駄女神・・・あいつが直接俺を喚びやがったんだ。


 時期?

 ああ、中学三年の夏だな。


 舞さんに勉強を見て貰って、なんとか近場の今通っている高校に進学する目処が立ちそうだっていうクソ忙しい時に、あのアホが喚びやがったんだ。


 勿論、ブチギレたね!!

 あいつが泣くまで罵倒してやったわ!!


 だけど、なんとかして欲しいって泣きながら懇願するもんだから、仕方がなく手伝う事にしたんだ。


 次の相手は魔王じゃなくてドラゴンだった。

 それも、冥王竜とか言うクソ強いやつだった。


 しかも、今回は俺一人。

 

 魔王より強いとかいうでけぇトカゲを、俺一人でどうすりゃ良いのって感じだった。


 まぁ、あのアホに色々スキル・・・なんつーか特殊技能?を付与させて、渋々旅したんだわ。

 キツかったぜ?

 なにせ、あの最強勇者も聖女もいない、殲滅戦最強の大魔法使い四之宮もいねぇ、マジで大変だったわ。


 その旅の途中で、夜夢はどうしてっかなって思って施設に顔を出してみたら、そこそこ大きくなっててな?

 そしたら、


「使い魔にして!夜夢、今度は絶対レージについてくもん!!」って離れなくてなぁ・・・ぐっ!?だから足踏むなって夜夢!!


 だから、夜夢とふたり旅してたんだよ・・・まぁ、その旅で俺の霊力を吸って育った夜夢は、結果としてサキュバスクイーンにまで進化して、こんな風になっちまったんだが・・・


 ん?

 なんでそんなに進化できたのかって?


 ああ、霊力ってのはさっきも話した通り、ライフエナジーとしては上等な部類なわけ。

 で、その中でも俺のはかなり上質なんだよ。

 だからそれをたらふく食った夜夢は、普通のサキュバスなんかは目じゃない位強くなったってわけだ。


「うん♡ご主人様のアレ、すっごく美味しいんだ〜♡あんなの味わったら、他のなんていらないもん♡」


 おい、夜夢?

 言い方!!


 あ、あれ?

 なんでみんな近寄って来るんだ?


 いや、だから別に俺は・・・


「ねぇ零ちゃん?なんで目を逸らすのかな〜?お姉ちゃんの目をちゃんと見て答えて・・・夜夢ちゃんとエッチした?」

「し、してねぇし?」

「「「「ダウト」」」」


 あぎゃ!?

 なんで殴るんだよ!?

 あ、おいやめろ暁月!霊剣を取り出すな!それは死ぬ!!

 ま、待て四之宮!詠唱をやめろ!!家が壊れる!!

 ぐえっ!?先輩も俺の首を念動力で締めようとするな!!息が!?

 げっ!?ごっ!?ま、舞さん?鳩尾を的確に殴り続けるのやめて!?地味に痛い!!


 おい!夜夢!ニヤニヤしてんじゃねぇ!!

 お前のせいだろうがっ!!


 仕方がないんだよ!!

 気がついたら、こいつ中々の身体に育ってて、旅の途中で俺が間違えて酒飲んじまって酔って宿で休んでる時に、「水飲む?」つーから飲ませて貰ったら媚薬だったんだ!!


 んで、ムラムラしてる時に布団の中に潜り込んできて、色々押し付けながらアレ握りやがって、そのまま口塞がれて・・・


「美味しく頂きました♡」

「「「「ギルティ」」」」


 黙れ夜夢!!頼むから煽らないで!!

 俺、殺されちゃう!!










 ・・・あたた。

 ひでぇなおい・・・


 俺、ボコボコじゃねぇか・・・


 あ?続き話せって?


 ・・・分かったよ。


 まぁ、結果として俺からの霊力供給の効率が上がったのもあってか、夜夢が進化したのが正直助かった。

 じゃなかったら、多分俺は死んでいたからな。


 冥王竜ってのは、それくらい強かったんだよ。


 どうにかこうにかあのデカいトカゲを倒して、また駄女神に会ったんだ。


 んで、報酬をくれるっていうから、あいつに俺は言ったんだ。


「二度と俺を喚ぶんじゃねぇ!!!」

「え〜?なんでそんな事言うのよ〜!!!いいじゃんか〜!!」

「良くねぇ!!いいな!?二度と喚ぶんじゃねぇぞ!!」

「からの〜?」

「フリじゃねぇ!この駄女神が!!」

「ひど〜い!!プンプン!」

「お前のほうが酷いわ!!」


 とまぁ、こんな感じで、俺はまた元の時間軸のこの世界に帰ってきたわけだ。

 

 ・・・ん?

 夜夢も連れて来たのかって?


 いや、連れて来なかった。


 例によって半べそかいてたけど・・・だから足踏むなって!!

 サキュバスってのは、精気を吸う事で成長するんだ。


 夜夢は、サキュバスクイーンにまでなったからな。

 あの世界じゃ、魔王よりも強くなったんだ。


 人間で言えば、もう完全に大人だ。


 誰にも害されない力を手に入れた。

 俺がいなくても大丈夫って確約を得たのも同然だからな。


 駄女神からの報酬に、『夜夢を気にしとけ』ってのを追加して、俺一人で帰って来たんだ。

 なにかあったら、駄女神が守れってな。


 ・・・まぁ、最終的にはいたずら大好きなこいつが手に余って、こいつをそそのかして俺の世界に送りこんで来やがったんだが。

 あいつマジで・・・次会ったらグーだな。


 まぁ、もう会うことはねぇ筈なんだが。


 ただ、夜夢が来たのはもう少し先の話だな。


 結局、俺は高校受験に合格して、舞さんの大学合格に合わせて舞さんちの居候も卒業する事にしたんだ。

 貯金もあるし、一人でもやっていけるし、何より、これ以上迷惑かけたくなかったし。

 おふくろさんや舞さんがそんな風に思っていないのは知ってはいるけど、だからっていつまでも甘えるのは違うと思うし、俺がそのまま居たらブラコンの舞さんがいつまでも彼氏を作らない・・・あだっ!?

 な、何するんだよ舞さん!!

 なんで殴るの!?


 だ、だってそうじゃん!

 舞さん、『ご飯食べさせてあげるね〜』とか言ってあ〜んしてくるし、『背中流してあげる〜』とか言って風呂に突入して来るし、『抱きまくらになって〜』とか言って布団に潜り込んで来るし!!


 だから俺も家を出たんだよ!

 俺だって男なんだ!

 性欲だってあるし!!

 間違いがあったらまずいだろ!?


 おふくろさんも少し困ってたぞ!?


 だから説得して一人暮らしを認めて貰ったんだっての!!

 全部舞さんのため!!


 ぎゃっ!?

 ふ、フルスイングはやめて!! 

 痛いって!!


 え?結局一人暮らししてないじゃんって?


 いや、それは・・・


 や、俺もびっくりしたんだぜ?


 卒業式を終えて、貯蓄から家を買って・・・ああ、この家?

 まぁまぁデカいだろ?


 曰く付きの家を安く買って、自分で除霊したんだ。

 だから格安。


 で、高校の準備をしてた時に、まず最初に雪羅が来たんだ。


「雪女の女王・・・かか様に勝って許可は貰って来たわ。あなたに仕えるのなら許可を出すって。だから一緒に暮らすわね?返事は、『はい』か『イエス』で。良いわね?」

「はい?」


 いきなり雪羅がこの家に来たときはかなり驚いたな。

 どうやってここを知ったのかどうしても教えねぇんだが・・・それはまあ良い。

 

 ああ、雪女の女王ってのは雪羅の母親の事だな。


 昔一緒に住んでた時に、当時の雪女の女王・・・雪羅の母親の姉が酷い・・・というか、典型的な雪女でな?

 人間なんてのは餌としか見て無くて、それを拒否した妹を追い出したんだ。


 で、それを保護した・・・ってのが昔の俺だったんだが、人間に保護されるなんて雪女の恥だって攻めて来たから俺がぶっ飛ばしたんだ。

 まぁ、雪女もサキュバスみたいに人間の精を糧として強さを増す妖怪だから、俺と過ごす事で、俺から漏れ出る霊気を吸収して力が増してた事もあってか、最終的には姉を滅ぼして雪女の女王になって、里に帰っていったんだけどな。


 雪羅は当時帰らないってごねてたけど・・・ぐえ!?雪羅!氷をぶつけるな!!

 痛いっての!

 頭直撃したじゃねーか!

 俺じゃなきゃ死んでたぞ!?


 ったく・・・雪羅もまだ子供だったからな。

 里で暮らした方が良いだろうって事になって、里に戻ったんだが、


「いずれかか様の許可を貰って、また一緒に暮らすから。良いわね!」

「分かった。そんときゃまた、な?」


 って言ってたのを思い出してな?

 で、住み込みのメイドとして雇ったんだよ。


 まぁ、俺は別に身の回りの世話をしなくてもって思ったんだが、母親に俺に仕えるよう言われてるし、それが条件だからって聞かなくてな?

 仕方がなく、だな。


 で、雪羅は俺と暮らしていた時に人間社会の事をしっかりと学び、それ以降も勉強していたらしくて、どこからか戸籍も入手し、編入試験も合格して、うちの学校に転校して来たってわけだ。

 ただ、俺よりも一つ上だったから、俺が入学した時には一つ上の学年だったんだけどな。


 はぁ・・・俺、説明する度にボコボコにされてるんだけど、まだ話さなきゃダメか?


 あ、はい、先輩との出会いね。


 仕方がねぇな・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る