第48話 何を間違えたのか・・・
俺は今、自宅でぼ〜っとしている。
雪羅達は家事をしてくれており、俺も手伝おうとしたのだが、
「引っ込んどれ。考えなあかん事、あるんやろ?」
「まぁ、レージが悪いってわけじゃないかもだけど、あの子がああしたのには意味があるからねぇ〜。」
「そうね。暁月さんをかばうわけではないけれど、もう少し考えてあげて欲しいわ。じゃないと、四之宮さんが可哀想よ。たとえ、自業自得だとしても。」
そう言って、リビングのソファに無理やり座らされた。
ちなみに、舞さんは今日は大学で用事があり遅くなるそうで、かすみさんも職員会議で遅れるそうだ。
ぼんやりと今日・・・いや、同好会の時間の事を思い出す。
四之宮が飛び出して行ったあとのことを。
「あ、ちょ!?四之宮どこへ!?」
愕然とした顔をして、涙をにじませた四之宮が部室を飛び出していく。
俺、何か変な事を言ったか?
ただ、四之宮に良い人がいるなら応援しようと思ったから、そう言っただけなのに。
四之宮は、俺にとって可愛い妹みたいなもんだから。
あいつは、凄いヤツだ。
戦う
怖かったろうに、辛かったろうに、折れそうになる心を奮い立たせて、俺たちとともに魔王の行く手を阻んだ。
本当にすげぇ奴だ。
かけがえのない戦友で、頼れる仲間で、守ってやりたい奴だ。
俺は、あいつには幸せになって貰いたいんだ。
だから、応援しようと思った。
なんだか、少し胸がモヤモヤはしたが、それでも、そんなに評判の良いヤツが相手なら、四之宮にとって悪い話じゃないと思ったからだ。
だが、俺がそう言った結果、四之宮は泣きながら飛び出して行ってしまった。
何を間違えたのか・・・
「この・・・バカぁ!!!!」
バチンッ!!!!
いきなり頬に衝撃。
目の前には、涙をにじませながら手を振り抜いた暁月。
俺、今、ビンタされたのか?
「あんた・・・あんたっ!!!あんたが悪いわけじゃないのは分かってる!!あんたがどうしてそうなったのかも予想はついている!!あの子が悪い事も勿論分かってる!!!それでも!!あんたが無自覚でも残酷な事を言ったのは姉として許せない!!」
残酷な・・・事・・・?
俺は呆然として叩かれた頬に手を当てる。
「叩かれた事が気に入らないならあたしを殴っても良い!!理不尽な事を言っている事も分かっているわ!だけど・・・ねぇ、本当に分からないの・・・?優しかったあんたなら・・・昔のあんたなら・・・」
ぽつ・・・ぽつ・・・と、床に涙のシミができる。
暁月は涙を隠そうともせず、じっと俺を見つめていた。
俺は、周囲を見回す。
雪羅も、夜夢も、琥珀さんも、かすみさんでさえ、目を伏せている。
「・・・俺は・・・」
「お願いよ・・・考えてあげて?あの子が何故泣きながら飛び出して行ったのかを。叩いたあたしを嫌っても良いから・・・」
そう言って頭を下げる暁月。
そして、暁月は顔を上げると涙を拭きながら部室を出ていった。
結局、俺は何を間違えたんだろうか。
雪羅達は何も教えてくれない。
いや、違うか。
「零士。あんたは悪ない。せやけど、本当にそれでええんか?」
「うん。四之宮ちゃんが誰かと付き合っても本当に良いの〜?」
「・・・零士くん、あなたは彼女を妹のように思っているって言っていたけれど本当にそれだけかしら?」
「零士。よく考えてほしい。暁月はお前に嫌われる覚悟をし、それでも気がついて欲しいと願った。それは四之宮の為でもあり、お前の為でもある。」
四人が四人とも俺にそう諭した。
俺は、雪羅達を信用・・・いや、それ以上に信頼している。
彼女達が俺のためにならない事を言うわけがない。
勿論、それは暁月も同じだ。
てことは、俺が何か気がついていない事で、このままでは良くない事があるってことだ。
あれ以降、ずっと考えている。
正直、分からない。
だが、少しだけ気になる事があった。
それは、四之宮が知らない誰かと付き合う事になったと考えた時に感じたモヤモヤだ。
それは、雪羅や夜夢、琥珀さんやかすみさん、舞さんに置き換えても同じようになった。
暁月だって同じだった。
それ以外の女の事を考えても、そうはならなかった。
このモヤモヤはなんだろうか?
俺は・・・俺は・・・?
ピンポーンッ!!
チャイムが鳴る。
いや、今はそれよりもこの考えをまとめる事の方が先決・・・
「零士、客や。お前にな。」
インターホンのモニターを見た雪羅がそう言った。
俺に客?
立ち上がりモニターを見るとそこには、四之宮と・・・はぁ!?なんでここに聖女がいるんだ!?
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