第6話 幼少期 クソ親父、マジ許さん
しゃーないから話すかぁ。
まず、俺はどこにでもいる普通の高校生。
・・・だったら良いのに。
いや、違う。
俺は普通になりたい!!
そんな風に言うと、色々な奴から変な奴だと言われる。
なにせ、外見はどこからどう見ても普通・オブ・ザ・普通だからだ。
だがな?
世の中見た目が全てじゃない。
そこにいる普通の学生に見える女の子も、普通に会社に通うサラリーマンも、本当にそいつが普通かどうかなんてわかりゃしないんだ。
その筆頭がおそらく俺。
自惚れるなって?
前置きが長い?
うるせぇ!じゃあ、話してやるよ。
まだ高校二年生の若造だが、その半生をな。
これを聞いてもまだ普通だって言えるなら是非言ってみて欲しい。
まず、幼少期。
俺が住んでいたのはとある県の山中にある村だった。
「お前は誉れある祓魔師である斬来の家系の長男だ!鍛えに鍛えていつかは最強の祓魔師になって貰う!!」
はい、もうおかしい。
これ、俺の親父な?
筋肉隆々の熊みたいな見た目のおっさん。
しかも、俺がこれを言われたのはまだ5歳の時なんだぜ?
毎日毎日泣きながらボコボコにされる日々。
おふくろはいない。
なんでも、俺が二歳の時に、身体を悪くして亡くなったそうだ。
俺はほとんど覚えていないし。
で、周りに止める人間もおらず、俺は毎日親父にしごかれたんだ。
そこは祓魔師が住むかくれ里みたいなところでなぁ。
学校も遠いし、大人はみんな祓魔師だった。
そんな中で過ごしたってわけ。
「なんでこんな簡単な術が使えない!!それでも斬来の跡取りかっ!!」
毎日に聞こえる親父の怒声。
知らねぇよそんな事。
俺は何故か霊符とよばれる霊具をうまく使えなかった。
幸い、格闘術については才能があったのか、それなりに動けるようになったんだが、うちは霊能力者の家系だ。
術が・・・霊や妖魔・・・妖怪みたいなもんだな。
それが祓えないじゃ意味がない。
そんな毎日が続き、他の祓魔師の家系からも馬鹿にされる日々。
まぁ、この頃だな。
俺が暁月とよく一緒に居たのは。
落ちこぼれで周りからも相手にされていなかった俺と、暁月は良く一緒に居てくれたんだ。
「れいじはがんばってるよ?いっしょにがんばろう?」
そう言って励まされたのは何度あったっけ。
なんだかんだで、あの頃はその言葉に救われていたよ。
・・・ん?なんで赤くなってんだ暁月?
いてぇ!
何すんだ!!
あ、はい、続き話します。
まぁ、それも暁月が親父さんの仕事で海外に行くまでの事だけどな?
鍛え始めて3年後位に暁月は引っ越していったんだ。
親父さんとイギリスにな。
「れいじ、わたしすごいエクソシストになるね!きっとまた戻って来るから!!また一緒にあそぼ!!」
「うん、ぼくもまーちゃんに負けないようにがんばるね?」
お互いに泣きながら別れを言ったなそういや。
・・・そうそう、そういやあの頃は暁月の事”まーちゃん”って呼んでたっけか。
ぐっ!?
なんでボディ打つんだ暁月!
もう呼んでないから良いじゃねぇ・・・ぐふっ!?
な、なんでもう一回・・・?
あ、はい、続きですね?
そんな中、それは起こった。
ある日、親父が仕事で家を空けた時なんだが・・・ていうか、8歳のガキ一人を置いて何日、酷いときは何週間も家を空けるってのも今思えばおかしいんだが、俺は既にその頃には慣れていて、むしろ親父がいない事が嬉しかった。
それがいけなかったんだろうなぁ。
山の中に修行という名目で一人で遊びに出た時、それに出遭った。
「オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”」
一目で分かるほど力を持った悪霊だった。
俺のような落ちこぼれの祓魔師にはどうしようも無いくらいにな。
だが、それでもなんとかしなければ俺の人生はそこで終わりだ。
半泣きになりながらも、なんとか霊符を取り出し、霊力を込める・・・が、できるわけがない。
ビュオっと突風が吹いたと思ったら、持っていた霊符が軒並み燃え落ちちまった。
ガタガタ震えて近づいて来る悪霊を見る。
もうダメだ!ここで死ぬんだ!!
なんて思ってたなぁ。
だが、そんな時、ふと思った。
どうせ死ぬなら、一発位ぶん殴ってやりたい!!
この悪霊も!あのクソ親父も!!
そんな風に思って、込められるだけの力を込めて拳を振りかぶったんだ。
ヤケクソになってたからなぁ。
自分の拳がどうなってたかなんて知りもしなかった。
明らかに後退りし始めた悪霊の元に駆け出し、
「うわああああぁぁぁぁっ!!」
思い切り振り抜く。
すると、
「GI!?」
パーーーーンッ・・・
うめき声を上げる暇も無く、悪霊は散り散りに飛び散った。
当然呆然とする俺。
しばらくそうしていたのだが、我に返って自分の拳を見る。
すると、そこには青く光る自分の拳が!
そう、俺は何かに霊力を込めるのが苦手な代わりに、自分に留める方については誰よりも強かったんだ。
そりゃわかるわけないよな?
あのクソ親父は、自分と同じ霊力を込めて防御力を上げる霊衣や、攻撃力を上げる霊具、霊符に霊力を込めて術を起動させる方法しか教えなかったんだから。
で、それからは親父が帰ってくるまでその訓練。
はじめて、楽しいって思ったな。
俺の霊力量は家柄のおかげか、普通の祓魔師よりも圧倒的に多かったんだ。
で、それを身体にとどめて動き回ってみると、すげぇのなんのって!
スーパーマンもかくやって勢いで動けるんだからな。
で、それから三週間後に帰って来た親父が、
「俺がいなかった間で腑抜けた貴様を叩き直す!!」
とか言って模擬訓練始めたから、当然ボコボコにしてやった。
最初は、
「ふん・・・まぐれか。」とか「少しは成長したな。だが、甘えるな!」とか言ってたが、最後の方は「馬鹿な!?」とか、「ちょ!?もうやめ・・・へぶっ!?」とか「か、勘弁してくれ!今まで悪かった!!悪かったから許してくれ〜!!」とか言ってたが泣くまでやってやった。
後悔はしていない。
で、
「・・・修行し直してくる・・・生活費は振り込みます。」
と逃げるようにどこかに行っちまった。
そこからは、気は楽だったな。
生活費は振り込まれるし、好きなように生きた。
まぁ、訓練は習慣になっていたから、続けていたんだけどな。
そんな時、親父あての依頼ってのを持ってきたのがいた。
留守だと伝えると、悔しそうな顔をしているので、話を聞いてみる。
すると、親父はあれでもこの国で有数の祓魔師らしく、今回でた強力な妖魔の討伐を頼みに来た人だった。
だから、俺が代わりにやるって言ったんだ。
当然、依頼人は小学生・・・それも低学年である俺とまともに取り合わなかったんだが、力を見せたら半信半疑ながらもその妖魔のところに連れて行ってくれたので、サクッと討伐した。
それからは、評判になり、色々なところから依頼が来て・・・討伐先で見逃した雪女の母子が世話役として同居人になったりしたんだが、まぁ、色々あって富士の樹海で強い妖魔を倒してからはまとまった金も入ったし、仕事を控えて悠々自適に暮らしていたってわけだ。
ん?
ああ、そうだ。
その時の子供の雪女がそこにいる雪羅だな。
あの頃は雪羅も尖っててよく喧嘩を吹っかけられたもんだ。
まぁ、負けた事はなかったけどな。
あ、尖っているのは今もか・・・痛ってぇ!
雪羅何しやがる!!
氷を飛ばすんじゃねぇ!!
・・・ちなみに、これ、幼少期だから。
え?もうお腹いっぱいだって?
いやいや、まだこれからなんだよ・・・俺の苦難は。
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