閑話 乙女心 桐谷 舞の場合(2)

 さて、なんとかお母さんの説得はできたね〜。


 まったくもう、頑固なんだから。


 3時間もかかっちゃったよ、もう!


 私が、零ちゃんに対して悪い事するはずないのにね〜?


 何が、


『舞?良い?子供だけは作らないでね?順序は守ってよ?』

『お願いだから監禁とか軟禁とか薬を盛ったりしないでよ?』


よ!

 

 そんなの、隙があったらするに決まってるでしょ?

 そりゃ、お母さんは他人事だから良いけれど、こっちにしてみればライバルはみんな強力なんだからさ〜。


 手段を選んでいられないっての。


 でも、まぁ、多分零ちゃんにそれは通じないと思うんだよね〜。


 なにせ、異世界を救ってるんだもんね。

 薬なんかは効かないと思うし、監禁しても強引に抜け出せる気もするし。


 私がするのはあくまでも零ちゃんに愛を教える事だけ。

 そのための今回の策なんだから。


 私の予想が正しければ、零ちゃんはこれから学校で過ごし難くなるはず。

 

 放課には男の子たちに詰め寄られて、辟易していると思うんだ。


 結城ちゃんあたりは、そこにつけこんでなんらかの手を打って生徒会室を避難場所にさせて独り占めしようとするだろうし、それに対抗して暁月ちゃんや四之宮ちゃんは部活・・・いや、もっと少数かな?同好会あたりを発足しようとするだろうね。


 そ〜すると、顧問は・・・うん、隠岐ちゃんかな?


 隠岐ちゃんは明らかに普通じゃなかったし、多分零ちゃんもそれに気がついてるだろうし。

 取引して顧問とあと・・・場所を提供させると思うな。

 場所は多分あの物置代わりの教室だね。

 入学した時には普通にみんな知ってたのに、いつの間にか誰も知らなくなっていたところ。

 時期は隠岐ちゃんが赴任してすぐだから、隠岐ちゃんが何かやったんだろうね~。


 まぁ、知っているのが明かになれば隠岐ちゃんは私を消そうとしただろうから、何も知らないフリしてたけどさぁ。


 そもそも、隠岐ちゃんは私を警戒して近寄らなかったけどねぇ。

 隠岐ちゃんの私を見る目には畏れが見えたから。


 私の本質に気がついていたんだろうね~。


 隠岐ちゃんと零ちゃんの関係がわからないから、隠岐ちゃんが零ちゃんにどんな感情を持ってるかまではわからないけど・・・でも、零ちゃんの事だから多分、隠岐ちゃんをもう堕としてる気がするな〜。


















 やはり対抗するにはこれしかなさそうだ。

 学校という空間を共にできないのはかなり不利。

 だがまぁ、それは良いだろう。

 今回の私の策でどうとでもなる。

 彼の家に住み着いている二人を説得する方法も検討済みだ。

 後は、実行するのみ。

 週末まで後少し。

 予定通りだ。


 今後の展開を予想するに・・・ふむ、私と同じ手を使うのがもう一人・・・いや、場合によっては二人に増えるかもしれない。

 もし、そうなったら・・・共闘も視野にいれるべきだろう。

 なにせ、あの二人は手強い。

 彼をこれまで支えてきたという実績がある。

 まぁ、増えると予想されるうちの一人は、私に苦手意識があるのは分かっている。

 彼女は私の異常性に気がついているから。

 まぁ、もう一人も気がついてはいるが・・・そこは在学中にどちらが上かしっかりとその身に植え付けてあるから問題はない。

 後の二人・・・あの姉妹はわからない。

 特に姉の方。

 あちらは、心が強い。

 仮に私の本性を見抜いたとしても引かないだろう。

 どうすべきか・・・排除は厳しい。

 というよりも、彼が許さない。

 それを選択した瞬間、おそらく私は彼の敵となってしまう。

 ならばいっそ・・・ふむ、悪くないかもしれない。

 他の面々がどう判断するかわからないが・・・少なくとも、一人は賛成するだろう。

 

 彼の心を救うにはそれが最善かもしれない。


  



 


「舞〜?ちょっと注文が来たんだけど、打ち合わせ出来る〜?」

「は〜い。」


 ・・・っと、いけないいけない。

 また思考が加速してたな〜。


 本当は零ちゃんの事だけ考えてたいんだけどね〜。

 ま、いいや。

 

 さっさと仕事終わらせて、後でこれからの予測をしとこっと。


 まだまだ荒れそうだしね〜?


 それに、準備もしなきゃだし。

 色々買わないといけないし、手配もいるしね〜。

 

 もっとも、お金は今までの稼ぎでかなりあるから、予算は潤沢なんだけどさ。

 あ、そう言えば零ちゃんに注文受けてたアレを渡すの忘れてた。

 まぁ、週末でいっか。


「舞〜?まだ〜?」

「は〜い、今行くよ〜!」


 っとと!

 いけないいけない!


 まずはちゃっちゃと仕事終わらせないと!

 考えるのはその後だね!

 



 ・・・それにしても、最近特に考えている事がある。

 それは八田ちゃんの事なんだけど。 

 零ちゃんの話によれば、八田ちゃんは向こうの女神に半ば追放されてこっちに来たって説明だった。

 まぁ、八田ちゃん的には要望を聞いて貰ったって感じだったけど。

 

 でも、それって本当かな?

 だって、『女神』なんて存在が零ちゃんの心の歪さに気が付かなかったわけがないと思うんだよね〜。

 だから、もしかしたら、八田ちゃんは壊れてる零ちゃんの心を癒やすために派遣されたんじゃないかなって思っているんだ。

 だとすると、零ちゃんの心を癒やす鍵が八田ちゃんにあるって事になる。

 

 それってなんだろう?

 私も夢魔の能力を詳しく知ってるわけじゃないから、いまいちピンとこないんだけど、一度調べた方が良いのかな?

 今度八田ちゃんに聞いてみ・・・


「ま〜い!!」

「はいはーい!」


 あ〜、さっさと行かなきゃ。

 お母さんが怒ってる。


 行こ〜っと。


****************

これで二章は終わりです。

続いて第三章。

動き始める同好会。

それぞれの思惑は・・・? 

 

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