第14話 逃がす気ないじゃないですかやだー!

「あの子可愛い・・・ってあれ、一年の四之宮さんじゃないか?」

「おお・・・あのおっとりとした雰囲気にあの胸・・・間違いない。」

「って待て待て!あの子男嫌いだって噂だろ!?零士って誰だ!?このクラスなのか!?」


 ・・・おいおい、クラスがざわついてるじゃねぇか!

 どうする・・・って、一つしかねぇか。

 この隙に逃げる!!


 四之宮には悪いが生贄になって貰おう。

 このまますり抜けて・・・『グイッ』・・・って、おい、四之宮?

 いや、四之宮さん?

 離してくれません?

 なんで制服掴んじゃったの?

 お兄ちゃん、困ってるよ?

 離してあげて?


「・・・なぁ、俺の気の所為か?あの子、斬来の制服引っ張ってねぇか?」

「これは・・・勉強のし過ぎだろうか。目がおかしくなったのでは・・・」

「つーか、あの子今朝校門のところで斬来達と一緒になってたよな?てことは・・・」


 クラスの視線が一斉に集まるのがわかる。

 背筋に冷たいものが流れる。

 こうしちゃおれん!


「あの〜離して欲しいんだけど〜・・・」


 にっこり♡


 いや、四之宮さん、何か笑顔が・・・


「零士さん?一緒にお昼食べましょ?」


 おいおい、何言ってんだ四之宮は。

 そんな事したら目立っちゃうでしょ?

 ここはビシッと断ってやらないとな!


「あ、あ、あの、俺、そう言えば弁当忘れたかも。」


 ・・・言えない。

 だってこいつ多分泣きそうな顔するもん!!

 そんな事したらもっと目立っちまうし!


 そんな俺を尻目に、四之宮は笑顔のまま俺の手に持っている包み弁当を指さした。


「手に持ってますよね?」

「いや、これは」

「持ってますよね?」

「中身は本で」

「持って、ますよね?」

「・・・はい。」


 うわーん!

 四之宮が見逃してくれない!

 いや!諦めては駄目だ!

 俺はこれでも冥王竜を倒した男!

 大妖である千年妖樹だって倒した男!

 負けられない戦いがそこにある!!

 諦めたらそこで試合終了って安西先生も言ってたし!


 パチン!パチン!

 

 どうだ!?

 俺のウィンクでわかってくれるか!?


 俺のウィンクを見た四之宮は少し考え、にっこりと笑った。


 よし!

 わかってくれたか!

 流石は戦友とも

 俺、信じてた!!

 信じてたよ四之宮!!


「わかりました零士さん!二人きりで食べたいんですね?じゃあ行きましょう?」


 違う、そうじゃねぇ!そうじゃねぇよ!?


 しかし、そんな俺を尻目に四之宮は俺の手を掴みグイグイと引っ張っていった。


 あ、あ、四之宮そんな俺の手を引っ張らないで!?

 魔力まで使って身体強化をつかわないで!?

 

 逃がす気ないじゃないですかやだー!


「・・・これは絶対戻ったら・・・」

「ああ、事情聴取が必要だな。洗いざらい吐かせてやらねば。」


 ちょっと男子!?

 聞こえてるんですけど!?


 ・・・このまま帰りてぇ・・・








「ルンルン♪」

「ご機嫌だな四之宮。なんか良いことでも会ったのかい?」

「はい!零士さんと一緒にご飯食べられますから!あの頃以来ですね!体育の授業早く終わって良かったです!」


 う〜ん・・・つっこみなしか。

 某物語のおしの字みたいに言ったのに・・・残念ながら四之宮にラノベやアニメを見る趣味は無いらしい。


 ・・・まぁ、良いか。

 たまにはあの頃のことを思い出しながら食べるのも悪くないかもな。


 俺たちが体育館裏に移動すると、ちらほらとグループが見える。

 まぁ、これくらいならそう目立つ事も無いだろう。


「さぁ、零士さん?一緒に食べましょう?」

「わーったよ。一緒に食おうぜ。」


 俺たちは四之宮が持ってきていたレジャーシートの上に座り、弁当箱を開ける。


「零士さん、それ手作りのお弁当ですか?」

「ん?ああ、雪羅が作ってくれるんだ。中々美味いぞ?」

「・・・へぇ。」


 ・・・なんでそんな面白くなさそうな顔してんだ?

 よくわかんねぇな。

 結構美味いんだぜ?

 ま、いいや。

 いっただっきまー



 ぬるぅ



「おわっ!?」

「へ?きゃっ!?」


 ぬるっと現れた誰かに、突然首の後ろから手を回される。


「えっへっへ〜♡夜夢ちゃんをハブろうったってそうはいかないもんね〜♡」

「夜夢!?」

「っ!!八田さん!!どこから!?」


 いつの間に来やがったコイツ!?

 あ、影移動か!!

 俺の影をマーキングしていやがったな!?


「にっしっし♡大魔法使いちゃんの思い通りにはさせないよ〜?」

「・・・そうみたいだね。」


 ・・・なんでこいつらこんなに睨みあってるんだ?

 ま、いっか。

 

 飯食おうっと。


 俺はにらみ合う二人を尻目に箸を持って手を合わせる。


 頂きます。


 この後、めちゃめちゃ飯食った。

 美味かった。

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