第15話 おいおい、お前らもかい

 なんだかトゲトゲした昼飯を食い終え、また午後から授業だ。

 どうも、昼食中に教室に俺を探しに暁月が来たようで、クラスの男共がざわついていた。

 いや、ざわついていただけじゃない。


 ギリギリギリッ


「なんの音だ?さっきからうるさいな。」


 教師が怪訝な顔をしながら小首を傾げている。


 授業中にも関わらず歯ぎしりをしている男共のせいだ。

 俺への視線も多数感じる。

 あ〜めんどくせ〜!


 暁月がただ来ただけの話だろ〜?

 なんでこんな殺気立つのかね〜。


 なんつーかよくわかんねーんだよな〜。


 女の子と仲がいいってのはそんなにイライラする事なのかね?

 そもそも俺は女って生き物がよくわからん。

 いや、生物としての男女ってのは勿論わかるぞ?


 男もそうだが、女もいなければ生き物として存続できないしな。

 生物として、重要であることは明白だ。

 

 だが、なんでそこに感情が持ち出されるんだろう?


 別にいらなくね?

 むしろ好きだのなんだのがあるせいで、相手が選ばれなかったりってのがあるんだろ?

 相手なんて選ばないで繁殖できる方が、生き物としてはより繁栄できると思うんだけどなぁ。

 まぁ、より良い子孫を残そうと思ったら、優れた能力を持つ相手を選ばなきゃとは思うんだが、そこに愛情ってのが必要なのか?


 ・・・俺にも雪羅や夜夢がそれを向けてくれているのがわかってはいる・・・つもりだ。

 あいつらに何かあったら助けてやりたいって思うし、他と違う特別だって気持ちもある・・・気がする。

 じゃなかったら、頼まれたって身体の関係にはならねぇっての。

 だが、それは暁月や四之宮、それに先輩や舞さんに感じる事とも同じな気がするんだよな。

 

 男女の愛は何に作用する?

 夫婦仲か?

 ソレ以外だと・・・子供か?

 男女の愛が子供への愛に変わるのか?


 だが、俺にはよくわからない。


 親の愛情なんて貰った事がない俺には。


 だから・・・本当は俺のような人間に愛を抱かない方が良いんだ。

 俺はそう思っている。

 

 だが、あいつらは・・・


「起立!」


 っと、いかんいかん。

 珍しく真面目に考え込んじまったぜ。


 柄じゃねぇよな〜。


 でも、な〜んかちゃんと考えないといけね〜気がするんだよな?

 なんでだ?


 っと、今日はこれで授業終わりだっけか。

 じゃ、さっさと帰らねぇと・・・しまった。

 出遅れたか。

 

 考え込んだ分、初動が遅れちまったぜ。


「斬来〜!」

「いい加減ちゃんと教えろよ!」

「そうだ!どんな関係なんだよ!なぁ!なぁって!!」


 めんどくせ〜。

 どーやって逃げるか・・・

 つ〜か俺と暁月たちの関係がどうであろうと、こいつらに関係あるのか?

 マジわかんねぇな。

 


「ちょっといいかしら?」


 そんな中、騒がしい中に凛とした女性の声が響いた。

 しかし、そんな声も殺気立っているこいつらには関係ないようだ。


「なんだよ!邪魔する・・・って、あ・・・」


 だけど、振り返って見て、流石に相手が誰だかわかったのか、苛ただしげにしていた奴らが固まっていた。


 ・・・あ〜、ここで来る?

 まさか狙ってたのか?

 

「彼に少し用事があるの。ちょっと手伝って欲しくて。来るわよ、ね?」


 うわぁ・・・澄ました顔してやがるが、してやったりってのが透けて見えるぜ先輩?


 どんな仕事を押し付けられるのか・・・はぁ、どうしたものか・・・

 だが、ここから抜け出すチャンスではある。

 仕方がない。

 ちょっと手伝うかね。

 実際、困ってるかもしれねーし。


 そう思って口を開きかけた俺だったが、そこへさらなる闖入者が来て口を閉ざす事となった。


 お前もかよ・・・


 ざわめきの中、平然と進み出たその女。 

 そして、そいつを見て先輩は眼差しを厳しくした。


「申し訳ありませんが、お断りします。零士はウチと帰りますので。」

「ぐっ・・・九重さん・・・っ!」


 ・・・おいおい、何しに来やがった雪羅め。

 うげぇ!

 クラスの男共だけじゃなくて、廊下にまでギャラリーがいやがる!

 見てんじゃねぇよ!

 金取るぞ!!

 

「お、おい、氷姫が・・・」

「やっぱり噂は・・・」


 いや、マジでどうしよ?

 ここで逃げたら空気読めねぇって思われるよなぁ。


「・・・あら九重さん。すみませんが先に彼に声をかけたのは私です。優先させて頂きますね。」

「これは異な事を。ウチと彼の関係を知っているでしょう?ならば優先はウチの筈ですが?」

「「・・・」」


 おいおい、なんだこの緊張感。

 勘弁してくれよ!!


「・・・おい、氷姫と斬来の関係ってなんだ?」

「それに生徒会長もだ。あの生徒会長が斬来を指名して・・・一体なんで・・・斬来だぞ?普通オブ普通の斬来だぞ?」

「わからん。わからんが・・・やはり斬来を尋問する必要がありそうだ。」

「おのれ斬来・・・みんなの憧れの結城会長や麗しの氷姫と親しげに・・・」


 ・・・おいおい、お前らもかい。

 マジ、勘弁してくれよ〜!!

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