第65話 ・・・なんて無理ゲーなのだろうか?
「ふっ!!しっ!!」
「っ!!」
暁月の凄まじく鋭い突きと斬りつけを躱す。
強い!
以前零士が言っていた言葉。
『隠岐先生。あんたがその道で才能があるように、暁月も四之宮もそれぞれその分野で才能に溢れているんすよ。まともに戦えばおそらく相打ちっすよ?』
あれを思い出させる。
確かに強い。
「水遁『水時雨』!!」
「
今も水遁で暁月を縛ろうにも、取り出した霊符で光の盾を作り防いでいる。
それどころか、
「
「ちぃっ!!」
炎でこちらを攻撃してくる。
まずい。
こちらはかなり消耗しているが、暁月はまだまだ霊力が潤沢のようだ。
このままではジリ貧だ。
決めるなら一気に決めねば。
こちらの勝利条件は暁月の説得だ。
その為にも、こちらの言葉を暁月に届けなければいけない。
あの制約の霊具のせいで、私の言葉は暁月には届かない。
だから、私が勝利条件を達成するには、あのブレスレットを破壊せねばならない。
それも暁月をあまり傷つけない形で。
・・・なんて無理ゲーなのだろうか?
幸い、今は私の方が自力は上ではある。
だが、
「せぁっ!!」
「くっ!?」
危うく暁月の斬撃が私に届きかける。
これだ。
暁月はやはりエクソシストとして天才だ。
術も、戦闘技術も、そしておそらく魔を祓う技術も。
私との戦闘で、みるみる内に実力が上がっている。
おそろしい。
思えば、零士の周囲にいる者はだれもかれもが才能に満ち溢れているな。
雪羅も夜夢もあやかしとしては規格外であるし、琥珀も能力者としてはずば抜けている。
美奈は大魔法師と言われる位に高位の魔法使いだという事だし、舞は言わずもがなだ。
そして、そこにいる暁月。
若き天才エクソシスト。
だが、それでも、だ!
「私だとして、並ぶもの無しと言われた忍び!!暁月!!行くぞ!!」
「っ!!」
私は、気力を高める。
私の雰囲気から、私が何かをするという事を感じ取ったのか、先程の『光の盾』のようなものを展開した。
そう、お前はそうすると思った。
それが狙いだからな。
「お前を説得して零士を救う!暁月防げ!!」
「っ!!来る!!」
行くぞ!
side真奈
「お前を説得して____!暁月防げ!!」
隠岐先生が何かを叫んだけれど、私にはノイズが走ってよく聞き取れない。
でも、それで良いの。
私の決意を変えるような言葉だって事だから。
今、先生は凄い力を溜めている。
力の質は違えど、分かるもの。
だから、私は物理攻撃以外を遮断する『聖なる盾』を展開して防御を固める。
そして、力を使い切った先生へカウンターを決めて終わらせる。
先生は確かに強い。
天才の忍びってのは本当なのでしょうね。
他の忍びのことは知らないけど、それでも私がこれほど苦戦するって事は、そういう事なんでしょ。
最初は明らかにこっちが劣勢だったしさ。
でも、もう慣れた。
だから、なんとか喰らいつけている。
お生憎様。
私だって、それなりに天才って言われているんだもの。
絶対に負けないわ!
・・・私だって、本当は零士の側に居たい。
でも、美奈が零士と結ばれたであろう今、私の存在は邪魔になる。
零士は、九重先輩や八田さん、それに結城先輩や桐谷さんとそういう関係になっているみたいだけど、彼女たちでは零士の心を癒せなかった。
でも、美奈はそれを改善させたからこそ、零士と結ばれることが出来たのだもの。
なら、実際に零士を癒せた美奈に・・・零士を任せるのが最善、だわ・・・
私は零士を好きだから。
愛しているから。
だからこそ、身を引かないといけないの。
だから先生?
恨まないでね?
先生からビリビリとした空気が発せられる。
凄い殺気。
場には緊張感が満ちている。
でも、これを防ぎさえ出来たら・・・私の勝ち!!
「忍法『影法師』」
先生が力を解き放った。
これは・・・分身?
どんどん先生が増えていく。
そして気配も。
だけど甘いわ。
「
s
私に
この『真実の鏡』の御業は虚像を全て消し去るんだもの!!
これでチェックメイト・・・って!?
いない!?
視界の分身は全て消し去った。
でも、本体が居ない!!
ゾクッ!!
「っ!!そこっ!!」
ザンッ!!
手応えあり!!
「・・・クッ!流石だ。だが、隙あり。私の勝ちだ。」
「!?」
突如私の影から現れた先生の気配を背後に感じ、それに反応した私が霊具で隠岐先生の身体を斬った。
霊具による切り傷だから生身に跡は残らない。
だけど、魂から来る力と魂を切り裂く痛みで動けなくなる・・・筈なのに!?
「封魔刀『絶禍』!」
バキィィィ・・・ン・・・!!
先生は顔を歪めながらも小太刀らしきものを振り抜いていた。
ブレスレットの破片を飛び散らせながら。
「悪いな暁月。駆け引きは私の勝ちだ。肉を切らせて骨を断つ。忍術『影法師』は、気配がある分身に紛れ術師本人の気配は消え、相手の影に潜む事ができるものだ。そこへあえて斬られて見せれば隙を見せると思った。霊具に斬られるのは初めてだったが、これほどの痛みとは・・・だが、私の零士への愛を甘くみるない事だな。あいつの為ならどんな痛みであろうと我慢するさ。」
私はそんな言葉を呆然と聞いた。
零士の為という言葉で狼狽しながら。
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