第53話 落ち着く、良い音だ・・・

「それじゃ邪魔しました!!皆さん、これからもよろしくお願いします!!」


 結局、あの後舞さんと四之・・・美奈は二人で話をして、帰宅する事になった。

 

「じゃ、送ってくわ。」

「いってら〜。」

「寄り道せんとはよ帰ってき?」


 へいへい。

 

「ミナ、またね。」

「はいっ!ミルさんもまた!!」


 つ〜わけで、美奈の自宅へ二人で向かう。


 この後、ミルと舞さんは二人で話をするらしい。

 何を話すんかねぇ?

 気にならねぇかって言ったら嘘になる。


 あの人はビビッと来た、なんて言ってるが多分あれは嘘・・・というよりも何かを誤魔化したくさい。

 おそらく、すでに仮説のようなものまでできている筈だ。


 それが、何を意味するのかは俺にはわからん。

 わからん、が・・・決して悪いことでは無い。

 気がする。


 まぁ、気がするだけだ。


 もし俺が知る必要があればそのうち教えてくれるだろう。


「・・・さん?零士さんっ!!」

「お!?お、おお。なんだ?」


 っと、どうやら考え事をしてぼ〜っとしていたみてぇだ。


 何やら頬を膨らませた美奈が俺を見上げている。


「ど、どした?」

「どうしたじゃありませんよ!!折角二人きりなのに上の空じゃないですか!!」

「わ、わりぃ。」


 おおふ。

 腕を組んで上目遣いでぷんすこしている美奈。

 う〜む、可愛いなコイツ。


「よしよし。」


 思わず頭を撫でる。


「え、えへへ♡って誤魔化されませんからね!もうっ!!」


 すぐににへっとするが、すぐにハッとして頭を振りまた頬をぷっくら膨らませている美奈。


「く、くくく・・・」

「もうっ!!なんで笑ってるんですか!!」


 思わず笑っちまった。


 そして、キャンキャンと吠える美奈の頭を優しく撫でる。

 

「・・・なんですか?」

「いや、なんだ。なんつ〜か、まさか美奈とこんな風にする事になるとはなぁって思ってな。可愛い妹分だと思ってたが・・・しっかりと女の子してんじゃね〜か。」

「・・・私、女の子だもん・・・」

「わりぃわりぃ。そうだよなぁ・・・俺、なんでこんな風に思えなかったのかね・・・やっぱ、どっかおかしいんだろうなぁ・・・」

「・・・」


 俺の言葉に美奈が無言になる。


 そうだ。

 俺は、何故か誰かからの恋愛的な好意をこれまで見逃してきた。

 

 といよりも、みんなと今のような関係になってから、色々と聞いて来たが、どうもみんな今までにもきちんとアピールしていたらしい。


 それぞれ全然気がついていなかったのだが・・・まぁ、舞さんは別、というか、冗談だと思っていたのだが、それだっておかしい。


 俺はもうちょっとシンプルに考えるタイプだった筈なんだ。


 にも関わらず、恋愛だけには何故かそのまま受け取れないし、鈍くなる。


 これに気がついたのは美奈からの告白を受けてからだ。


 どうしてこうなったのか・・・いや、それはひとまずおいて置こう。

 というか、深く考えようとしても心にモヤがかかる。

 これ、なんだ?


「・・・零士さん。」

「ん?なんだ?」


 突然名前を呼ばれ、そちらを見る。


「零士さんのそれは、きっと私が・・・私達が治します。だから、安心して下さい。」

「・・・ああ。分かってる。心配してねぇさ。それよりも、美奈。本当に俺で良いのか?こんな壊れた俺で本当に、」

「零士さん?それ以上言ったら怒りますよ?私は、あなただから良いんです。きっと八田さん達も同じです。だから・・・見てて下さい。」


 見る?

 何をだ?


「私を。私達を。あなたを愛している私達を。そして、感じて欲しい。」

「感じる?」

「はい。」


 そう言って美奈は・・・俺の顔を胸に抱きしめた。

 とくん・・・とくん・・・と鼓動が聞こえる。

 優しい鼓動だ・・・


「聞こえますか?あなたが守ってくれた命の音です。」

「・・・ああ、聞こえる。落ち着く、良い音だ・・・」


 なんだろうか?

 心が暖かい。


「零士さん。今はまだ、あなたにが何かわからないでしょう。きっと教えてもわからない。あなたはそういう風になってしまっている。」

「・・・」

「でも、きっと私たちはを気が付かせます!全身全霊とあなたを愛する心をもって!!」

 

 ああ、教えてほしい。

 心からそう思う。


 そして返したい。


 俺にもそれがあるのなら、俺も美奈に・・・あいつらにも返したい。

 

「焦らなくても良いですよ。一生をかけてでも気がついてもらいますから!」


 ああ・・・なんて眩しい笑顔なんだ。


 美奈だけじゃねぇ。


 雪羅も

 夜夢も

 舞さんも

 かすみさんも

 琥珀さんも


 みんな眩しく輝いている。

 もっと見ていたくなる。

 

 そばに居たくなる。


 それに・・・あいつも・・・


















「・・・そっか・・・良かったね・・・美奈・・・」


 そんな声がどこからか聞こえた気がした。

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