第54話 俺、今から闇討ちされる?

「それじゃあ、零士さん。これから・・・いえ、これまで以上に色々とお願いしますね!」

「あいよ。ま、よろしくな?つーても、これまでとそう変わんねぇと思うが。」


 そうそう変わるもんでもねぇだろ。

 俺はこれまでもこいつの事を仲間として、戦友として、んで、妹分のつもりで大事にしてきたつもりではあるからな。


「いいえ、違いますよ?だって、これからは遠慮なくくっつけますし、それに八田さん達みたいにしてくれても良いんですよ?」

 

 しかし、そんな俺の考えをぶち壊すようにコイツは笑顔で言った。


 んな事いきなり、妹みてぇに思ってた奴にできっかよ!


「・・・ほら、とっとと家に入れ。」

「あはは。じゃ零士さんお休みなさい。」

「おう。おやすみ。」


 舌を出してにししと笑いながら美奈は自宅に入っていった。


 やれやれ、また更に騒がしくなりそうな感じだぜ。

 門扉から敷地外に出る。


 で、


「なんか用か?」


 俺は少し大きめな声で後ろに問いかける。


「・・・もう、なんで分かるのよ・・・」

「こう見えてビビリなもんでな。」


 そう言って振り向くと、少し離れた暗がりから姿を見せたのは、


「で、暁月はなんでそんな隠れてんだよ?」


 暁月だった。


「ちょっと、良い?」



















 暁月と少し歩き、近くの川べりまで来た。 

 ここは、堤防を下ったところで周囲に人気も無い。

 光も無いし闇討ちするならもってこいだな。


 あれ?

 俺、今から闇討ちされる?

 

「・・・ごめんなさい。」


 ん?

 謝った?

 闇討ちじゃないの?


「なんで謝る?闇討ちじゃないのか?」

「・・・闇討ち?なんで私があんたを闇討ちしなきゃいけないのよ・・・」


 呆れたような暁月の声。

 違うのか。


「じゃ、なんの事だ?」

「・・・あんたを叩いた件よ。」


 ああ、その事か。


「いや、良い。ありゃ、俺が悪い。」

「・・・そ。じゃ聞いたわけね。あの子の気持ちを。」


 ありゃ?

 俺、誘導された?


「まぁ、な。」

「・・・やっぱり、ねぇ・・・良かった・・・あの子の思いが報われて・・・」


 暁月は微笑んでいる。

 なんだろうか・・・この、なんつーか・・・嫌な感じは・・・

 

「ねぇ、零士。私さ、私・・・」


 暁月は、何を・・・


「私・・・あんたの事・・・」


 暁月の顔を見る。

 そこには、


「だいっきらい。」


 涙を流して俺を見て微笑む暁月。

 なぜだか胸の動悸が高まり、声が出ない。

 

「そういう・・・事だから・・・じゃぁ、ね・・・」

「ま、暁・・・」


 止めようにも、声が出ない。

 なんだ、これ・・・


 そして、暁月は振り向き、そのまま立ち去る。

 俺は一歩も動けなかった。











 気がついたときには、家に向けて歩いていた。

 何も考えられない。

 暁月は何故あんな事を言ったのだろう。

 

『だいっきらい。』


 それに、なんであの言葉にこれほど衝撃を受けているのだろうか。


 わからない。

 俺はいったい、どうしちまったんだ?


 足取りが重い。

 身体もだるい。


 わからない。


 わからない。

 わからない。

 なんで俺は・・・


「おかえりなさいませ、主さ・・・零士!?どうしたん!?」

 ああ、雪羅か。

 何を騒いで・・・


「どーしたのー?って、レージ!?何その顔色!?それに・・・」


 夜夢まで。

 俺は、普通のはず・・・


 騒ぎを聞きつけたからか、どたどたと家の中から走り寄る音が聞こえる。


「零士!?何があった!?」

「零士くん!?しっかりして!?」


 かすみさんと琥珀さん?

 あれ?

 眼の前が霞んで二人の顔が良く見えねぇ・・・ 


「・・・もしかして、これがそう!?零ちゃん!!気をしっかり持って!!」

「・・・多分、ね。まさか、これほど早くだなんて。何が引き金になったのか・・・」


 舞さんとミルの声が聞こえる。

 だが、もう眼の前が霞んで見えない。


 いったい、何が、起きて・・・























『呪いだよ。』

















 気を失う瞬間、馬鹿女神の声が聞こえた気がした。


*******************

これで今章は閑話を除いて終わりです。

次章へと続きます。

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