第32話 協力してやりたいじゃん?

 はてさて、何がどうなったのかはわからんが隠岐せんせが俺の家に住む事になった。

 あれから隠岐せんせは話が終わったらすぐに帰った。

 一応、簡単に荷造りするとの事だ。


 今日の放課後、隠岐せんせの自宅に行って荷物を引き上げる事になっていて、その間に雪羅と夜夢と舞さんが、隠岐せんせが使用する予定の部屋の掃除を進めてくれるとの事だ。


 にしても、なんだかどんどん環境が変わって行くよな〜。


 ここんところ変化無かったのに、なんだか不思議な気分だぜ。

 ま、なんだかんだで嫌とは感じてはねぇんだけどな。


 



 今日もいつも通り・・・いや、ここ数日の通り雪羅と夜夢と一緒に登校、そして校門前で暁月と四之宮と合流。

 さりげなく、罠とともに挨拶してくる隠岐せんせとも挨拶。

 勿論、罠も躱したぞ?

 今日の罠は糸を使った仕掛けだった。


 足が引っかかると苦無が飛んでくるものだ。


 これ、俺以外が引っかかったらどうするの?

 事件になっちゃうよ?


 しかし、そう言った隠岐せんせの反応はというと、


『その時は苦無を撃ち落とすだけ。』


 と、斜め上の回答だった。

 いやいや、そもそも罠しかけるのやめましょうよ。


 別に狙うなとは言わねぇけどさぁ?

 そう言うと、何故か隠岐せんせは俺に近寄り、


『なら、今日の夜、仕留めさせて貰う。覚悟しろ。』


 と、耳打ちした。


 引っ越したその日にタマ狙うってどんな神経してるんだ? 

 まぁ、その直ぐ後に、


『隠岐先生!近い!!』

『離れて下さい隠岐先生!!』


 という暁月と四之宮に引き離されていたが。


 




 放課はまだまだ男共から逃げ回っていたが、昼は逃げる必要は無かった。

 というのも、

 

「零士ー?ご飯行くわよ〜?」

「おーう。」


 暁月が迎えに来たからだ。

 

 ぎりぎりという歯ぎしりの音がそこら中から聞こえる。

 そう恨まれてもなぁ。

 これ、俺のせいなの?

 連れと飯一緒に食べるのはそんなに悪い事なんか?

 相変わらずよくわかんねぇな。


 そして昼飯。


 みんなで集まって飯を食う、んだが・・・


「はぁ!?隠岐先生も一緒に住む!?どうなってんのよ!?」

「そうです!どうしてですか零士さん!!」

「二人に同意見だわ。一体どうしてそうなったのかしら?」


 いや、それこそ俺が聞きてぇくらいなんだけど?

 まぁ、舞さんの説明じゃ自衛の為と防衛の強化だって話だが。


 どうにもそれだけじゃなさそうな気もする。

 

「・・・って事だそうよ。」

「「「・・・」」」


 一応、雪羅が暁月と四之宮、そして先輩に説明してくれてはいるが、どうにも三人とも承服しかねる!って感じの顔してんなぁ。


「・・・隠岐先生?教師が教え子と一つ屋根の下というのはいかがなものでしょうか?」

「大丈夫。斬来は私よりも強い。だから私が襲っても返り討ちになるだけ。」

「そういう事ではなくてですね?」

「そうよ!零士が先生を襲ったらどうするのよ?」

「・・・敗者は勝者に従うのみ。潔く性の捌け口になる。どんと来い。」

「覚悟決めすぎでしょう!?」

「九重先輩と八田さんはそれで良いの・・・?」

「昨日、舞から詳細を聞いたから、納得したくないけど納得したわ。」

「そうだねぇ〜、少しでもそれがプラスになるなら仕方がない、かな?」


 わちゃわちゃと先輩、隠岐せんせ、暁月、四之宮、それに雪羅と夜夢がやっている。


 ていうか、雪羅と夜夢は詳細っての聞いたの?

 ていうか、詳細があるの?

 なんで家主の俺に詳細教えないの?


 おかしくない?


「零士!あんたはなんで何も言わないのよ!」


 暁月が矛先を俺に変えてきた。

 いや、だけどなぁ・・・


「まぁ、俺は一人の辛さをよく知ってるからなぁ。隠岐せんせが今そんな状況ならまぁ・・・協力してやりたいじゃん?」

「「「・・・」」」

「・・・♡」


 俺の言葉に暁月と四之宮と先輩、そして隠岐せんせが押し黙った。

 いや、ちょっと違うか。

 隠岐せんせは何故か少し頬が赤い気がする。

 長い髪をおろしているせいでよく見えないど。

 

「アホ零士。」

「バカレージ。」


 おい!!

 なんで雪羅と夜夢はそんな呆れた目で俺を睨みやがる!!

 罵倒までしやがってからに!お仕置きしちゃうぞ!?

 お尻ペンペンやぞ!?


 それに夜夢!

 アホは良いけどバカはだめなんだぞ!!

 大阪人だったら喧嘩だぞ喧嘩!!

 パンパンやからな!? 


 バカって言った方がバカなんだからなバーカ!!!


 ゲシッ!

 

 痛い!?

 蹴るなよ夜夢!!

 俺口に出し無かったぜ!?ひどくない!?

 





 さて、放課後。

 今日は同好会は無し。


 その説明を昼にしたからな。


 まぁ、暁月は四之宮と何やら相談するし、先輩も何やら考え込んでいたし生徒会もあるから問題無いらしい。


 雪羅と夜夢は買い物がてら帰宅し、舞さんと協力して受け入れの準備をしてくれる予定だ。


 俺は隠岐せんせと一緒にせんせの家に向かっている。

 というか、学校はもう帰って良いのか?

 まだ教師には授業後も色々あるんじゃないのかね?


「分身を残してあるから問題ない。」


 おお、分身と来たか!


 分身って忍者のアレだろ?

 有名なヤツ。

 

 なんでも、隠岐せんせの話では、今学校に残してあるのはあくまでも分身であり、意識があるわけでは無く、決められた行動しかできないらしい。

 元々、同僚ともほとんど親交が無く、ただ座っているだけであれば問題は無いそうだ。


 一応、会議の内容などを聞き取って伝えたり、簡単な受け答え程度の能力はあり、周囲からの認識も薄くしてあるからまったく問題は無いらしい。

 充分すげぇと思う。


 その後は、せんせの家に言ったんだが・・・本当に生活感の薄い部屋だった。

 最低限の家電に大きめのダンボールが4つ、これが隠岐せんせの荷物だ。


「これだけ・・・?」

「これだけ。あまり物を多くしたら、痕跡が残り過ぎて追手が撒けないから。」

「・・・」


 なんつーか・・・俺の家に越してきたら、もうちょっと生きるのを楽しんで貰うか・・・

 俺の家に来たら絶対に安全だし。


 つーか、






 絶対に守ってみせる。

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