第28話 あっはっは!  ざま〜みやがれ!

「それじゃ行ってきます。」

「「行ってきます。」」

「いってらっしゃ〜い。」


 週明け、舞さんに見送られて俺たちは登校する。

 舞さんは今日は大学の一時間目がないらしい。


 のんびりと行くそうだ。


 にしても、まだ今日で三日目なのに、もう随分と住み着いている位の感じに見えるな舞さんは。

 本当にマイペースだぜ。

 舞さんなだけにな!!


「主様、阿呆な事を考えてないでさっさと行きますよ。」

「あいあい。」


 辛辣ぅ・・・











「おはよ零士!二人もおはよ。」

「おはようございます零士さん。八田さんと九重先輩もおはようございます。」

「「「おはよう。」」」


 今日も今日とて校門前で待ってくれているのか。

 ありがたいこって。


 他の生徒もどうやら慣れた・・・ってわけじゃねーのか。

 こっちみて睨みつけているヤツいっぱいいるし。


 っと!


 俺は踏み出す足を空中で止め、しゃがんで靴紐を直すフリをしながら地面に落ちている物を拾う。


「おはようございます隠岐先生。他の生徒が踏んだらどうするんすか?」

「おはよう斬来。後から回収するだけ。九重と八田、それに暁月と四之宮もおはよう。」

「うぇ!?どこから!?っとお、おはようございます!」

「おはようございます・・・凄い、全然気が付かなかった。」

「「おはようございます。」」


 俺は振り向き、視線を背後にいる隠岐先生に言うと、隠岐先生は何食わぬ顔で挨拶をした。

 雪羅と夜夢は気がついていたが、暁月と四之宮はまた気が付かなかったようだ。

 流石は天才忍者だな。


 なんでこの罠を俺が知ってるかって〜と、隠岐先生と戦闘した当時、念のため調べたんだよね。

 といっても、漫画やネット情報が主な調べ先だったけどな。

 

 ちなみに、隠岐先生が使用したのは撒菱まきびしと言われる忍具だ。

 金属製のトゲトゲした小さな物で、これを踏むととても痛そうだ。

 

 しかし先生、これ毒でも塗ってあるかと思ったが、なんにも処理してねぇな。

 本当に殺す気あんのかねぇ?

 殺意が低いっつーかなんつーか・・・

 この違和感はなんだろうか?


 口では殺すって言ってはいるんだがなぁ。


 まぁ、いっか!

 なるようになんだろ。


「今日から活動だろ?偽装のためにそれらしい書物は、部室の棚にいくつか入れておいた。まぁ、眉唾な物だけど。」

「そりゃどーも。充分でしょ。」

「ならいい。」


 ま、そうだろうな。

 本物なんか入れる必要ないだろうし。


 なにせ、あの部室を使うのは、みんなその道のスペシャリストだ。


 部活の活動報告を作るくらい、資料なんかなくても問題ない。

 だが、なんだかんだで隠岐先生もノリノリなんだろうなやっぱ。


 前に想像した通り訓練のために失われた青春を取り戻そうとしているんだろうか?


 俺みたいに。


 

 さて、部活の時間まではどう過ごすか。

 いや、決まっている。


「斬来!今日は逃さねぇぞ!」

「やなこった!」

「ちっ!!みんな!捕まえろ!!」


 逃げの一択!

 だってめんどうだもん!!


 つ〜か、いい加減諦めてくんねぇかなぁ?

 別に誰と話そうが、親しくしようがそいつの勝手だろうに。


 毎放課毎放課飽きもせずによくやるもんだ。

 俺なら二秒で飽きるわ。


 









 ・・・さて、うまい具合に逃げ回って昼放課。

 さっそく部室を活用させてもらおうか!


 ルンルン気分で部室に移動する。

 勿論、逃げながらな!


 っと、


「あら?斬来くん?」


 先輩発見! 

 ここは利用させて貰おうか。


「先輩!あそこに行くんすよね?一緒にどうすか?」

「あらあら・・・ま、良いわ。一緒に行きましょう。」


 しめしめ。

 こりゃ良い風よけだ。


 お?

 良いところに追手(?)が来たな。


「見つけた!・・・って、結城会長と一緒かよ・・・」

「くそ!流石に声をかけれない!!」

「これ以上追えねぇぞ・・・先輩に変なヤツって思われたくないし。」

「「「「「「だよなぁ・・・」」」」」」


 あっはっは!

 ざま〜みやがれ!


 そんな風に悪い笑顔をしていると、先輩が呆れた様子で俺を見ていた。

 所謂ジト目って奴だ。


「人を好き放題に利用してまったく・・・あなた、ろくな死に方しないわよ?」


 あんたが言うんかい!

 そもそも俺がこうなってるのはどいつらのせいだっての!!

 誰が好き好んでこんなに目立つかってんだ!!

 

 まったく!

 プンプンだお!


 そんな風に考えていると、先輩は小首を傾げてなにやら考え始めた。


「それにしても、顧問が隠岐先生とは意外だったわね・・・というか、あの先生本当に存在感が無いから私でも気が付かない時があるのに、よく協力を得られたわね?」


 あ、しまった。

 そういえば、先輩、隠岐先生の正体を知らねぇんだった。


 ま、後で隠岐先生に詳しく言って貰えばいっか!

 あそこ部室をみんなで使う限り、正体を隠すのは無理だろうし。


 先生に自分で言って貰えばいっかな。

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