第19話 なんで分かったの?

 あ”あ”〜・・・ねっみぃ・・・

 アイツら、マジで手加減抜きだな。


 これ、俺じゃなかったら多分死んでるぞ?


 遠慮なく霊力を持っていきやがるし。

 これが単純な精気だったら、多分俺はミイラまっしぐらだな。


「主様、行きますよ。」

「ご主人様〜?早く〜!」


 玄関で二人が一緒に登校しようと待っている。

 こいつらなんでこんなに元気なの?

 こいつらもあんまり寝てないよな?


 ちきしょう、理不尽だ・・・













「・・・おはよ零士。今日も良い御身分ね。」

「零士さん、おはようございます・・・八田さん達もおはようございます。む〜・・・」


 今日も学校の前で暁月と四之宮が待っていた。

 朝から機嫌が悪そうだな。


 どうにかなんないものか・・・


「零士?ちょっと良い?」

「あん?なんだ暁月?」

「良いから!ちょっとこっち来なさいよ!」

「・・・まぁ、良いけど。」


 俺は暁月の方に近寄ろうとした。

 が、


「・・・あの、二人共離してくれる?」

「「・・・」」

 

 なんという事でしょう。

 雪羅も夜夢も離す気ありません。


 それを見て暁月のこめかみがピクピクしてる。

 これ、俺が八つ当たりされるんじゃないのやだ〜〜〜!


「すみません九重先輩と八田さん。ちょっとお姉ちゃんと私と零士さんだけにしてくれませんか?」


 見かねた四之宮が口を挟む。


「「・・・」」


 しかし二人は無言だ。

 どうやら、徹底抗戦するらしい。

 仕方がねぇな。


「二人共、ちょっと離してくれ。暁月達の話を聞くから。先に校舎に入っててくれねぇか?」

「・・・はぁ。」

「仕方がにゃいにゃ〜。」


 渋々離れる雪羅と夜夢。

 そのまま校舎に向かって歩いて行った。


「・・・で?なんだ?」

「ありがと・・・ちょっとこっち来てくれる?」


 手招きする暁月に従い、校門から入った後少し移動し、人気の無いところに行く。


「ここなら良いかな?」

「うん。他に人いないしいいんじゃないかな?」


 暁月と四之宮がお互いに頷いている。

 一体、なんなんだ?


「ねぇ零士?ちょっとお願いがあるんだけど・・・一緒に同好会作らない?」

「同好会?なんでまた。」


 率直に言ってめんどくさい。

 できればやりたくない。

 

 そんな空気を感じたのだろう。

 四之宮が俺を見た。


「零士さんが同好会に入るメリットを教えます。」


 ほう?

 メリットがあるのか。

 なんだ?


「まず、文化祭や体育祭で部活が無いからって面倒な仕事が振られないらしいです。」


 ふむふむ。


「その上で、なんと上手く場所を割り振られれば、校内で逃げ場ができます。」


 !?

 そ、それは魅力的だな・・・

 先輩からのはあくまでも昼時だけだし。


「そして何より・・・『普通』の学生は、だいたい部活をやっているでしょ?零士さんが部活をやっていないのは、自分の力がバレないようにですよね?」


 あたりだ。

 間違って運動部にでも入ろうものなら手加減ミスったら終わりだし、文学系でもしがらみが増えて面倒だからな。


「だから、あたし達で同好会を作ろうってことなのよ。そうすれば、力の事は気にしなくても良いし、『普通』でいられるじゃない?」


 むむ!

 それは魅力的では無いかね?

 特に普通ってのは良いな!

 

 それに、場所次第では、放課に逃げ込める。

 悪くないかもしれん。


「・・・仮に同好会を作るとして、なんの同好会にするんだ?ある程度は活動報告しないといかんのだろ?」

「勿論よ。あたし達の同好会は、ズバリ!【オカルト研究会】よ!」


 オカルト・・・研究会?


「だって楽チンよ?あたし達の知識なら、そもそも妖魔や妖怪なんか調べなくてポンポンと出てくるし、その時間を使ってのんびりできるじゃない。」


 なるほど。

 そりゃ盲点だったぜ!

 これ・・・悪くねぇんじゃね?


「わかった。なら、どうすりゃいいんだ?」

「同好会は3人以上で、10人以上いれば部活となるらしいです。顧問の先生は探す必要がありますが・・・今日のお昼に職員室で探してみようかなってお姉ちゃんと話してました。」

「だから今日の昼放課あけておいてよ?一緒に行ってそのまま届け出するから。」


 ふむ。

 ま、この先の面倒事を減らすためか。


「りょ〜かい。じゃ、そうすっか!」


 とりあえず、昼までどうせ来るであろう男子達を躱して過ごすかね〜。













 そして昼放課。

 職員室の前でまさかの展開が待っていた。


「・・・零士、あんた話したの?」

「いや、俺は何も言ってねぇ。」

「どうして・・・」


 そう、そこにはなんと、


「同好会作るんやろ?はよ行こや。」

「うっふっふ〜!夜夢ちゃんからは逃げられないよ〜?」


 雪羅と夜夢が待っていたのだ。

 なんで分かったの? 

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