第75話 闇の取引

075 闇の取引


実験は結果的には失敗だった。

子供たちは、死にはしなかったが、記憶の損傷が大きいことが分かったのである。

勿論、弥縫びほう策として、直ちに、似たような記憶を植え付けたのだが。

ゆえに、彼らは誰の為に力を願ったのかが曖昧になっていた。

本当は、妹ためだったものが、困っている女の子を救うためのように、というようなブレが生じてしまったのである。

やはり、子供の場合は、もっと濃度を薄める必要があるようだというデータを得たのである。


「これでは、男の子ばかりが一人前になることになるが、女の子はどうしたらよいだろう」

柄にもなく、人々の事を気遣う男。

「御主人様、女の場合は、体を売るなどの方法がございますので大丈夫です」と奏氏。

「勿論、男の子の場合でも可愛ければ売れますよ」


身も蓋もない発言だった。

まさにその通りであった。スラムの女などとは、そうなる運命なのだ。

そういう意味では、男の場合は、盗人、ギャングなどだ。

其れしか生きていくことはできないのだ。

そして、どちらもそれらを支配する組織にすりつぶされて死んでいくことになるであろう。

ここには、人権も教育を受ける権利などないのだ。


「奏さん、そこを何とかできないでしょうか」と下手にでる男。

「まさか、私という者がおりながら、浮気相手が必要なのですか?」すぐに、ウソ泣きの涙が出るところがパーフェクトソルジャーだった。

で雇うとか」

「メイド、執事は十分います」

どこかの貴族家から、全員拉致されてきたものがいたのである。

そして、屋敷の護衛には、ゾンビやバンパイアがいた。

次々と、盗人たちがその仲間になって増殖している。

「では、売春婦として、街で情報収集をさせてはどうでしょうか」

「さすがにそれは・・・」


相手が引き気味であることをやっと悟る、奏。

彼らはもともとソルジャーなので、なんでも相談室ではないのだ。


「そうですね、ではご主人様のためにも奏はがんばります」と意味不明の笑顔でごまかす女。

彼女らは、男に嫌われてはならないので何とか、なだめすかす手段を講じる必要があったのである。


「わかりました、とりあえず、実験的に50名ほどし、魔術士特性などがないか調べてみましょう。あれば、それを開花させる方向で。なければ、狙撃兵として訓練いたしましょう」

「狙撃兵?」

「御主人様は一生懸命、銃身を作っておられましたから、少しライフル銃という古めかしい武器を作りました。まあ、この世界の文明では少し早いですが、大丈夫です」

何がどう大丈夫なのかは不明だが、彼女らは何でも相談室ではないのだ。


彼女らの文明レベルでいうと、ビームライフルを作りそうだ。

そういう人々なのだ。

そういえば、ロボットがもっていたのが、それだった。

そして、剣でいえば、あの光る剣、なんとか戦争で使われていたようなジェ〇イが使っていた剣を作るだろう。


「銃弾は、火薬でなく魔術で飛ばせば問題ないでしょう。その方が音が、小さくてサイレントなライフルになると思います」なんだか、すべて解決していくのである。

火薬を使わないため、火炎も出ない。まさにサイレントハンターの出来上がりというわけだ。実際は爆発を起こすので音はするが、我々の世界の銃とは大きな違いがある。

衝撃もほぼないので、女子供でも射撃できるであろうとのこと。


こうして、スラムの女の子が50人ほど収容される。

だが、選別対象は、やはりかわいい女の子であった。

彼女たちは、きれいに洗われて、睡眠学習をさせられる。その間は栄養が投与される。

その中には、ごく微量の人間革命が混ぜられていた。微量であれば、健康増進剤(プロテイン?)のような効果だけで終わったのである。


50人の可愛いいそして、可愛そうな狙撃兵が出来上がっていく。

こと戦闘に関しては、パーフェクトソルジャーの彼女らは、非常に効率がいい。


屋敷の訓練場には、射撃場も作られ、訓練が行われる。

少女たちは、スラム時より、健康な体を手に入れていた。栄養状態がよくなり、『人間革命』が筋骨を強化した結果である。そして、病原菌もすべて根絶された、クリーンボディになったのである。そう、少し過去の記憶が思い出せなかったりするが・・・。そう、つらい思い出ばかりだったので思い出すのはつらいだろうから丁度良かったのである。


そして、夜には、洗脳睡眠学習、食事時には、糧を与えてくれる、ご主人様をあがめるように、しっかりと教育されていく。こうして、忠誠心をもった狙撃兵が完成されていく。

魔法特性を持った少女たちは、親衛隊とともに迷宮へと訓練にでることになった。


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