第68話 20階層、扉の奥の戦い

068 20階層、扉の奥の戦い


「一応確認しておきたい。出てくるモンスターの種類と数はどうだ」

「は!オークジェネラルとその取り巻きが数匹だ、こんな階層は誰でも突破できるんだよ」

狂暴そうな男が鼻で笑う。

「なるほど、このメンバーがいれば簡単に突破できそうだな」

「当たり前だ、もっと奥に行くんだろ、行くよな」それは、奥で事故に会えと暗示しているとしか思えない誘いだ。


「そうだな、ボス戦で疲れなかったら、行ってもいいぞ」

「馬鹿野郎、疲れるわけねえんだよ、俺たちがパパっとやっちまうからな」

勿論、言外にお前たちもパパっとやってしまうといっているように聞こえる。


もう一つのパーティーはその意味を感づいており、いかにして安全に逃げるかを考え始めている。


何といっても、メルキア冒険者ギルドでも最悪のチームの一つとされているのが彼らだ。

「ここまで来てもらって、申し訳ないが、戦力的には、足りているようだ、彼らも分け前を自分たちで独占したいと思っているようだが、この部屋に入らないという選択肢もあるぞ」と珍しく男が話を振る。


「そうだ、そうだお前らは邪魔だ。」狂暴な男がそのチームをにらみつけている。

「しかし」と別のチームのリーダー。

「勿論、入るのはお前達の自由だ、止めはせん、しかし入れば二度と出ることはできんぞ」と男。

不穏な言葉はさらっと入れられた。

「ごめんなさい、私、今日はどうも調子悪いから、入らない」

冒険者の女が直感で選び取った。

「馬鹿野郎、こんなうまい儲け話はないんだぞ」とリーダー。

「でも、彼らににらまれたらこの街から最悪でないといけないのよ」と女冒険者。

痴話喧嘩が始まる。

儲けをあきらめきれないリーダーらしき男。

「じゃあ、セーラを残す、他の4人は大丈夫だな」

「ああ、問題ねえ」とその仲間。

6人のうち二人の女を残すようだ。

狂暴な男が真っ赤に血走った眼でガンを飛ばす。

まさに、目で殺すだ。

「何とも、決断しきれないのだな、まあいいだろう」と男。

「ちょっと待て、そっちの女2人が減るんだから儲けも減ると考えていいんだな」

「そこらへんは、お前達で話をつけろ、金貨は10枚だ」と男。そもそも男にとっては、金貨が100であろうと、200であろうと関係ないのだ。


勿論生き残っていればという前提の話だ。


「さあ、先生方お願いしますよ」と男。

狂暴チーム6人と優柔不断チーム4人が入っていく。

扉は閉まり始める。

そして、男のチーム4人が入る。

ズズズド~ン。脅迫的な音を立てて扉が閉まる。


周囲に青い炎がともっていく。

そして奥から、予想をはるかに超える兵団が現れる。本来は、6人程度で入ることが推奨されるのだが、これほどの人数が入ると、それに応じて、対応する数が爆発的に増えることが予想できたのである。


オークジェネラルに率いられたオークソルジャーの部隊が12(総兵力600)。

そして、オークサージェントの親衛隊12名とオークキングしかも通常のキングの1.5倍の大きさ(当社比)が登場する。最悪の展開であった。

有能な冒険者も唖然とする数の暴力。


「なんだ!ありゃ!」

「先生早く、敵を攻撃してくださいよ!」

やはり最悪のエクストラハードを引き当てたのである。

それはもはや戦争だ。

チーム凶悪の一人を担ぎあげてオーク部隊に投げつける男。

「防御を優先!俺が殲滅する。」


凶悪の塊のような大蛇丸を抜き放つ。

妖気が立ち昇る恐るべき刀へと成長していた。

その妖気に反応して男の目が金色に光り始める。

すでに九頭邪龍八岐大蛇に名を変えた刀の妖気に当てられているのだ。


「おおお!風刃竜巻切り!」日輪の改良版がこれらしい。

全周囲攻撃で回転しながら敵陣深く進んでいく。

その刀は当たるを幸いすべてを切り裂いていく。


そして、真ん中まで進んだ時、雷の魔法が大さく裂する。

「葬雷」すでに、叫ぶだけだ。火眼金睛の目がオークキングをにらみつける。それはもはや魔獣対決だった。

バチバチバババババババババン!一斉に、辺り一面雷が走りまくる。

それは、まだ生き残っていた狂暴な男すら焼き殺す。


オークキングはオークサージェントの親衛隊が折り重なるようにして守った。

オークジェネラルはさすが将軍だった。生きていた。

辺り一面豚の死体だらけだ。


オークジェネラルの一体がオークキングとの間に割って入る。

「秘剣、一の太刀」ジェネラルの頭が割れる。

王危うしとみた将軍が集まってくる。

だが、男の秘剣、燕返し飛燕が一瞬で数体のジェネラルの首をはね飛ばす。


その時、キングに折り重なっていたサージェントがはじけ飛んだ。

「AAAAAA!」キングは怒りに震え、意味不明の叫び声をあげたのだった。



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