第8話 奈落へようこそ
008 奈落へようこそ
涙は枯れ果てて、心が死んでいた。
ボロボロになりクタクタに疲れはて、泥のように眠る。
だが、朝はすぐにやってくる。
粗食だけで、あと何日生きていけるのだろうか。
必死にツルハシを振り、岩を砕く。
何を砕いているのかすら、わからなくなる。
坑道の中は、蒸し暑い、喉が渇き、腹が減る。
もともと、腹は減っていた。
多くの囚人たちは、俺の同類だ。
遠からず、デウスの世界に行けるだろう。
俺は、デウスに嫌われているから、地獄だな。
だが、心配は無用だ、ここが地獄なのだ。
生きながら地獄で焼かれているのだ。
苦しめられているのだ。
これが、奴らの狙いなのだ。
俺は、そこに何があるのか知っていた。
鑑定は、知識があるものに関しては、有用だ。
俺は、鉄に関する知識が深いようだ。
武器を鑑定すれば、非常に細かい部分まで書かれている。
つまり、武器のもとになる鉄もそれが通用するのだ。
だから、無意識にそれを発見して、掘っている。
鉄鉱石の鉱脈が見えるといっても過言ではないのだろう。
意識がはっきりせず、それを行っているのだが。
発見してどうしてやろうなどとは考えてもいなかった。
だが、無意識がそこを掘らせていただけである。
そして、鉱脈が現れる。
だからどうということはない。
俺は、無間地獄で岩を掘るのだ。
俺は生きながらすでに幽鬼なのだ。
その時、俺は突き飛ばされた。
「なんだ」
俺は、自分の掘っていた場所に、子供がいるのを見た。
小さく太い子供だった。
「おい小僧、なんで鉱脈を発見している」
「小僧?貴様の方が小さいだろう」
子供には、ひげが生えていた。
この世界の子供はひげが生えるのか?
「あ~ん」
太った子供が
俺は、腹が減ってすでに意識がかすんでいた。
「小僧、腹が減ってるのか?」
当然だろう、ここの食事は肉体労働を続けるには、少なすぎる、早晩皆栄養失調で死ぬことになるだろう。
「食え、干し肉だ」
俺は、それに吸い付いた。
そして、寝ころがりながら、ちゅうちゅうと吸い付いていた。
干し肉は固いのだ。
しかし、塩味は貴重なミネラルだ。
「こっちは干し芋だ」
俺は食った。
俺はしばらくそれらの食い物を吸って転がったままだった。
「なぜくれた?」
「小僧、なぜそこを掘っていたんだ」
「そこに鉄があるからだ」
「なぜわかった」
「鑑定だ、鉄鉱石の流れがそこに見えていた」
「儂は、ドワーフのゴブニュ」
「俺は、ウッソの奴隷、ツクだ」
「そうか、捕まった口か」
「あんたもか」
「いや、俺はここで掘りたいからいるだけだ」
ドワーフ族はこの世界、『フセイザラーク』に存在する。
鍛冶や戦闘が得意な種族で、亜人とされている。
人間との混血も可能とされている。
「お前の目は使えそうだ」
「俺はもうじき死ぬだろう」
「じゃあ、死ぬまでこき使ってやる」
ひげを生やしたおっさんだった。
「よろしくな。ツク」
「腹減った、おっさん」
「ここの食糧費は、タナケーカの子分に横領されてるからな」
「そうなのか」
「あたりまえだろう、ツク。この世界に道徳心など求めるのが間違っているのだ」
「・・・・・」
「そこらへんの事も教えてやろうツクよ」
「頼むゴブニュのおっさん」
「ほお~、かなりへこんでやがるな」ゴブニュが笑顔を見せてくれた。
捨てる神あれば拾う神あり。
一筋の光明が見えた瞬間なのかもしれなかった。
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