第9話 ゴブニュ
009 ゴブニュ
次の日からは、ゴブニュが迎えにくることなった。
ゴブニュは、掘り出した資源の一部をタナケーカに収めることで、ここで自由採掘を行っている。かなりな変わり者だった。
だが、確実に腕のいい採掘者であったので、顔が利いた。
「ツク、あれが食糧庫、あっちは武器庫だ」
坑道までの道でも、ゴブニュは俺にいろいろと教えてくれる。
奴には、金。奴には女。奴には酒。届けるべきものなども教えてくれる。
「ここは、地獄だが、地獄の沙汰も金次第だ、覚えておけ」
「お前、鑑定で鉄がわかるとなると、相当そっちは詳しいのか」
「わからない、なぜだかわかるが、なぜわるのかわからないんだ」
「記憶喪失か」
「わからない」
「つまり、教えれば、わかるようになるということだな」
「そうかもしれない」
「それでいい。お前はまだ若い。いつも死ぬなんてことは言うな」
「ああ」
「今日は、鉄を掘る。昨日の鉱脈だな」
「ああ」
「それと、今日からは、そこでキャンプする」
「だが、食料が」と俺。とにかく食料が必要だ。
「問題ない、俺はアイテムボックスを持っている、これがあれば、それだけで飯を食っていけるスキルだ」とゴブニュ。
「!」
「何を驚いている、これがあれば運送屋をおこなえる。往復で荷物を運べば、稼ぐことができるんだぞ」
「そうなのか?」
「まあ、記憶喪失だから、知らんかもしれないがそうだぞ」
「!!」だが、スキルの所持を明かすわけにはいかない。
「ツク、お前の鑑定では、鉱脈を発見できるとすれば、ここでも十分生きていけるぞ」
「え?」
「当たり前だろう、やみくもに掘るよりそこを掘れといった方がはるかに効率がいいだろう」
「なるほど」
「だが、そこまで行くやつがいないから、鑑定は無能扱いされる」
「・・・」
「心配するな、鉱石の事は儂がみっちり、死ぬほど教えてやる。儂が必要としているからな」
「わかった。鉱石の鑑定士になるということか」
「そうだ」
こうして、俺は、太っちょゴブニュと昼夜を共にし、石をほることになった。
ゴブニュのアイテムボックスには、掘り出した鉄鉱石が山ほど入った。
魔力を増やせば、もっと入るらしいが、ドワーフ族の魔法適正は低いらしく、これ以上は増えないという。
「さすがに、水浴びしたいな」
「そうか、儂は全く気にならない」
ドワーフは汚くても気にしない種族のようだ。
幸いにして、食料を気前よく出してくれたので、かなり健康状態は回復した。
ゴブニュには、頑健のスキルがついているので健康なのであろう。(鑑定の結果でわかった)
久しぶりの地上の空気はこんな腐った世界でもうまかった。
「おお、久しぶりだなおっさん」
「ああ、ずいぶんと掘れたんでつい熱くなってしまった」
「奴隷の貴様も大変だな」
「いえ」
「ここへ出してくれ」
そこは、産出した鉱石を保管する倉庫だ。
ゴブニュはアイテムボックスから取り出していく。
それは小山を作り出した。
「すげえなおっさん。ウッソ様もお喜びなさるだろう」
「こいつは使えるんで儂の宿舎に泊まらすぞ」
「それはダメだ、こいつは独房だからな」
「だが、こいつには、鉱石の勉強が必要なんじゃぞ」
「それは穴の中ですればよい」
「いいですよ、ゴブニュさん」
「そうか?まあ、10日も一緒だったんだからな、それもありだな」
「ええ」
「おい、こいつには、ちゃんと食事を与えろよ。かなり効率が違うんだからな」
「わかったよ、おっさん」
俺の食事は飢え死にコースから何とか生命維持コースに修正された。
鉄鎖のアクセサリーは鍵付きだ。
そして、俺の部屋の扉(鉄棒の格子)だが、鍵がつけられている。
独房だが、前は見ることができる。
横は、石壁で仕切られている。
何とかここから食料倉庫に行くことはできないか。
それが今の命題である。
知らず知らずのうちに俺は戦いを始めようとしていたのである。
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