第78話 不敬罪
078 不敬罪
なぜこのようなことになったのか?
そもそも、人を借りに来たギルド職員は、偏見を持っていた。
20階層しか突破していない冒険者など大した相手ではないと。
そして、自分たちには国王令があるのだと。
だが、その男は、そもそも協力などするはずもなかったのである。
売り言葉に簡単に食いついた、相手。
しかも、貴族相手に剣を抜くなどという暴挙にでるとは予断があったのであろう。
そして、いま、通りで決闘を行うおうとしているのであった。
「はっきりといっておく、貴様は貴族たる儂に向かって剣を抜いた。万死に値する」
「ぬかせ、偽貴族が!」さすがは元冒険者である。怖いもの知らずである。
街の警備兵が駆けつけてくる。
「双方とも剣を引け」警備兵が怒鳴る。
「黙れ!儂は剣を抜いてはおらん」
そう男の手には、武器がなかったのである。
「それに儂は貴族だぞ、その無礼者をとらえよ!」
勿論この国の警備兵なので、ギルド職員を知っていた。
「貴族様、お引きください。この国の貴族では無いでしょう」
「だから何だ!貴様も無礼だぞ」
「これ以上の騒乱は許されません、逮捕しますよ」
「ほう、それが本音か、剣を抜いている方ではなく、儂を逮捕するとぬかしたな、お前達は皆そうだな、許さん!許されんぞ!」彼らもまた、難無くトリガーを引いてしまう。
なんらかの引き金が引かれてしまった男は叫ぶのである。
「来たれ!我が化身よ」それは、単にアイテムボックスから出すだけの仕儀であったが、あくまでも召喚の態を取ろうとする男だった。
鞘から何かのまがまがしい気配が漂い出ている。大刀。腰に刀を佩いているのに、なぜそのような危険物を呼び出すのか。
「見物人どもに告げる、死にたくなかったらもっと離れよ」
妖刀九頭邪龍八岐大蛇、それは、すでに一つの意思を持っている。
浪漫好きの女が、バンパイアの核からパイロヒドラの核をセットしてしまったからである。
「本当に逮捕するぞ、貴族といえどもだ」
「もう遅いわ、貴様らは、欠片も残さず消し去ってやるわ」
「まあ、大変!」その時女が飛び出してきた。
それは、周囲の状況も顧みずに暴走を開始し始めた男を外界に見せてはならじと出てきたのである。
女の細腕が男の手をつかんだ。決して鯉口を切らさぬために。
「ぬ!」男は自分に大きな自信を持ち始めていた、召喚時のおそらく100倍は能力が上がっているはずだった。しかし、手は何としても刀を抜くことはできなかった。
「御主人様、少し我慢をしてください、きゃつらは必ず捕まえて、拷問し、抹殺しますので」
「しかし」
「御主人様の狙いは勇者一行なのではなかったのですか」
そういえばそうだった。かもしれない。
「どうした、女の影で隠れているのか?」
奏は、ゆっくりと近づく。
奏の指が、剣をはじいた。キーンと音がして、職員の手から剣が跳ね飛ばされる。
その瞬間に恐るべき速度の足払いが男を薙ぎ払う。
「下郎、御主人様に無礼が過ぎましょうぞ、のちに必ず報いを受けることになりますよ」
その手には、男の剣が握られていた。その剣は一瞬で粉々に砕けた。
それは絶大な
足首を砕かれた職員は、警備兵に肩を貸されて去っていった。
「今の技は!」
「まあ、御主人様、今晩ベットで教えて差し上げますから、お怒りをお沈めください」
男は毒気を完全に抜かれてしまった。
初めて、自分が大変な者たちに目をつけられたことを知ったのであった。
ギルドでは、けがをさせられた職員が青い顔をして戻ってきた。
足首を粉砕骨折させられていたのである。
治癒魔法をかけてもらうが、簡単には治らなかったのである。
この世界の治癒魔法は、勿論別の神の名を唱えるのだが、その事実が隠ぺいされているため、効力が弱い。そういう意味では、男は本当の呪文を習ったので威力が数段上となる。
「あの似非貴族が、儂らを怒らせたらどうなるか思い知らせてやる」
ギルド長は怒り心頭である。
「国王令のことを伝えたのか?」近衛隊長(今回の兵を仕切る隊長という意味)。
「この国の貴族でないから知らんと」
「なんという無礼な」
「どうしたんだよ、おっさんら」それは勇者たち高校生である。
「勇者様方は宿で休んでいれば結構ですので」
「おっさん、この街には、売春宿もあるって聞いたぞ、俺たち、いきてえんだけど」
「訓練で、必要レベルをあげれば許可いたしますが、今は控えてください」
「チェ~」
「最低!」元女子校生達は、声を挙げる。
「王女様に言いつけたらいいんだよ」
「おいちょっと待てよ」彼らはまだ、それがアクトレスであることに気づいていないようだった。
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