第79話 デイウォーカー

079 デイウォーカー


玉1号。彼女はパーフェクトソルジャーだったが、なんらかの影響で、精神を汚染されてしまう。おそらく、大蛇丸に装着された核の処理が、彼女により行われたのだが、その時に影響を受けてしまったと思われる。


玉1号は、男の記憶から作り出された幼女ロリ型決戦兵器である。

もともと、1号の呼称はなかったが、汚染された玉を処理するために、2号機が計画され、製造が開始されたため、1号という呼称を付けたのだが、結局、処分されたののち復活してしまったのである。

それは単に、その原始生物の能力の賜物であった。


ほぼ不死で不滅の生物ヴァンパイアである。

かなり以前からこの星に存在した生物のようである。

戦闘の末、核に封じられたのである。


誰に封じられたのかは不明だった。おそらくこれほどの面倒くさい生物であれば、奏は使わなかったに違いない。ゆえに、彼女らが封じたものではない。


その玉1号はヴァンパイアの通説的な弱点の一つ、日の光を浴びても、焼けたりしない。彼女は上位の個体であり、その弱点を克服していたというか、もともと弱点ではなかった。

彼女は、デイウォーカーである。

勿論、ヴァンパイアなので夜はたいへん得意である。


そして、今、ギルドの建物の侵入していた。

無礼な職員を生かしておくわけにはいかないというのが、彼女らの一致した意見であった。

職員は、ギルド内の診療所で寝ていた。

夜なので、職員はほとんどいない。


ギルドには、金庫もあった。

それは、数名の職員しか開けることはできない。


「開けろ」玉1号の赤い目が光り、命じれば、その職員は抗うことはできず金庫を開けた。

金品を一切合切袋に入れる職員。

その袋を受けとる1号。

彼女の目は人々に命令することができる。いわゆる催眠術の一種である。

「帰って寝て忘れろ。犯人は、マキシだ。それを思い出せ」

「はい」職員はそのまま帰っていった。

一方足の折れた職員(マキシ)は、杖をついて歩いていた。

やはり赤い目に命令されてどこかに向かって歩いて行ったのである。その姿は街の人々の何人かには目撃されていた。


次の日ギルドでは大変な事件が起こっていた。

金庫が破られたのである。

そして犯人は、足首を折られて療養していたはずのマキシ(男に無礼を働いたギルド職員の名)だという。

しかし、マキシは金庫の開け方は知らなかったはずだった。

金庫を開けることができるのは、ギルド長、副ギルド長と会計であった。

そして、金庫を開けたのは、会計の男だったが、犯人はマキシと言い張るのである。

そもそも、会計の男の家には何もないのだ。しかも、マキシは行方知れず。

会計の男は非常にまじめだった。

そして、ギルドの金庫室自体は、深夜は外部からの侵入は難しい。

自然と犯人はマキシということになる。


これをヴァンパイアの玉1号はいとも簡単にやってのけた。

会計の男に扉を開けさせ、金庫を開けさせ、マキシを連れ出したのである。


彼女の目には強制力がある。心の弱い人間では抗うことはできない。

ギルド長は、今日、近衛隊たちと、鍛冶屋に文句言いに行く準備をしていた。

国王令を見せてひれ伏させるためである。

しかし、それは脆くも崩れ去ったのである。


「ギルド長、失態も甚だしいぞ」と近衛隊の隊長。

「すいません、一体何がどうなっているのか、すぐにマキシを探させます」

「そんなことはどうでもよい、勇者たちの水先案内人をどうするかなのだ」

「そんな、お力をお貸しください」とギルド長。

「何を言っている、自分の失態は自分で何とかするものだ」


「おい、副ギルド長、例の鍛冶屋に行くぞ、ついてまいれ」

「ギルド長すいません、ですが、マキシは街の外に出てはおりません、それだけは確実です」

「わかった、副ギルド長、後は任せる」

「はい、わかりました」


近衛隊が数人と副ギルド長達が鍛冶屋にやってきた。

「なんだ、昨日は命拾いしたな、今日は続きをやりに来たのか、今日の儂は気分がよい」

「国王令を知らんのか」近衛隊の隊長は金属の物体をかざす。

それは希少金属オリハルコンの塊である。石のようにも棒のようにも見える。

「ほう、それが国王令?オリハルコンの塊が出土したくらいのものであろう?それが国王の身代わりなのか」

「無礼者め!」

「貴様こそ、無礼であろうが、儂はこの国の貴族ではないといっているのだ、この国の王の命令を聞く謂れがないといっているのだ。出すものをだせといっているのがわからんのか」


「ふん、金が望みか」

「ああ、金が望みよ、間違ってもこの国の貴族の位は欲しくない」

「貴様!」


「足元を見てといわれるのも癪だ、金貨100枚で引き受けてやろう」

「全然、足元を見ているだろうが」

「なんじゃ、この国は貧乏の国だったのか、100枚程度右から左の額であろうが」

「嘘をつくな、貴様にもできんだろうが」


しかし、机の上には、金貨が数百枚も乗っていた。

これは、ギルドの金庫から奪われたものであったが、そんなことは誰も知らない。

「儂にとっては、端金はしたがねだったが、この貧乏くさい国では、無理というものか」


「まあ、今日の儂は気分がいい、金貨50枚で請け負ってやろう」

そこには、底知れない悪意が隠されている。


金貨1枚は10万円程度の価値があると思われる。

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