第39話 エリーズ

039 エリーズ


「すまないが、あなたはどちら様かな」ここは、紳士たる俺が声をかける。

「私は、この施設の管理AIでございます」

「管理AIとは何のことだね」

「失礼しました。ご主人様の意識内でご紹介させていただきたかったのですが、ご主人様はこちらでご就寝されませんでしたので」


聞くだに、何か期待を抱くような表現をしているようにも聞こえるが。


「ご主人様が期待されているような機能もございます」

「!!!」

あるだと!


「エリーズ様、何ということを仰っておられるのですか!無礼者、成敗してくれる」

「御主人様に攻撃することは許されません」

「何を言っておられる、私は、騎士としてあなたをお守りするのです」

「私は管理AIです、エリーズではありません、有機型管理モジュール 識別番号XXXXXX-13です」

有機型管理モジュール?

恐らく、すべての記憶があったしても、この言葉を理解することはできなかったであろう。それほど、難しい言葉なのは直感的にわかった。

「失礼しました、以前の情報から、この顔を使いましたが、この顔が誤解を生んでいるようでございます」

13号はそういった。

場の雰囲気を読んで反応しているだろう。

「これでどうでしょうか。」

それは、どこかで見たアクション。

顔を両手でクシュクシュすると、別人の顔になった。

「おお!鮎川奏!」それは国民的アイドル鮎川奏だった。

これはすごい!その技は一体はなんだ。思い出せない、誰の技だったのか?

そのアクションは・・・・あれだきっとあれだ!


凄いぞ!管理型AI。俺はお前が大好きだ!

そうじゃねえ~よ。


エリーズ様!どっかで男が叫んでいるが、そんなことは知ったことか。

俺は、管理AIからこの施設の機能を聞かねばならない。このムサイ男たちを早く追い出さなくては!


「貴様を切る!」

「兄貴、俺を追い出そうとしてますよね」

「鍜治場から一歩も引かんぞ!」

それぞれのムサイ男は、目をつり上げている。


「わかった、まず誤解を一つずつ、解決していこうではないか」

「誤解があるのか?」


「話し合えば分かり合える」はず

「お前がそれを言うか?」


「まずは、錬金炉についてはどうだろうか?」

「それについては、問題ない、ただし、見たこともないような装置なので正直使い熟せるかどうか不安がある」

「魔道炉については、メカニカルアシスタントをご用意できます。ただし、ご主人様が必要でありましたら」鮎川奏は声すら再現していた。

「奏、ご主人様とは、」

「勿論、ご主人様です。」奏は俺の腕をとって、下から見上げるあざとさナンバーワンの上目遣いである。


グハ!俺の心が破壊される。何という破壊力、そして、腕に柔らかい何かが当たっている。

これは!

「以前の師匠が、主人ではないのか」

「はい、正式に登録をされておりませんでした、不法占有者ということになります」

「そうなのか」

「はい、御主人様が正式登録されました。800年ぶりに」


その言葉を聴いて俺は氷ついた。

深い、闇が深すぎるではないか。

彼女はかわいいのに、800歳以上なのだ。

「心配いりません、コールドスリープから、先日目覚めたばかりですので、800年経過していたにすぎませんよ」とニコリとほほ笑んでくれる。

「・・・そうだな、全く問題ないな」

俺は笑顔に癒された。

それは、先史時代である。

ほぼ不明の歴史の中に存在しているのである。

これがどういうことを意味するのか?

そんなことを考えても無駄なことだ。

そう無駄なことなのだ。


「アシスタントは、やはり有機型なのか?」

「御主人様が望まれるのでしたら」そこには、別の物でも用意できるという自信が含まれている。

「では、頼む」

「数日、かかります」

「ゴブニュの件は解決したな」

「うむ」ゴブニュの顔が少しにやけている。


「エリーズの事だが」

「先の姿は、以前の占有者の妻の様です。しかし、不法占有者でしたので、情報は確認しておりません。占有者は、ここの工場区画の一画で金属や薬品の研究していましたが、詳細は不明です」

「お前は、動かなかったのか」

「はい、私は、のアシストAIタイプですので、所有者が登録しないと動けないのです」

俺の場合は『』が光ったので、その方法をうまく起動してしまったのであろうか?


「エリーズ様」

「アルテュールの方に聞いた方がよいか」


「私は、彼女を守る騎士だった。前教皇の側室だったのだ」

「・・・」予想通りの展開がそこには待っていた。


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