第38話 研究室

038 研究室


アーマベルガー王国の某都市のはずれ。

ここに、脱獄囚たちは、隠れ家を作っていた。

本当は、国外へと逃亡する方がよいのだが、ツクはそれを肯定しなかったのである。

まず初めに、国外に出るために、偽のパスポート(身分証)が必要なこと。

そして、ツクの師匠の例の話にでてくる女とその家族を保護する必要があったのである。

しかし、その女の名前は聞いたが、それだけではなんとも情報が足りなかったのである。

まず教会関係者からの情報等が必要だった。


そして、教会総本山は、王都に存在するのである。

今王都は、例の惨殺事件の容疑者のを追っているがようとして行方をつかむことができていない。

惨殺事件には、生き残りがいなかった。すべての人間にとどめが刺されていたのである。


「しかし、これでは、せっかくのミスリル銀の武具が作れないではないか」いつもは穏やかなおっさんのゴブニュが顔を赤くして怒っている。

「おっさんはなぜそんなにこだわっているんだ」

「ああ、それは言えんが、最高の武器を作ることが必要なのだ」

「そうなのか、だが、鍛冶の施設がないと無理なのだろう」

「この村にあるものでは、全くレベルが足りないのだ」

「そらそうだろうな」

この村にあるのは、鍛冶屋だが、農具の修理や包丁程度しか作らないのだ。

「儂は、国に帰るぞ」

「ああ、それなら仕方ない、だが、俺もおっさんから鍛冶習いたかったな」

「じゃあ、一緒にこいよ」

「しかし、片方の指輪がないとあれが開かないのでそれはもっと困る」

それは、ルーン真言の本である。


「ところでおっさんの腕ってどうなの?」

「お前、儂を誰だとおもっているんだ」

「ゴブニュのおっさん、奴隷鉱山で石を掘る変わり者、腕は不明」

「そうだな、その通りだ」

やはり、何かを話すことができないのだろう。

それは、アースも同じらしく、彼も奥歯にものが挟まったような物言いである。


「まず一つはっきりさせよう、鍛冶はできる!」と男。

「どうやって、魔力炉が必要だぞ」とおっさん。

「ある、必要な規模かどうかは不明だがな」

「ところでアースさん、本当の名前を言ってよろしいか」と俺。

彼は、アースという名前ではない。


「ツク!」

「まあ、一応皆仲間だ、そこはオープンにしないのか」

アースは、観念したような顔になった。

「アルテュール・ド・ミシェーレ」

「おい、お貴族さまかよ」マリウス。

「元だがな」アルの顔色は昏い。


「で、聞かれたくないので、さっきの鍜治場を紹介しよう」

すでに、それは、この小屋の裏に設置されていた。

地中に、空きがあれば設置可能なのであった。(師匠の研究室である)


「おい、こんなところにあるのか?」ゴブニュは非常に驚いている。

師匠の鍜治場が、ゴブニュの鍜治場になるかどうかはわからない。

だが、俺は自分の獲物を作ることができることは、確認していた。


何もないところから、入り口の円柱が生えてくる。

「これはなんだ!」

「どうぞ、この中であれば興奮しても大丈夫だ」


研究室の鍜治場で、ゴブニュは興奮する前に唖然としていた。

「こんなすごい装置は初めて見る」

どうやら、普通の鍜治場ではないようだ。


「ようこそ、いらっしゃいました」突然、女の声がして、振り返った。

何!俺は何がおこったか理解できなかった。

「エリーズ様!」そして、全く意味の分からない反応を示す男がいた。


昨日まではいなかった女が俺の基地にいたのだ。

しかし、何がようこそなのか?


そして、不明な反応を示すアルテュール。

謎が深まっていく。

この基地は、やはり何かがおかしい。

そう、おかしいのだ。

師匠の研究室だったはずなのだがな。


それにしても、おかしい。

師匠は研究室に女がいるなどといっていなかった。

そして、彼女は昨日まで確実にいなかった。

なぜ、そしてどこから現れたのか?

しかも、エリーズ様とは?

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