第41話 尋問
041 尋問
「そして、意識を失ったのだ。」
「ほう、シツコイ男といわれた声に聞き覚えはないのかい」と俺。
「うむ、なんだか聞いたことがあるような気もするのだが・・・」とアル。
「その後はどうなったのだ、エリーズ様は?」と俺。
「私が気が付いたとき、すでに牢に放り込まれていた、そして、離宮襲撃犯として逮捕されていたのだ!」とアル。
「エリーズの行方は?」
「わからない、だが、裁判では、エリーゼ様を誘拐したことになっていた。私の部下はすべて殺され、私だけが、襲撃犯の一人として捕まっていた。私は、その罪でロックに収監された。私が誘拐できるはずがないだろう」
「何とも言えん展開だな」
「そうですね、暗殺者集団が襲ったということは、エリーズ様の死体があってもよさそうなものなのに、なぜないのか」とマリウス。
「簡単にいうと、死体がないということは、生きている可能性がある。暗殺者が殺すとすれば、その場で殺すはずだが、そもそも、アルテュールに情報を教えた男は、暗殺者が差し向けられたといったのだったな」
「そうだ」
「彼は、なぜそれを知っているのだ」
「それは、・・・」
「因みにその男はどうなった」
「どういう意味だ」
「出世したかという意味だが」
「ああ、彼は、その後出世したと聞いた」
「裁判長、一回目の質問を終わります」
勿論、ここには裁判長はいない。
「なんのことだ」
「しかし、お前を殴った男の声だが、聞いたことがないのか?例えば、いまの男の声は似ていないのか?」
「・・・・!」その時、アルテュールの顔色が真っ青になった。
どうやら聞き覚えがあるようだ。
「さて、死体のない理由だが、これは不透明だ、確実に抹殺できたのだ、救援の愚かな騎士を殴り昏倒させたのだ、敵はいない。すると、女は逃げたのか?なんらかの脱出用の、通路などがあったのではないか」
「それでは、私は時間稼ぎをできたのか?」
「さあ、そこで気になるのは、我が師匠は、アルテュールに指輪を渡している。これで、自分を信用させて、逃がせと。つまり、アルテュールですらあまり彼女と面識はないということか?」
「勿論、エリーズ様は離宮でひっそりと、子を産むために、あまり人と会っていないはずだ」
「では、一つ質問です。あなたの預かった指輪はどこに行ったのですか」
「気が付いたとき、俺は牢獄にいた。勿論所持品も取り上げられていた」
「つまり、指輪も行方不明ということなのですね。裁判長、2回目の質問を終わります」
この男は、記憶がなくても小芝居を行っているのである。
根っからの小芝居好きなのかもしれない。
「頼む、奴のところに行かせてくれ!確かめねばならんことがある」
「異議あり!」
「仮に、生きていたとしても、確かめずに飛び込むとは馬鹿のすることだ」
「そうですよ、アースの旦那、その道には、その道の流儀があります。まずは探ることです」とマリウス。
簡単に行くと、余計に証拠を隠滅される。まずはこっそりと探るべきである。
こんなに簡単にだまされる人ばかりだと、やりやすいのだがな。
「もう何年も前の話だ、2,3週間遅れたとてなんの問題がある」
「ああ、教皇様!私は何と愚かだったのでしょう」
「教皇はすでに変わっているのだがな」
「それは聞いている、だが私は認めん、暗部の黒幕こそキシン・マダール枢機卿ではなかったか!」
情報収集には、マリウスが出ることになった。
さすがに、蛇の道は蛇。適材適所であろうか。
「さて、私の武器を作らねばならん、おっさん、手伝ってくれないか」
「今ある武器ではいけないのか」
「違和感がどうしてもあってな、さっき思いついた武器を形にしたいのだ。」
「へえ~、少し興味が出てきたな」
「素材はミスリル銀以外も使った方がいいのかな」
「おい、なんだかほかにもあるような言い方だが」
「おっさん、倉の中見なかったの、いろいろあったぞ」
「なんだと!」
それは、俺が知らない金属、ゆえに鑑定不能だった。
かなり金属には自信があったのだがな。
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