第42話 鍛冶場

042 鍛冶場


「おいこれは、アダマンティウムだぞ!」黒色の金属で非常に重い、そして大変固い、防具に向いているという。

ついに、新たな金属情報をゲットした!

「おいこれは、あれだろ!あれだ!」

おっさんはすでにおかしくなっていた。


「ご主人様、それは、オリハルコンになります。あらゆる金属の王ともいうべきものでございます」なぜか、国民的美少女鮎川奏は決して、おれから離れない。

そして、全く違和感のある知識で俺にそのファンタジー金属を説明してくれる。

「とすると、あれもあるのかな」なんのことはない。鎌をかけただけである。


「勿論です。ご主人様の武器には、あれが向いているのではないでしょうか」

何をつくるかすら言っていないのに、回答を導き出すとは、さすがにAIは違う。

だが、AIって何?


「御主人様の武器は、奏がお手伝いします」

「嫌、ゴブニュのおっさんと」

「いえいえ、ご主人様のお世話は私の仕事と決まっております」

「いや、君は、鍛冶なんてできないのでは」

「たとえできなくても、私がやります」

できるようになってから言ってほしいものだ。

だが、国会議員でも当選してから勉強するらしい。勿論、許されるに違いない。

そしてなんともいじらしい、上目遣い攻撃に対抗することは難しい。


しかも、ゴブニュのおっさんには、鍛冶のアシスタントとやらが奥から出てきたのである。

この研究室の奥にはなにが眠っているのだ?


ゴブニュは真っ赤になっていた。ドワーフ族には、ドストライクのアシスタントなのだろう。

勿論、俺の好みではなかったが。

「これでは、良い武器が打てんではないか」

「俺もその意見に賛成だ、これではよい武器が作れぬ」

邪念だらけでは、武器に悪い影響が出るだろう。というか、きちんとできんだろう。


今、俺とおっさんは、武器を作っている。

女人禁制ということにして、出て行ってもらった。

その武器の作り方は特殊だ。

この世界の剣は基本、鋳造剣だ。

しかし、俺たちが作っているものは、鍛鉄から作り上げる。

美しい波紋を出すために何度折り返す。

鉄自体に不純物はほぼないから美しさのためだけの作業ではある。

その鉄に、必要な炭素を混ぜているが、それは、錬金術によって、炭素濃度を決定し、均一化を図っていく。

数パーセントのミスリル銀を混入することにより、魔力を作用させやすい性質の獲得を目指す。

「しかし、なかなか、面倒なことをするのお」

「おっさん、武器はそんなもんだろう」

「だが、なんでお前は、パイプを作っているんだ」

「わからない」

俺はなぜかパイプを作っていたのである。

これで、殴るのだろうか?

それにしては、細い。殴りつけるなら、もう少し太い方がいいだろうが。

そして、そのパイプの内部に、線条を刻んでいく。

それにどんな意味があるのかは不明だが、なぜかこうせずにはいられない。

謎の症状である。いわゆるパイプマン症候群である。


勿論俺たちが作っていたのは、パイプではない。

パイプは、関係がない。

それは、ミャオ刀に似ているが、明らかに違う。

その、美しさがまず全く違う。

切れ味も異次元の違いがある。

そして、その切っ先の鋭さ。

鋭い刃先に魔力を流す。

明らかに、イイ感じだ。

初めの一本からほぼ完ぺきに作り上げることができた。


「なんという美しさだ」ゴブニュもこの磨き上げた刃を美しいと思うようだ。

「本当に見事ですご主人様」さらに、鮎川奏も入ってくる。

そして、その刀を持っていく。

「どこへ持っていく」

「御主人様の記念となるべき初めての作刀ですので、大広間に飾りましょう」

「嫌、それを使うんですが」

「気にしないでください、こしらえはこちらで仕上げますので、ご主人様は第2作目をおつくりください。」

「きっと、中に入れなかったので嫌がらせを受けているに違いない」

「俺の刀が、・・・」


しかし、拵えの話は、誰にしたわけでもないが、ちゃんと作れるのだろうか?

鞘師が鞘を作ったりするのだが。

鮫革でつかを捲いたりするのだが。


「お前と俺ならもっとすごいものが作れるに違いない」

「ああ。今度は、ミスリルとオリハルコンも混ぜてみるか」

「おうともよ」


作刀の戦いはまだまだ続くのであった。




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