第43話 作刀の戦いの裏で
043 作刀の戦いの裏で
作られたほぼ完ぺきと思われた、日本刀。
しかし、玉鋼で作られたものではないので、日本刀ではないらしい。
鉄は、錬金術の単離から始まり化合により塊を作ったので、玉鋼ではない。
炭素も、錬金術で付加調質したので、これも作り方が微妙といえる。
さらに言うと、ファンタジー金属を混ぜていたのでやはり日本刀ではないだろう。
仕方ないので、刀と呼称する。
日本刀と呼ばれるものはいろいろと規格が決まっているようだ。
だが、なかなかに美しい刀になったというのに、持ち去られてしまう悲劇が起こってしまう。
野郎二人の鍛冶師は、こうして二本目の創作に取り掛かる。
形的には、同じだが、材質を変えていこうということになる。
なんでも、ヒヒイロカネ、同位体にアポイタカラという金属があるらしい。
そもそも、金属的性質が鉄にマッチしているかもわからないが、最終は、付加調質で混ぜてしまうという邪道にも似た製法が考えられていた。
しかしそのような悲観的なこともなく、ファンタジー金属は鉄とよく似た性質をもっており、うまく扱えるようだった。
ヒヒイロカネという金属は、火の色の金属であり、まさに炎のように見える。
炎の魔法と相性が良いのだという。
そもそも魔法が得意だと、剣など習わないそうだが・・・。
そういう意味では微妙な立ち位置になるのかもしれないものを、俺たちはあえて作る!
それが、ロマンなのだから。
俺の記憶は失っていても、体は鍛冶を覚えているらしく、なんとも簡単にやってのける。
しかし、パイプを作ることを止められないようだ。
このパイプ造りはやめると死ぬかも知れない。
一体何の意味があるのだろう。パイプマン症候群の病状は深刻なようだ。
アポイタカラはヒヒイロカネの同位体ということだが、こちらは色が青い。
此方は、水の魔法と相性がいいのだという。
やはり、超微妙な武器を作る、そうそれが、浪漫だ!
そんなことをやっている馬鹿男のいない空間では、なんらかの儀式が行われていた。
初めに作られた、ミスリル銀入り刀だが、台に置かれている。
なんらかの光線を浴びている。
光の解析から、微妙に歪みや凹凸が発見される。
これは人間の作るものなので仕方のないレベルの誤差だった。
だが、機械は冷酷に、その欠点をあげつらうのだ。
機械が刀を持ち上げて、その凹凸を消していく。
より完全なものへと、磨きあげていく。
誤差を完全に消した刀に今度は、なんらかの噴霧が行われる。
それが終了すると、さらに別の噴霧が行われる。
別の方の機械では、採寸された刀の鞘が作られていた。
なんらかの金属か何かの物質が削られて刀の型を掘られていく。
それは、精密加工だった。
別室では、ハンマーを使っていたが、ここは、MC旋盤を使っているような技術の差が存在した。中世と現代の最新のテクノロジーほどの差が扉一枚隔てたところにあったのである。
阿保な男達が3本目の青い刀を作り上げたときに、国民的美少女は、笑顔で現れた。
「ご主人様、鞘ができましたよ」
それだけを見れば、美少女が作ったように見える。
男は少なくともそうおもった。
鞘の表面は黒漆塗の金粉チラシのような装飾である。
漆塗だから、木でできていると男は思っていた。
だが実際はそう見えるだけで全く別の物質でできていることを男は知らない。
それが、アダマンティンの綿状のものとオリハルコンの綿状のものを組み合わせて作られており非常に軽いが、刀そのものよりも堅いということを。
だから、それでたたけば刀できるよりもある意味強いのだが、そんなことは説明されていないのでわからないのである。刀で防げなくても、鞘で防ぐことが可能なほどの強度を持っているのである。
そして、刀本体も、さらに機械的精度を上げており、防汚処理のほかに、ナノマシンによる自己修復力を付加されているなどということも説明されることはない。
表面硬化処理によりほぼ刃がかけることはなくなったのだが、もしかけても、ナノマシンにより修復するのだ。
機械的精度の方は、切れ味を数段あげている。
そして、刃に魔力を纏わせる、
完璧な角度に刃を調整されている。それは切ることのみを見据えた角度だった。
だが、そのような情報は開示されることはない。
なぜなら、そんなことをすれば、男の浪漫が簡単に瓦解するからだ。
自分よりも、その武器に精通する女がいて、そのことを指摘などすれば、男の心など簡単に砕け散ってしまうだろう。
そういう意味で、国民的美少女AIは完璧なのだ。
絶対に好かれる自信というか、その真理の方法を会得しているのだ。
彼女からすれば、私を好きにならない男などないのだ。彼女の容姿はこの男の理想を追求した形である。そして、数百年間の間に、愚かな男をどうすれば操れるかの情報を完璧に収集していたのだ。
そして、決して自分の主人を手放しはしない!
彼女がこの世に生を受けて、1200年。(意識を覚醒してからの時間)
彼女は1200年ぶりに念願の主人を手に入れたのである。
絶対に、手放しはしない。
それがたとえどんな男であろうともだ。
彼女もまた黒い炎をその美しい笑顔の裏で燃やしていたのである。
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