第66話 10階層のボス

066 10階層のボス


10階層のボスはエクストラハードを自然と引いたのか、ゴブリンキングとゴブリンジェネラル達とその親衛隊という、通常の冒険者パーティーでは全滅必死の敵軍を引き当てた。

だが、戦闘開始直後の常識外れの魔法がさく裂し、アーツが連続的にさらにさく裂する。

親衛隊が直後にほぼ全滅するという事態に陥る。

まさに、イレギュラーの連鎖。


通常のボスたるゴブリンジェネラルの一匹が、その人間たちをねめつけるが、その中の一人はすでに、灼眼の状態になっていた。

さすがの将軍でもこのような敵を見たことがなかった。

彼に戦歴があるのかどうかはわからないが。


「掛かれ!囲むのだ、時間を稼げ!儂が兵士どもを召喚する」

王が決然と命令する。

ゴブリンキングは、兵士などいくらでも召喚することが可能なのである。

「ギッギ」

将軍たちは、散開しながら男たちを囲む。

だが、灼眼の男もただ待つような男ではない。

「チェ~ッ」奇声一閃、必殺の太刀を繰り出す。

一刀両断剣は目標を上下に分断する、破壊的攻撃だが、この奇声からの攻撃は目標を左右に分断する。刃先が、地面の石畳を叩き、火花を激しく散らしながらえぐり取る。

本来、迷宮自体は破壊不可能物質なのだが。


アルテュールは、将軍の一人と戦っている。

マリウスと玉1号は将軍の一人と戦っている。

残りの将軍は皆、男を囲むように攻撃するが、男の見切りで避けられてしまう。

男の大蛇丸の刃の部分が青く光を帯びる。これが魔刃である。

男の瞳の色が金色に輝く。男の身体強化がマックスになったことの現れである。


火眼金睛という言葉がある。巨大な妖力を持つ妖怪などが、これであるといわれているが、男の目こそ、まさにこれだった。

有名どころでいえば、九尾狐、孫悟空などである。

「日輪!」アーツが全周囲を攻撃する。さすがに将軍たち、己の剣で防ぐのだが、恐ろしいほどに剣が刃こぼれしていく。

「チェ~ッ!」男の奇声がさらに響き渡る。

ついに将軍の剣が真っ二つになり、将軍も両断される。


ようやく、王の兵召喚儀式が終了して、数百のゴブリンソルジャーたちが、周囲を囲む。

「雷の神、バールよ、汝の力をわが手に貸し与え給え。早く、俺の周りに来い!」

その時、アルテュールとマリウス、玉1号が男の背中を守るように一つの塊になる。

「葬雷!」男が手を上に掲げて唱えれば、その手のひらから恐るべき放電が、天井に向かう。

バババババババババン!

という音と空気を焦がす臭い、電荷により発生するオゾンが周囲に満ちる。

激しい、激しすぎる落雷が、天井からさく裂したのである。


怖しいほどの量の猛煙が周囲を包んでいたが、晴れてくる。

まさに死屍累々の惨状が広がっている。


王は辛うじて立っていた。

王服は焼け焦げ、自身も満身創痍の状態だった。

「バ ケ モ ノ」王は人語を話した。

王の持っていた王杓が手から零れ、倒れた。そして王もついに倒れたのだった。


「誰が化け物だ、貴様に言われたくはないわ、なあ」と男。

「お前だ!」とアル。

「なのなの」と玉1号。


因みに、男が魔術の使い手という情報はない。

すでに、いつの間にか覚えていたのである。

男が師匠から得た魔術は、治癒、火、水である。


「それにしても、あの出鱈目な魔術はなんだ!」とアル。

「ああ、なんとなく心の声が俺をいざなうのだ」かなりの中二病なのだが、本当にそうらしい。


「ちょっと、魔術が人間の領域じゃないのなの、おかしいの、人間やめてるなの」

誰もが人間でないやつにそう言われたくはないだろう。


だが事象には、すべて原因がある。

そう、大蛇丸から、かなりヤバい物質(バンパイア)を取り除いたときのことである。

女?AI?は別の物質を埋め込んでいたのだ。


ちょっとホラーだったと怒られたから、今度こそ浪漫武器にしないとと反省を込めて、AIが下した決断は、パイロヒドラの核を埋め込んだのである。

異界の東方では、八岐大蛇と呼ばれた物と同類の核である。

その首は、雷を吐いたり、吹雪を吐いたりするものがいるのである。

そのをはめ込んだのである。


まさに、浪漫兵器『九頭邪龍八岐大蛇(大量破壊兵器)』がこうしてしていたのである。





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