第65話 メルキア大迷宮

065 メルキア大迷宮


100層あるともいわれる伝説の巨大迷宮。

しかし、実際は踏破したものがいないのでわからない。

だが、迷宮から産出されるもの自体は非常に価値があり、街を潤おしているのだ。


ド・ツク・ゾーレとアルテュール、マリウス、玉1号というなんとも奇妙なパーティーが編成される。

冒険者登録に向かう。

そこは、冒険者ギルド。やはり、いかにもキワモノパーティーらしい扱いである。

何といっても、幼女の玉1号は少し身長が伸びたといえども、そこらの女の子である。

だが、中身はパーフェクトソルジャーの体を乗っ取った吸血鬼である。

ド・ツク・ゾーレは、治癒士兼魔法士兼剣士である。

アルテュールは戦士である。マリウスは盗賊である。

聴けばなんとなく、わからなくもないパーティーなのだが、誰もそんなことは気にしていない。

其れよりも、彼らのつけているマントが話題になる。

双頭の鷲に似た烏の三本足である。

多くの者は、それが烏であることを知らない。

鷲だと考えている。


「あのマントは!」

そうそのマントは近ごろ、このメルキア大迷宮を急速に攻略している部隊のものと同じものだった。というか、素材ははるかにこちらの方が上である。


「ゾーレオパルディア様に敬礼」そこには、親衛隊とユーゲントたちが列をなしていた。

「御苦労」

「は!」

「我らを気にすることなく攻略を行いなさい」

「は!では、閣下お先に失礼します」

彼らは30階層を攻略している。

ユーゲントは、15階層程度である。


この街の冒険者チームでは、40階層が最先端である。

親衛隊はまさに人外の速さで攻略をこなしているのである。

この異常事態に、ギルドの冒険者は毒気を抜かれてしまった。

「さて、我等も行くか」

「ああ、魔石が目標だったな」

「そうだ、魔石を精製し、魔晶石に魔晶石を精製し、魔法石にすることが目標である」


こいつら何を言っているのか?

そんなことができる人間などいない。

魔法石は空中戦艦の動力部などに使われているが、すべて『遺跡』で発掘されたものである。

技術が失われているのである。


薄暗い迷宮に入る。

足音を立てない彼ら。

それだけでも尋常ではない。

一階層のゴブリンたちは、アルがすべて切り倒す。

二階層のゴブリンたちも同じくすべて切り倒される。

彼は、武技(アーツ)、白光連斬をメインに使っている。

剣から刀に切り替わっても、何とかなっているようだ。


有象無象を全く寄せ付けず。

10階層のボスの部屋の扉が現れた。

大きな扉が圧迫感を与えてくる。

しかし、この程度で止まる訳にはいかない。

なんでもゴブリンジェネラルとその取り巻きが出るらしい。

今は開いているが入ると扉が閉まり、戦いが終わるまで出ることはできなくなる。

一度クリアすれば、その奥の魔法石が活性化し、その場所から冒険可能になるという、有難い、ショートカット機能が使用可能になる。


ゴゴゴゴゴゴ。

扉が音を立ててしまっていく。

ド~ンと音がして扉がしまる。

周囲の壁に青い炎がボボボとともっていく。


奥の間から、威厳に満ちた存在が出てくる。

ゴブリンキングとゴブリンジェネラル達。

そして、王の親衛隊たちが、大勢でやってくるではないか!


勿論、このメルキア大迷宮ですらも、ワールドエネミーを殲滅せねばならないことに手を貸すことにしたのである。

「聞いていた話とはだいぶ違うようだが、ゴブリンキングらしい」

「おい、ちょっと待て」

「兄貴!」

「落ち着くのなの」皆が浮足だったのも仕方ないであろう。

想定されていた10階層のボスの10倍は強い集団が一個中隊規模で参上したのだ。


「これでこそ、世界の敵にふさわしい修羅の道である」大蛇丸を抜き放つ男。

「マリウスは、玉に守ってもらえ、行くぞ!アルよ」


「来たれ!嵐の神よ、バールよ、サンダーボルト!」

稲妻が走り、辺りを感電させる。それは、雷撃魔法。

「来たれ、氷結の女神よ、ブリージアよ、ゼロ・ケルビン!」

周囲が冷気で氷結の雲が沸き立ち、目の前に煙の塊ができる。

「縮地!日輪連斬!」日輪が全周囲をなぎ倒し、もう一回転、進んで行われる。

「燕返し」そして、無理な姿勢から、さらに無理な切り上げへとつなげる。

ゴブリン親衛隊の焼けただれ、氷ついた体が砕け散る!まさに氷ついたからだが赤い塊になり砕けるのだ。


ゴブリンキングは、未だ無事であり悠然と真っ赤な目をこちらにくれている。

キングはジェネラル達に守られているのだ。


やっとのことで、アルが抜刀し、ゴブリンジェネラル達が抜剣する。


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