第55話 玉
055 玉
「汚染された個体は抹消し、汚染源も処理します。ご主人様は何のご心配もいりません」
「しかし、玉は死んでしまう」
「大丈夫です、引継ぎできる個体を用意します。簡単に言うと玉2号です」
「1号と2号の違いは?」
「特にありません」
「そんなことないの、全然別ものなの」
必死に弁解する、玉。
「ああ言っているが」
「大丈夫です、同じものです、御主人さまの好きな〇女です」
「いやいや、そんなことは」
「そうなんですか、一度子供を産んだ方が好みなのですか、確かに動物などでは、そのような事例も見られますが、人間の場合は統計の結果では圧倒的にその方が好まれると出ていますが」
「大丈夫なの、玉も〇女なの」
「これ以上の発言は控えなさい」
「汚染源を除去すれば問題ないでしょう」
大刀に近づく奏。
「キャ~なの、殺されるの」
「危険性でいうとどうなる」
「原始生物の病原菌が体内に入る可能性があります、後で、一応メディカルチェックを行います。遺伝子強化対策は行っておりますので、致命に至りません」
「病原菌なんか持っていないの」
「病原菌は目に見えませんので、チェックは必要です。免疫システムを突破するようなものでは面倒なことになります」
「助けられないの?」
「ご主人様がそのようなことをおっしゃること自体が何らかの操作を受けている可能性があります」
「そんなことしてないの」
「原始生物のいうこと信じるのは、おやめになってください、それは、毒虫が助けてと言っているのに等しいのです。油断した隙に、毒を放ちます」
「そんなことしなの、毒虫じゃないの」玉はかわいく言い放つ。
「そうですね、どちらかというとアメーバのような原始生物に近いでしょう、その分なかなか消滅しません」
奏さんが本気になるととても恐ろしい。
それを読み取ったのか奏は、
「え~、ひどい。ご主人さまが、奏の事をいじめる」品を作りながらよよと
明らかに、あざといのだが、なんともなまめかしい。
「その女には、感情なんてないの、化け物なの」と玉1号の反撃。
「こら!奏さんに謝りなさい!」と俺。
「うえ~ん」今度はこちらが、化け始める。
「御主人様、その原生生物と話しがございます少し外してください」
「ゆうにことかいて、何を言ってるなの、決着をつけるの」
俺は広間から追い出される。
猛烈な衝撃と振動が伝わってくる。
「玉2号でもいいか。おんなじ顔なら。」
「しかし、奏さんがあんなに怒るなんて。」
彼女の顔は完全に左右対称に作られている、とてつもなく美しいのだが、その分表情がないと凄まじく冷たく見えるのだ。
夕食の時には、玉と奏さんがいた。
「2号なの?」
「違うの、1号なの」
「そうか1号なのか」
「そうなの」
奏さんは悔しそうな顔をしている。
「御主人様、2号の手配はできております。その際には、この出来損ないを処分しましょう」
「そんなことされたら、玉はあることあることしゃべってしまうかもしれないの」
「ふん、御主人さま戯言です気になさらず、それにご主人様の記憶の改ざんなどはたやすいのです」
最後の方は聞こえないことにした。
聴覚も抜群に強化されているので、聞きたくもない音が聞こえるのである。
例えば、広間でどのような会話が交わされたのかなども。
それは永き時間を生き抜いてきた者たちの会話。
人間が聴くべき内容ではなかった。
きっと人間程度の寿命の者では絶望する。
こうして玉1号は、大人しくし、ツクの役に立つことを条件に生き延びることにきまった。
たとえ滅ぼしても、再び生き返る恐るべき生命力を持っているのだ。
確かに、一度殺されたが、簡単に生き返ったのは、会話の中で確認できたのである。
だが、国民的美少女AIには、それを滅ぶすべき兵器をちゃんと持っていた。
それは、語られなかった真実である。
剣の柄から、物体(核)が取り出され、別の物体がはめ込まれる。
これで邪龍刀大蛇丸が、通常の刀に戻ったのである。
浪漫性(ホラー成分)が削られた物理的に恐ろしい刀になったのである。
少なくとも、俺はそう考えていた。
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