第48話 辻斬り

048 辻斬り


「新しい刀ができたのでな、今日はめでたいのじゃ」

「貴様、死にたいらしいな、我等は神聖騎士団であるぞ」


「抜刀、回転切り」刀を抜きざまに一回転をして遠心力をかける。

ギ~~~ンという甲高い金属音が響きわたる。

刀は西洋式両手剣より細いので大丈夫かと思い切り打ち合ってみたのである。


「な!」

今までにない戦法である。

この世界では、刀は東方の国の武器である。


「まだいけそうだな」

次々と刀を繰り出す男、火花を散らしながら、その斬撃を受け続ける騎士。

その攻撃力は、反撃を許さない苛烈さだった。


カキ~ンという音とともに、剣が折れ飛んだ。

太い方がおられたのである。

「馬鹿な!」

「早いな」


「これから、魔刃の調子をみたかったのだがな、お前来い」

「調子に乗るな!」今度は、もう一人の騎士が大上段から剣を打ち込んでくる。

刀で受けて、すかさず、腹を蹴り飛ばす。


その一瞬で刃先が金色に輝く。これが魔刃である。刃先が鋭いほど魔力を載せやすい。

「この野郎!」

騎士が再度打ち込んでくるが、その剣が刀に打ち付けられる。

カキンと今度は、たやすく剣が折れた。

そして、刀は、ズイと騎士ののどにつきこまれた。

「ググ」声を出すことができないが、即死していた。


「あ!」

もう一人の騎士は驚きで我を忘れた。

こんなに簡単に騎士が討ち取られたなどと、認められない。

「一刀両断剣」

振り向きざまに、刀が下から切り上げる。

皮鎧に守られている騎士は、上半身がズルリとずれて、崩れた。

魔刃は皮鎧の防御力で防ぐことができなかった。


その夜は、危険な通り魔が街を徘徊していた。


すでに、4人の騎士が殺されていたのである。

だが、まだ交代時間になっていないため、誰も気づいていない。

それだけ同時刻内に発生しているのである。


暗闇の影から、黒い装束の男が現れる。

マスクをしているが目が金色に光っている。

これは、魔王などに見られる現象である。

赤く光る悪魔よりも、金色の方が危険とされている。

それだけ、魔力限界が高いのである。高出力の魔力で身体強化した反動だが、低出力では、赤が限界なのだ。

しかし、その化け物は金色に目をかがやかせていた。


「魔王!」期せずして、二人の騎士は同じことを口走った。

一人は抜剣し、一人は胸元の笛を思い切り吹いた。

ピーーー。

独特な音が夜の街に響き渡る。

魔道具の笛であるため、聞く方には確実に届く。


第3師団の砦では、一級戦闘態勢に移行する。

このようなことは、数年来なかった異常事態である。


刃長180㎝の大刀を引き抜く男。

なぜそれほど、警戒されているのかわかっていない。

興奮している間に、目が金色に光っていたのである。


大蛇丸、それは本来三郎太刀と名付ける予定だったが、なぜか名称変更を余儀なくされた不憫ふびんな子。

そして、やはり拵えは、国民的美少女が担当したのである。

案外まともなものを作るので 安心し渡してしまったのだが、自分が気づいていないところで危険な調整が行われているとは男は知らなかったのである。


大蛇丸は怪しく光った。

オリハルコン合金だからであろうか?

一撃で、騎士一人を即死させる。

そもそも、すでに高出力の男の一撃を受けることはかなり難しい。

しかも、怪しげな剣法も次第に復活の予兆を見せている。

この男に刀を持たせる行為は非常に危険なのだ。

それは何気ない、一撃だったはずだったのだが、斃れた騎士の状態は尋常ではなかった。

すべての水分を失ったような、つまりミイラのようなむくろとなり果てていた。


「え」

「え」

今度は期せずして敵味方が同じ声を挙げた。

「吸精魔王剣!」

「これは、一体!」


もう一人はすでに逃亡を開始していたが、男の武技アーツ『縮地』が自動的に発動し、距離が詰まる。

大蛇丸が騎士の首を貫き通す。

「グ」

大蛇丸は何かを急速に吸い上げている。


その時男は、国民的美少女が言った浪漫の真実を知る。

すべてを吸い取る刀、おそるべき邪刀が誕生したことをしった瞬間だった。


だが、惨劇はまだ始まったばかりだった。

警邏けいら用の笛が、敵を呼び寄せていたのである。



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