第49話 魔王復活?

049 魔王復活?


第一小隊は夜間勤務の当番だった。

まさかの出動命令が出たとき、何かの間違いであろうと思われた。

ここ数年この街では、そのような事態は出来したことはない。

それこそ、大掛かりな喧嘩程度しか起こらないのだ。

しかも、騎士に食って掛かるような馬鹿は、この街には存在しない。

冒険者といわれるような荒くれものでも、騎士団は避けるものである。


「とにかく、状況を把握せよ!」

小隊長のマールは従兵に命令する。

しかし、報告は非常に急を要する事態を示していた。

哨戒の2組が斬殺死体で発見されたのである。


「隊列を組め、今夜の襲撃は明らかに、我等に攻撃する意図を持っている、これは訓練にあらず」マールの声は厳しく、隊列を組む隊員はいぶかしんだ。

こんなことは初めてのことなのだ。

騎士は騎士たるべく生まれ、訓練し熟練を身に着ける。

その敵は、敵国の騎士だけなのだ。

しかし、敵国が動いたとの情報は入っていない。

例えば盗賊などであれば、簡単に殲滅することができる。

彼らは、才能を持っているから騎士なのだ。


例えば剣の才能があれば、盗賊になるより騎士の方がよほどいい生活ができるのだ。

ゆえに、盗賊に身を落とすものはない。なんらかの問題を起こさぬ限りは。

それに、数が増えれば、一人の騎士崩れがいたところで簡単に殲滅できる。


だから、盗賊でも町中に攻めてくることは全くないといってもよいのだ。

襲われるのは、騎士団などのいない場所になるのだ。


暗がりに黒い装束、それは、怪しい男だった。

剣を持っている、しかも刃が異常に長く、反りがある。

「貴様、何者だ」

男が振り返る。

その顔には仮面がかぶさっていたのだが、目は金色に光っていた。

それは、伝説にでてくる存在、それは魔王だ!実はそれ以外にも金色の目の魔獣などもいるのだが、人型では、魔王が最たるものである。


「貴様らに聞こう。汝の神の名を」

「全員囲め!」小隊長マールは問いに答えなかった。

彼は、そもそも、ゼウスを奉じて騎士団に入隊したのだった。

そして、いまでも、ゼウスを信仰している。


小隊は40名である、警邏にでているものも含めれば50人が一つのユニットだった。

取り囲んで総攻撃をかければ、いかな魔王といえども倒せるはず!

だが、男のは、そんなことを歯牙にもかけない。

半強制的に、武技(アーツ)を繰り出す。


『日輪』全周囲攻撃が発動する。

本来男のもつ武技(アーツ)では、金翅鳥王剣で、光の刃をまき散らすところであったのだが、大蛇丸はそれを許さない。

魔刃を纏った日輪は、刃の届く範囲のすべてを切り裂いていく。

そしてそれは、刃長180㎝である。


血しぶきがちび散る予定だったが、それは起こらない。

『血を吸えば吸うほど切れ味が上がるって、なんだかロマンですよね』

その言葉が心の中でリフレインする。

あの時、それは浪漫ではなく、只のホラーだとなぜ言わなかったのか!

すでに、10数人が物言わぬミイラになり果てていた。


大蛇丸は残りの敵に向かって、金翅鳥王剣を放とうとするが、何とかやめさせる。

大蛇丸は少し不服なようだ。

バキバキと何かを咀嚼そしゃくし始める。

今度はなんだ!

そこには、何かが光の玉をかみ砕いて咀嚼していた。

明らかに不穏なことをしている図である。

「おい、お前何をしている」刀に語りかけるのもかなりヤバいが。

「魂おいしいよ」何かが返事を返すのも相当ヤバい。

バキバキとかじり続ける。


一体だれがこのような怨霊の刀を作ったのだ!

お前だ!と返されそうだが、そんなことはしていない。

大きさこそ異常だが、これは正統な作り方で作り出したものであったはずなのだ。


しかし、拵えは奥で作られて、完成品の形で出てきたのだが、一体どのようなことをすればこのような邪剣になるのだ。


答え、柄内部に吸血鬼の魂石を埋め込み、プログラムで吸血鬼の力を切れ味に変換するように調整すれば血を吸えば吸うだけ切れ味が上がる刀を作り上げることができます。

副作用により、このような異常行動をとるようになります。


勿論そのようなことを俺は知らない。

あの可愛い国民的美少女がそのような邪悪なことを行うはずがない。


ただし、あの容姿は俺に対する最適解を具現化しただけのことである。


つまり可愛い容姿とその中身は何ら関係ないということだ。

それが、現実だった。


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