第31話 王都の偽貴族
031 王都の偽貴族
彼らの召喚を行った国は、アーマベルガー王国であり、首都はアーマベルガーという。
この都市には、デウス教団教皇庁が存在し、王国軍とは別に、デウス神聖騎士団(聖堂騎士団)を保持していた。
このデウス教皇庁はそのままだが、神聖騎士団は名称を変更、アーマベルガー神聖騎士団と改名した。
アーマベルガーはデウスの一形態なので、問題はないという。
これは、現在の教皇の言葉である。依然の教皇は、失脚し、表向きは引退した。
なんらかの、背信的行為があったために、失脚したのだという噂がまことしやかに流れている。
しかし、教団の名誉の問題もあるため、その内容については、明らかにされることはない。
王都アーマベルガーの貴族街区の門に風変わりな男が現れた。
貴族街区は基本貴族しか立ち入ることはできない。
アーママリーン王国の貴族だと名乗る男が何やら、言っていた。
「儂を誰かだと?貴様には字が読めんのか?」
「しかし、なんの用なのですか」
「この馬鹿者めが、無礼であろう」
しかし、馬車でなく、しかも従者もいない貴族など怪しいことに変わりないのは確かだった。
身分証は本物のようだが、偽造できないというわけではない。
「儂は、ルセール・ド・ツク・ゾーレオパルドなのだぞ」
「ですから」
「この名を聞いてもわからぬのか?貴様らのような不勉強な輩がこの世界を駄目にしていくのだ」
「ゾーレオパルディア家のご関係の方ですか」
「そうだ、我が家は分家してかなり長いがな、この国でゾーレオパルの名は武門の誉となっておらんのか、嘆かわしい」
「すると、第三騎士団の関係者でございますか」
「馬鹿め、すでに分家して久しい。儂を知るものがいるかは、儂は知らん」
「では、」
「貴様!儂が、供を連れていないことを疑っておるのか?」
「そうは言いませんが、やはり、貴族の方は・・・」
「では、財政的に落ちぶれた家はどうするのか?供と馬車を借りるとでもいうのか?」
「窮されておられるのですか」
「だから馬鹿かといっている、儂が落ちぶれる。なぜ?戦えば、敵の首が転がり落ちる儂が?」
「では、どういうことですか」
「探しているものが秘密だからに決まっているではないか」
「え?」
「お前は、自分の秘密の宝を、家族や友人にここに隠しているんだぞというのか?そんなことをすれば、あっという間に、昔の嫁がもって行ってくれて処分されるに決まっておろうが!」
門衛は先ほどから、この調子でずっと絡まれているのであった。
本当は、この馬鹿貴族を殴りつけたいのだが、そうするわけにもいかなかった。
彼は、兵士で貴族ですらなかったのだ。
因みに騎士は、騎士爵という身分で、貴族かどうかは微妙である。
騎士は個人でなるものなのである。家族は関係ない。
貴族は、家のものが全員貴族と認識されるのが基本である。
騎士が何らかの功績を成した場合に男爵などの貴族になることはある。
一応、そこからが貴族とされている。
どちらにしても、この貴族らしい男は徹底的にこの門衛をこき下ろす。
俺が一体何をしたというのか?彼はそう思っていたはずだが、実はしていた。
男は街を追い出されたときに、彼に嫌がらせを受けたことを忘れていなかったのである。
門衛の上司が来た時、貴族は話かたを変えた。
「いや、迷惑をかけるな、この馬鹿がどうしても理解しないから、あなたにも迷惑が掛かってしまったようだ」
「いえ、お気になさらずそれで?」
「ここでは、まずい。部屋を用意してくれ」
「はあ」
「部屋を用意したのはほかでもない」
そこには、偽貴族と隊長しかいない。
「まず、私は、武門の出である。そして、鑑定スキルを持っている」
「え?」
「武器にはうるさい、貴様らは鑑定と馬鹿にするがな、しかし、本来の知識がないものが行う鑑定には意味はないが、儂ほどになればそうではないのだ、例えば、貴様の剣は、一応一流の範疇に入るが、だからどうしたというレベルだ」
「え」
「この世には、すごい業物が存在する。儂は、今回ある筋からその情報をえて、供を最小にしてここにやってきたのは、そのすごい業物の探しに来たからである」
「はあ」
「例えば、貴様の剣は、鋳鉄の剣を鍛えたものだが、その間に、鋼の質を均一にできていないため、そこから折れる」
「そんなことまで」
「ははは、鑑定は無能?違うな、使うやつが無能なだけだ」
「ええ、ええ」
「そこで、話は戻るが、その業物は、難しいところに存在するのだ」
「難しい場所?」
「儂は、隣国人ゆえに、この国内の事には疎い」
「そこに行くのは可能か聞きたいのだ」
「どこでしょうか」
「ああ、前教皇の屋敷があった場所だ」
「あ」その顔は物語っていた。非常に難しい場所であることを。
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