第22話 伝染るんです
022
「お前はおそらく、世界の脅威だ」
「そんな」
「かつての儂なら、お前を一番初めに抹殺する、この世界のために」
「私は」
「わかっておる、お前が普通の者でないのはわかっておった。世界感がかけている。転移者だな、そして、転移者は例外なく厚遇される、お前は巻き込まれとして処理された者であろう」
「・・・」
師匠は世界のしかも、政治上位者しか知らないからくりも知っている。
やはり、かなりな家の出なのだろう。
「そして、このような地獄に送られたお前は必ず世界に仇なす敵となるのは必定である」
まさしく、俺は世界の敵いや、生贄、苦しむ動物として送り込まれた!のだ。
いまの言葉で、記憶の一部がつながる。苦しむ姿を見るために送り込まれたのだ、名前を改ざんされて。
未だ、名前は思い出せないが、そうなのだ。
「お前の名を聞いていなかったな」
「はい師匠」
「聞かせてくれ」
「今は、ツクとしかお答えできません」
「そうか、なんらかのからくりがあるのだろうな、儂の名は、この仮面同様、明かすわけにいかんのだがな」
「はい、師匠にも、ご事情がおありでしょう」
「ありがとう、ツクよ」
俺たちは、抱き合った。師匠の体は恐ろしく細かった。
命を激しく燃やす師匠は、なんらかの異常を抱えているに違いない。
その細さに涙があふれてきた。おそらくもう長くない。
「世界の敵のツクになら、頼めることもある」
いつの間にか、俺はワールドエネミーに認定されてようだ。
「まず初めに、お前は異常だ。デウスの加護を得ていない。それは、神官だった儂がいうのじゃから間違いはない。どちらかというと魔王に近いのだろう」
今度は魔王認定?
「デウスは唯一の神である。しかし、お前も気づいているだろうが、それはこの世界ではということだ。かつてこの世界はデウスの世界ではなかったのだ。これは禁忌の範疇に入るのだがな」
デウスはのちに世界を統一したのだ、宗教的に。
そして、すべてのほかの神は、悪魔となったのだ。
だから、魔法の呪文はすべて、デウス以外の名前を唱えることを必要とする。
とすると、魔法使いはすべてデウス以外の神の加護使っていることになるのである。
「そして、この一年の間に、お前の異常さがはっきりとした。お前のスキルが他人に感染するということだ。儂はかなり高等な情報にもアクセスする立場にいたが、スキルが感染するなどという現象は聞いたことがない」
「きっと、お前がワールドエネミーの
「つまり、お前はこの世界を破滅させるために行動するのに適した体質というか特技を自然と得ているということだ」
「師匠は、私は、」
「いいのだ、この世界に召喚されたのは、何者かの力、しかしそれすら、世界の法則のうちにある、それは偶然ではない、必然の産物である」
「お前は、おそらく誰に命令されることもなくこの世界を打ち砕こうとするだろう、しかしそれすら自然の理のうちのこと。お前が恨みを持つのは、大いなる意思によるのだ」
「そして、お前の出鱈目なスキルの獲得はおそらく以前は持っていたのではないかという推測が一番しっくりくる、そうかつて知っていたのだ。持っていたのだ。だから、ちょっとした刺激で其れが帰ってくるのだ」
「しかも、それが仲間に簡単にうつっていく。それは病原菌が繁殖して、次々と感染者を増やしていくことに似ているのだ。」
この世界に病原菌の概念が存在する?それは、賢者にも匹敵する仮面の知性の高さと見識の深さを表している。
「師匠、私は師匠になら殺されても構いません」
「なぜ?私はそんなことは望んでいない」
「しかし、私は世界の敵なのでしょう」
「だからどうだというのだ、世界の敵を作ったのは、この世界なのだ。世界は世界の敵となるお前を望んでいるということだ、儂の意見など何もない、儂はこの国の王ではない。儂は仮面の囚人だ、ただそれだけなのだ」
仮面は、すべて理路整然と物事を理解している。
そこには、いつもの狂気の影はなかった。
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