第23話 仮面の素顔

023 仮面の素顔


「儂は、もう長くはないはずだ」

「師匠!」

「いいのだ、弟子よ」

「だが、気になることもある」

「師匠、私が必ず、究極の薬をつくって、師匠の病気をなおします。ですから一緒に逃げてください、健康を取り戻し、気になることを解決しましょう」


「そうじゃった、お前の連れの男のミスリル銀だがな、儂がもっておる」

「え?」

「ツクは賢いから儂の正体には少なからず気づいておるじゃろう」

「高位の貴族ですよね」

「うむ、そうじゃな、だからよ。ミスリル如きなら、くれてやろう。儂も超絶鍛冶を目指したが、才能が足りなかった。その過程で、金属をかなり収蔵していった。」

「そうなのですか」

「初めに教えた技術は高品質の武器を作る方法だったであろう」

「そうですね、鉄の組織を変化させる方法でした」

「お前は、武器に精通しているな」

「記憶ははっきりしませんが、武器の鑑定はかなりの精度になると思います」


「そうか、ミスリルは、あるところにはあるが、無いところには全くない、いいか、お前は異常だ、ミスリルについては欠落していても、その性質をいずれ理解することになるだろう、これは魔法金属なのだ。だから、国家が管理している。よいか」

「はい」

「お前は、鉄鉱石の鉱脈を簡単に探すことができる」

「はい」

「ゆえに、ミスリルのある場所もわかるようになる」

「はい」


「ミスリルは儂の旧屋敷跡地の地下に隠してある、というか錬金も含めて世間では、儂は、そのようなことをしてはならない存在なのだ」

「高位の司祭あたりですか」

「・・・」

「前教皇猊下ですね」

「!」

「まさか、ばれていたとはな」

「この一年間の中で、師匠がいつここに来たのかを知りました。それにかなり高位の貴族で、宗教家となり、しかも顔を隠す必要がある方となれば、私の知る情報の中では、それにしか思い当たりませんでした」

「世界は恐るべき敵を作り出したものだな」


「そうだな、ツク、しかし、なぜ仮面をするのかは少し違う」

「そうなのですか」

「ああ、仮面を外してくれ」

「良いのですか」

「よい」


仮面は皮と鉄でできている、それに南京錠をかけている。

しかし、そのような南京錠など、何ということもない。


仮面が外されると、髪の毛とひげがすごいことになっている。

「ああ、久しぶりじゃったな、空気がうまい、こともないな」

それは、どことなく見覚えがあるような顔だった。


「ああ、ツクひげをそれるナイフは持っていないか」

「はい、あります」

アイテムボックスから取り出す。

通常のナイフの刃を特別に調質して焼き入れ作業をして、切れ味を高め、研いだものである。

砥石は自分で、砂を固めて作った。

「恐ろしいほどの切れ味じゃな」

なぜか部屋には、鏡もあった。仮面の顔を見たかったのだろうか。


「儂の顔をよく見ろ」ひげをそって整えた顔は、何かをたぎらせる。

「見たことがあるのではないか」

「!王!」

「儂は王ではないが、顔は似ているだろう」

「??」

「儂は、公爵家の人間だった、そして長男ではなかったので教団に入った。その後、教皇になったのだが、今は罪人になったのだがな」

「馬鹿な!」

「王家と公爵家は親戚だからな、顔が似るのはあたりまえなのだ」

「猊下」

「それは、奪われた位だ。キシンダ・マールとガースマベアに見事にやられた」

「取り戻すお手伝いをさせてください」

「いらぬ世話じゃな」

「しかし、」

「馬鹿者!お前は世界の敵、私が教皇になれば、お前をまず抹殺するといったであろうが!」

それは、権威者のオーラを纏っていた。


「詳しいことは省略するが、儂は、最後に気になることをお前に託したいのじゃ」

「師匠」

「私が、欲したのは、死んだ人間を生き返らす薬だ。だが、そんなものはない。それは話したか?」

「はい」

「儂は、それを知った時、絶望した。世界最高のエリクシルとて死人を生き返らすことはできない、だが、それは世界の理屈だ、そんなものがあれば、人は死なぬのだからな、それを調整するためには、産まぬようにするしかない。これは世界の理に反することは明らかだ」


「それは世界の停止だ、循環せぬ社会せそれは停滞でありすぐに腐り始めてしまうだろう。」



「儂は絶望した、儂には愛した女がいた。身分の低い女だったが、本当に愛していたのだ」

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