第24話 仮面の願い

024 仮面の願い


「そのことで、ツクに頼みがある」

「師匠、一緒にやりましょう。きっと方法があります」

決して、任されて面倒くさいからではない。

「嫌、儂は、もうダメだろう」

「・・・わかりました。ではおっしゃってください。何なりとできる限りはさせていただきます」

「ツク、ありがとう」


「これを、」師匠が銀色の指輪を出してくる。

それには、家紋のようなものが彫り込まれている。

「我が家の紋章が刻まれている。ただし、これを見せれば殺される可能性が高いのであまり見せない方がいい。我が家はすでに、これだからな」

「はい」

「同じものをその女にも渡している、何もしてやれなかった」

「探すのですね」

「そうだ、どうなったかを確認してほしい、墓を探すことになるだろう」

それは、おそらく殺された可能性が高いということ。

「これは、ミスリル製だ、お前の技で探すことができると信じている」

「なかなか難しいかと」

「できればでいい」

「わかりました」

「すまんな、やりたいこともあろうに」

「いえ、時間がかかった方が、楽しみが増えると思います」

「・・・できるだけデウスの信徒を殺さないでやってくれ」

「・・・できるだけ」


「儂の家は今どうなっているかは不明だが、秘密の部屋は魔法で守られているはず、その指輪が鍵である。その中に儂の研究のすべてが残されている。ミスリルもあろう」

「ありがとうございます」

「そして、禁忌の研究『ルーン真言』の研究書が存在するのだ」

「ルーン真言?」

「そうだ、魔法の発動には神の名前が必要であることは、わかったであろう、それを象徴文字にしたものがルーン真言、神の印を刻むことで加護を得ることができる。そのような象徴的な文字をまとめた本である」

「師匠、それは、師匠の教会への敵対行為に近いのでは?」

「最強の鍛冶を目指すために仕方なかったのである」

「わかりました、いただいてよろしいのですか」

「ふっ、そこで、先ほどの指輪が問題になる」

「ええと師匠、何かイキイキしてませんか」

「その禁書中の禁書は、二つの指輪によって封印されている」

つまり、探し出さないと使えないということである。


「弟子、ツク謹んで命を承りました」

「ツクよ、頼むぞ」

「は」

俺は、膝をついて頭を下げた。


「では、お別れをいたします」

「征け!ツクお前の記憶と魂を取り戻さんことをデウスに祈っている」

「ありがとう存じます、しかし、きっと神が違うと思います」

「はは、デウスはすべての神であり、父であり母である、お前の神も入っているに違いない」

俺は黙って頭を下げる。


「最後に、私の治癒魔法を師匠にかけてもよろしいですか」

「うむ、儂はもうすべてを託したので晴れ晴れとしているのだがな」

「私も、最後にできることをすべてしたく存じます」

「では、許す」


「女神アスクレイアよ、大いなる加護を与えて、この術に力を貸し給え!エクストラヒール!」

俺自体が明るく光り、全身の魔素が駆け巡る。鉄鉱石を砂に変換し続けて鍛えた魔力量が爆発する。

その魔力の奔流が、師匠を駆け巡り、師匠は電気を流されているかのようにビクビクと痙攣している。黒い瘴気のようなものが、背中から押し出されている。それを見たものがいたとしたら、激しく感電して火花を散らしているように見えたであろう。


魔力量の限界がきて治癒術の光が消えていく。


白目をむいて気を失いかけていた、師匠が生還する。

「さすがに、死ぬかと思ったぞ、まさにエクストラじゃな、普通の人間には使わんほうが良いぞ、きっとショック死する」

「はい、師匠、では、お暇します」

「征け、弟子よ。世界の奈落から這いあがれ、そして、お前の運命を切り開け」


運命とはそういうのであるはずだ。

自ら切り開くのだ。

そして、奴らをアッと言わせてやる。

この俺がな!


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